悪役令息に転生したので断罪回避します!のはずが、氷の王太子からの溺愛が止まりません

水凪しおん

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第二十二話「二度目の人生は、君の隣で」

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 戴冠式の喧騒が嘘のように静まり返った夜、ルキウスは、かつて自分の部屋だった、王宮の一室のバルコニーにいた。ここから、彼の二度目の人生は始まったのだ。
 処刑台に送られる運命に怯え、絶望していた、あの日の自分が、遠い昔のことのように思える。
「こんなところで、何をしていたんだ?」
 背後から、優しい声がした。振り返ると、そこには、戴冠式で着ていた重々しい王の装束を脱ぎ、ラフな部屋着に着替えたアレクシスが立っていた。
「……少し、昔のことを思い出していたんだ」
 ルキウスは、そう言って、夜空に浮かぶ月を見上げた。
「俺が、初めて君に会った時のこと、覚えてるか?」
「ああ。謁見室で、怯えた小動物のように震えていたな」
 アレクシスは、楽しそうに昔を思い出しながら、ルキウスの隣に並んだ。
「あの時は、本当に怖かったんだ。ゲームのシナリオ通りに、君に殺されるんじゃないかって」
「ふ……。だが、今の君は、国中の民から敬愛される、立派な王の伴侶だ。もう、何かに怯える必要はない」
 アレクシスは、そう言うと、ルキウスの肩を、優しく抱き寄せた。彼の胸に顔をうずめると、いつもと同じ、落ち着く匂いがした。
「俺、時々、考えるんだ」
 ルキウスは、アレクシスの胸に抱かれたまま、ぽつりぽつりと語り始めた。
「一度目の人生で、俺は、何のために生きていたんだろうって。ただ、仕事に追われて、すり減って、あっけなく死んで。そこには、何の意味もなかったんじゃないかって」
 それは、ずっと彼の心の奥底にあった、消えない虚しさだった。
 すると、アレクシスは、彼の髪を優しく撫でながら、静かに言った。
「意味なら、あったさ」
「え……?」
「君の一度目の人生があったからこそ、今の君がいる。君が、前世で培った知識や、優しさや、諦めない心があったからこそ、私は、そしてこの国は、救われたんだ」
 アレクシスは、ルキウスの体を少し離し、その紫色の瞳を、まっすぐに見つめた。
「君の、一度目の人生も、二度目の人生も、すべてに意味があった。すべては、私と出会うために、あったんだと、私は信じている」
 その言葉に、ルキウスの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
 そうだ。もう、自分は無価値なんかじゃない。
 過労死した、あの空っぽだった人生にも、意味はあったんだ。
 この、愛する人に出会うために、必要だったんだ。
「ありがとう……アレクシス」
 ルキウスは、満面の笑みで、涙を拭った。
「俺の人生は、君と共にある」
 アレクシスが、そう言って、そっと手を握る。その温かさが、ルキウスの心に、じんわりと広がっていく。
 かつて処刑台に送られるはずだった自分が、今、愛する人と共に、国の未来を担っている。
 過労死した一度目の人生では、決して得られなかった、温かくて、確かな幸せ。
 ルキウスは、その幸せを、力いっぱい噛みしめる。
「俺も、君と出会うために、二度目の人生を与えられたんだと思う」
 彼は、最高の笑顔で頷き、二度目の人生で、最高の愛と、最高の居場所を手に入れたことを、心から感謝するのだった。
 物語は、ここで終わりではない。
 彼らの伝説は、まだ始まったばかりなのだから。
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