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第13話:芽生えた恋心
海翔との二人三脚のレッスンは、俺の日常になった。
彼の指導は厳しかったが、その根底には、俺への絶対的な信頼があるのが分かった。俺が少しでも良い演技をすると、彼は「……良くなったな」と、ぶっきらぼうに、でも少しだけ嬉しそうに呟く。その瞬間が、俺にとって何よりの喜びだった。
稽古場で、他の役者やスタッフと関わることにも、少しずつ慣れてきた。最初は「あの朝比奈湊か」と遠巻きに見ていた人たちも、俺が必死に稽古に取り組む姿を見て、次第に仲間として受け入れてくれるようになった。
世界が、少しずつ色を取り戻していく。
それはすべて、海翔がいてくれるからだった。
彼が俺の音楽を信じてくれたから。彼が俺の背中を押してくれたから。彼が、俺の手を引いて、ここまで連れてきてくれたから。
気づいた時には、もう手遅れだった。
俺は、一ノ瀬海翔に恋をしていた。
それは、憧れや尊敬とは違う、もっと生々しくて、切実な感情だった。
夜、レッスンが終わった後、ソファで台本を読みながらうたた寝をしてしまった彼の寝顔を、盗み見る。スクリーンの中のクールな仮面はそこにはなく、年相応の、少しだけ無防備な顔があった。その唇に触れたい、と思ってしまって、慌てて視線を逸らす。
彼が仕事で遅くなる日は、いつの間にか彼の帰りを待っている自分がいた。玄関のドアが開く音がすると、心臓が跳ねる。おかえりなさい、と言うと、彼が「ただいま」と少しだけ柔らかい声で返してくれる。その些細なやり取りだけで、胸がいっぱいになった。
でも、この気持ちは、絶対に知られてはいけない。
俺は、スキャンダルで世間を騒がせた元アイドル。男だ。しかも、一度は地に堕ちた人間。
対して、彼は今をときめくトップ俳優。彼のキャリアは、一点の曇りもなく輝いている。俺なんかが隣にいていいはずがない。この恋心は、彼の輝かしい未来に傷をつけるだけの、身勝手な感情だ。
そう分かっているのに、想いは日に日に募っていく。
レッスンのたびに、彼の体に触れられるだけで、胸が苦しくなった。彼の優しい声を聞くだけで、涙が出そうになった。
自分の気持ちに蓋をしなければ。
そう思えば思うほど、感情は溢れ出しそうになる。
「湊、集中しろ」
稽古中に、ぼーっとしていた俺を、海翔が叱責する。
「すみません……」
「疲れているのか。今日はもう休め」
彼は、俺の顔色の悪さに気づいたようだった。その優しさが、また俺を苦しめる。
違うんだ。疲れているんじゃない。あなたのことを考えると、どうにかなってしまいそうになるだけなんだ。
言えるはずもなかった。
俺は、海翔の輝かしいキャリアに傷をつけたくない。彼の迷惑にはなりたくない。
だから、この恋は、俺一人だけの秘密にしなくてはならない。
胸の奥に、重たい鍵をかける。
稽古が終わった帰り道、一人で歩く夜道で、俺は空を見上げた。都会の空には、星はほとんど見えない。
かつて俺がいたグループの名前は、「ステラクラウン(星の王冠)」。
もう、俺の頭上には、輝く王冠も、星空もない。
ただ、叶うはずのない恋心が、冷たい夜の空気の中で、じくじくと痛むだけだった。
彼の指導は厳しかったが、その根底には、俺への絶対的な信頼があるのが分かった。俺が少しでも良い演技をすると、彼は「……良くなったな」と、ぶっきらぼうに、でも少しだけ嬉しそうに呟く。その瞬間が、俺にとって何よりの喜びだった。
稽古場で、他の役者やスタッフと関わることにも、少しずつ慣れてきた。最初は「あの朝比奈湊か」と遠巻きに見ていた人たちも、俺が必死に稽古に取り組む姿を見て、次第に仲間として受け入れてくれるようになった。
世界が、少しずつ色を取り戻していく。
それはすべて、海翔がいてくれるからだった。
彼が俺の音楽を信じてくれたから。彼が俺の背中を押してくれたから。彼が、俺の手を引いて、ここまで連れてきてくれたから。
気づいた時には、もう手遅れだった。
俺は、一ノ瀬海翔に恋をしていた。
それは、憧れや尊敬とは違う、もっと生々しくて、切実な感情だった。
夜、レッスンが終わった後、ソファで台本を読みながらうたた寝をしてしまった彼の寝顔を、盗み見る。スクリーンの中のクールな仮面はそこにはなく、年相応の、少しだけ無防備な顔があった。その唇に触れたい、と思ってしまって、慌てて視線を逸らす。
彼が仕事で遅くなる日は、いつの間にか彼の帰りを待っている自分がいた。玄関のドアが開く音がすると、心臓が跳ねる。おかえりなさい、と言うと、彼が「ただいま」と少しだけ柔らかい声で返してくれる。その些細なやり取りだけで、胸がいっぱいになった。
でも、この気持ちは、絶対に知られてはいけない。
俺は、スキャンダルで世間を騒がせた元アイドル。男だ。しかも、一度は地に堕ちた人間。
対して、彼は今をときめくトップ俳優。彼のキャリアは、一点の曇りもなく輝いている。俺なんかが隣にいていいはずがない。この恋心は、彼の輝かしい未来に傷をつけるだけの、身勝手な感情だ。
そう分かっているのに、想いは日に日に募っていく。
レッスンのたびに、彼の体に触れられるだけで、胸が苦しくなった。彼の優しい声を聞くだけで、涙が出そうになった。
自分の気持ちに蓋をしなければ。
そう思えば思うほど、感情は溢れ出しそうになる。
「湊、集中しろ」
稽古中に、ぼーっとしていた俺を、海翔が叱責する。
「すみません……」
「疲れているのか。今日はもう休め」
彼は、俺の顔色の悪さに気づいたようだった。その優しさが、また俺を苦しめる。
違うんだ。疲れているんじゃない。あなたのことを考えると、どうにかなってしまいそうになるだけなんだ。
言えるはずもなかった。
俺は、海翔の輝かしいキャリアに傷をつけたくない。彼の迷惑にはなりたくない。
だから、この恋は、俺一人だけの秘密にしなくてはならない。
胸の奥に、重たい鍵をかける。
稽古が終わった帰り道、一人で歩く夜道で、俺は空を見上げた。都会の空には、星はほとんど見えない。
かつて俺がいたグループの名前は、「ステラクラウン(星の王冠)」。
もう、俺の頭上には、輝く王冠も、星空もない。
ただ、叶うはずのない恋心が、冷たい夜の空気の中で、じくじくと痛むだけだった。
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