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第14話:クールな仮面の下の熱情
俺が自分の恋心に蓋をしようと苦しんでいた頃、海翔もまた、限界を迎えようとしていた。
彼にとっても、俺との同居生活と、二人きりのレッスンは、理性と本能のせめぎ合いだった。
デビュー前から焦がれていた相手。その才能に惚れ込み、その輝きを誰よりも信じていた存在。そんな湊が、今、自分の腕の中にいる。
傷つき、儚げで、けれど芯の強さを失わない瞳。レッスン中に見せる、不器用ながらも必死な姿。時折、ふっと見せる無防備な笑顔。その一つ一つが、海翔の心を激しく揺さぶった。
彼が湊を匿ったのは、純粋にその才能を救いたいという想いからだった。だが、共に過ごす時間が増えるにつれ、その感情は「ファン」としての想いを遥かに超え、一人の男としての、抑えきれない独占欲と愛情へと変わっていった。
湊に触れたい。抱きしめたい。その唇を、奪いたい。
そんな衝動を、彼は毎日、クールな仮面の裏に押し殺していた。湊はまだ心が不安定だ。俺が自分本位な感情をぶつければ、彼はきっとまた心を閉ざしてしまう。それだけは、絶対に避けたかった。
だが、その日、ついに彼の自制心は限界を超えた。
クライマックスシーンの稽古中だった。俺が演じる青年が、すべての絶望を乗り越え、再びステージで歌う場面。俺は、これまでの自分の人生をすべてぶつけるように、感情をさらけ出して歌い、演じていた。
その姿を、海翔は食い入るように見つめていた。
魂を削るような、湊のパフォーマンス。
それは、海翔が初めてライブハウスで彼を見た時以上の、凄まじい輝きを放っていた。
(……ああ、やっぱり、君は……)
胸を突き上げるような、激しい衝動。
湊の演技が終わった瞬間、海翔は、気づけば彼の前に立っていた。そして、無我夢中で、その腕を掴んで引き寄せていた。
「……かい、と、さん……?」
驚きに見開かれた湊の瞳。潤んだその瞳に、自分の姿が映っている。
もう、駄目だ。抑えられない。
海翔は、湊の顔を両手で包み込むと、その唇に、自分の唇を重ねようとした。
あと、数ミリ。
その瞬間、はっと我に返った。
(……俺は、何を……!)
海翔は弾かれたように湊から身を離した。湊は、何が起こったのか分からないという顔で、呆然と立ち尽くしている。その頬は赤く染まり、呼吸が少しだけ乱れていた。
「……すまない」
海翔は、かろうじてそれだけを絞り出すと、湊に背を向けた。
「今日の稽古は、終わりだ」
早口でそう告げ、彼は逃げるようにリビングを出て、自分の部屋に閉じこもってしまった。
一人残された俺は、その場に立ち尽くすしかなかった。
今の、は何だったんだろう。
キス、されそうになった……?
なぜ?
彼の行動の意味が分からなかった。ただ、唇に触れそうになった彼の熱い吐息と、苦しげな表情だけが生々しく記憶に残っている。
拒絶されたのだろうか。それとも、ただの気まぐれ?
分からない。
ただ、彼の行動一つで、こんなにも胸が痛む。
蓋をしたはずの恋心が、激しい音を立てて暴れ出していた。クールな仮面の下に隠された彼の熱情の、ほんの欠片に触れてしまった俺は、ただただ混乱し、胸を痛めることしかできなかった。
彼にとっても、俺との同居生活と、二人きりのレッスンは、理性と本能のせめぎ合いだった。
デビュー前から焦がれていた相手。その才能に惚れ込み、その輝きを誰よりも信じていた存在。そんな湊が、今、自分の腕の中にいる。
傷つき、儚げで、けれど芯の強さを失わない瞳。レッスン中に見せる、不器用ながらも必死な姿。時折、ふっと見せる無防備な笑顔。その一つ一つが、海翔の心を激しく揺さぶった。
彼が湊を匿ったのは、純粋にその才能を救いたいという想いからだった。だが、共に過ごす時間が増えるにつれ、その感情は「ファン」としての想いを遥かに超え、一人の男としての、抑えきれない独占欲と愛情へと変わっていった。
湊に触れたい。抱きしめたい。その唇を、奪いたい。
そんな衝動を、彼は毎日、クールな仮面の裏に押し殺していた。湊はまだ心が不安定だ。俺が自分本位な感情をぶつければ、彼はきっとまた心を閉ざしてしまう。それだけは、絶対に避けたかった。
だが、その日、ついに彼の自制心は限界を超えた。
クライマックスシーンの稽古中だった。俺が演じる青年が、すべての絶望を乗り越え、再びステージで歌う場面。俺は、これまでの自分の人生をすべてぶつけるように、感情をさらけ出して歌い、演じていた。
その姿を、海翔は食い入るように見つめていた。
魂を削るような、湊のパフォーマンス。
それは、海翔が初めてライブハウスで彼を見た時以上の、凄まじい輝きを放っていた。
(……ああ、やっぱり、君は……)
胸を突き上げるような、激しい衝動。
湊の演技が終わった瞬間、海翔は、気づけば彼の前に立っていた。そして、無我夢中で、その腕を掴んで引き寄せていた。
「……かい、と、さん……?」
驚きに見開かれた湊の瞳。潤んだその瞳に、自分の姿が映っている。
もう、駄目だ。抑えられない。
海翔は、湊の顔を両手で包み込むと、その唇に、自分の唇を重ねようとした。
あと、数ミリ。
その瞬間、はっと我に返った。
(……俺は、何を……!)
海翔は弾かれたように湊から身を離した。湊は、何が起こったのか分からないという顔で、呆然と立ち尽くしている。その頬は赤く染まり、呼吸が少しだけ乱れていた。
「……すまない」
海翔は、かろうじてそれだけを絞り出すと、湊に背を向けた。
「今日の稽古は、終わりだ」
早口でそう告げ、彼は逃げるようにリビングを出て、自分の部屋に閉じこもってしまった。
一人残された俺は、その場に立ち尽くすしかなかった。
今の、は何だったんだろう。
キス、されそうになった……?
なぜ?
彼の行動の意味が分からなかった。ただ、唇に触れそうになった彼の熱い吐息と、苦しげな表情だけが生々しく記憶に残っている。
拒絶されたのだろうか。それとも、ただの気まぐれ?
分からない。
ただ、彼の行動一つで、こんなにも胸が痛む。
蓋をしたはずの恋心が、激しい音を立てて暴れ出していた。クールな仮面の下に隠された彼の熱情の、ほんの欠片に触れてしまった俺は、ただただ混乱し、胸を痛めることしかできなかった。
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