ブラック企業勤めの俺が転生したのは悪役令息(Ω)!? 追放先の辺境で無骨な騎士団長(α)に出会い、飯テロしながら胃袋と愛を掴み取りました

水凪しおん

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番外編「とある日の食卓と、愛の誓い」

 辺境に平和が戻り、季節は穏やかに巡っていた。俺は相変わらず騎士団の食堂で料理番を続けている。今日の昼食は、騎士たちに大人気の鶏肉の香草焼きだ。食堂には、香ばしい匂いと、屈強な男たちの陽気な笑い声が満ちていた。
「リヒトさんの飯は世界一だぜ!」
「これを食うために生きてるようなもんだ!」
 そんな言葉を聞くたびに、俺はくすぐったいような、嬉しいような気持ちになる。ここが、俺の本当に大切な居場所だ。
 夜。俺はカイさんの私室で、二人きりの静かな時間を過ごしていた。彼は執務机で書類に目を通し、俺はソファで編み物をしている。時折、視線が合っては、どちらからともなく微笑み合う。そんな何気ない時間が、たまらなく愛おしかった。
 やがて、彼が仕事に区切りをつけ、俺の隣に腰を下ろした。大きな手が、俺の手に重ねられる。
「疲れただろう」
「カイさんこそ。お疲れ様です」
 俺は彼の肩にこてんと頭を乗せた。彼から香る、落ち着くアルファの匂い。番になってからというもの、この香りに包まれている時が、一番心が安らぐ。
「リヒト」
 耳元で名前を呼ばれ、体を彼の方に向ける。次の瞬間、唇が優しく塞がれた。最初は啄むようだったキスは、すぐに熱を帯びて深くなる。彼の舌が俺の口内を優しく探り、俺は甘い吐息を漏らした。
「ん…かい、さ…」
「愛している」
 その言葉を合図に、彼は俺を軽々と抱き上げ、寝室へと向かった。ベッドにそっと降ろされ、衣服が一枚、また一枚と剥がされていく。月の光が窓から差し込み、彼の鍛え上げられた肉体を銀色に照らし出していた。
 彼の指が、俺の体の熱い場所を優しく探る。もう何度も重ねた行為なのに、触れられるたびに体は敏感に反応し、甘い疼きが全身を駆け巡った。
「ぁ…っ、かいさん…もっと…」
「そんなに煽るな…。俺の理性がもたない」
 彼は苦しげに言いながらも、俺が求める以上に深く、激しく愛してくれた。一つになるたびに、魂が溶け合っていくような感覚に陥る。首筋の番の証が熱く疼き、彼が俺の唯一であり、俺が彼の唯一であることを、体に刻みつけるようだった。
 どれくらいの時間が経っただろうか。二人で汗ばんだ体を寄せ合い、穏やかな余韻に浸っていると、カイさんが俺のお腹を大きな手でそっと撫でた。
「リヒト…最近、少し食の好みが変わったか?」
 彼の言葉に、俺はどきりとした。そういえば、最近、無性に酸っぱいものが食べたくなることがあった。それに、時折、理由もなく眠気に襲われることも。
 まさか、とは思う。けれど、オメガである俺の体には、新しい命を宿す可能性があるのだ。
「…どう、でしょう…ね」
 俺がはにかみながら答えると、カイさんはすべてを悟ったような優しい瞳で俺を見つめ、お腹を撫でる手に、さらに愛情を込めた。
「もし、そうなら…これ以上ない、幸せだ」
 彼の言葉に、俺の目から涙が一粒、こぼれ落ちた。それは、悲しみの涙ではない。言葉では言い表せないほどの、幸福の涙だった。
 俺たちの未来には、きっと、もっとたくさんの幸せが待っている。この腕の中で、俺はそう確信した。

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