氷の公爵様と身代わりパティシエ~「味覚なし」の旦那様が、僕のお菓子でトロトロに溶かされています!?~

水凪しおん

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番外編「聖獣様の秘密のおやつ時間」

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 アイゼンベルク城の午後、リウが厨房で新しいレシピを試作していると、足元で「くぅ~ん」という甘えた声がした。

 見下ろすと、そこには真っ白な毛玉、聖獣ブランが座っていた。

 その青い瞳は、調理台の上のボウルに釘付けだ。

「ブラン、まだ焼けてないよ? これは生地だからね」

 リウが苦笑しながら言うと、ブランは不満げに尻尾をパタンパタンと床に打ち付けた。

 最近、ブランはグルメになってしまったらしい。

 リウの作るお菓子以外は口にしようとせず、おやつタイムが少しでも遅れると、こうして催促に来るのだ。

「もう少し待っててね。今日は特製のマカロンだから」

 リウがオーブンに天板を入れると、ブランは「わんっ!」と返事をして、オーブンの前で「お座り」をして待機し始めた。

 その姿があまりにも可愛らしくて、リウは思わず撫でようと手を伸ばした。

 ガシッ。

 その手を、後ろから伸びてきた大きな手が掴んだ。

 ジークハルトだ。

「……またこいつか」

 ジークハルトは不機嫌そうにブランを睨みつけた。

 彼は最近、ブランに対して妙に対抗意識を燃やしている。リウがブランを可愛がると、決まってこうして邪魔に入ってくるのだ。

 公爵様ともあろうお方が、聖獣に嫉妬するなんて。

「旦那様、ブランはお菓子が焼けるのを待っているだけですよ」

「ふん。……お前が撫でる必要はないだろう。撫でるなら私を撫でろ」

「ええっ!?」

 リウは真っ赤になった。

 堂々とそんなことを言うジークハルトに、周りのメイドたちもクスクスと笑っている。

 ブランは「やれやれ」といった様子で、ジークハルトを見上げている。

「チーン!」

 軽快な音が響き、オーブンから甘い香りが漂い出した。

 色とりどりのマカロンが焼き上がったのだ。

 リウは手早くクリームを挟み、皿に盛り付けた。

「はい、ブランの分。……こっちは、旦那様の分です」

 二つの皿を差し出すと、ブランは嬉しそうに飛びついた。

 ジークハルトもまた、リウから手渡されたマカロンを口に運び、満足げに目を細めた。

「……悪くない」

 そう言いながらも、ジークハルトは空いた片手で、リウの腰をしっかりと抱き寄せている。

 その独占欲の強さに呆れながらも、リウは幸せを噛み締めていた。

 一人と一匹、大きな子供たちに囲まれて、リウの午後は今日も賑やかで甘い。
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