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番外編:クールな仮面の下で(一ノ瀬海翔 視点)
俺、一ノ瀬海翔の人生は、あの日を境に色を変えた。
まだ無名の俳優だった頃、友人に無理やり連れて行かれた小さなライブハウス。そこで、俺は「朝比奈湊」という原石に出会った。
たった一人、ギターを抱えてステージに立つ彼は、ひどく儚げで、今にも消えてしまいそうだった。だが、歌い始めた瞬間、その印象は覆された。彼の身体からほとばしる、魂を削るような歌声。切実なメロディ。そのパフォーマンスは、俺の心を鷲掴みにして離さなかった。
衝撃だった。嫉妬すら覚えるほどの、圧倒的な才能。
その日から、俺は彼の虜になった。
彼が「ステラクラウン」としてデビューした時、自分のことのように嬉しかった。テレビで彼の姿を見るたび、彼の作った曲が街で流れるたび、胸が高鳴った。彼は、あっという間にスターダムを駆け上がっていった。
だが、その輝きが強ければ強いほど、俺の胸はざわついた。芸能界という場所は、純粋すぎる才能を食い物にする。いつか、彼が壊されてしまうのではないか。そんな不安が、常に心のどこかにあった。
そして、その予感は、最悪の形で現実となる。
捏造されたスキャンダル。
テレビのワイドショーで、やつれた顔で頭を下げる彼を見た時、俺はテレビの前で、無力感に苛まれていた。拳を握りしめ、どうしようもない怒りで身体が震えた。なぜ、誰も彼の無実を信じない。なぜ、あんな素晴らしい才能を、寄ってたかって潰そうとするのか。
彼が芸能界を引退し、消息を絶った時、俺の中で何かが決壊した。
もう、待ってはいられない。
俺が、彼を救い出す。
あらゆる手を尽くして、彼の居場所を突き止めた。そして、雨の路地裏で、心身ともに限界の彼を見つけた時、張り裂けそうになる心臓を必死で抑えながら、声をかけた。
「安全な場所を提供します」
俺の人生を懸けた、最大の賭けだった。
マンションでの同居生活は、天国と地獄のようだった。
すぐそばに、焦がれてやまなかった彼がいる。眠っている彼の寝顔を、盗み見る。少しずつ元気を取り戻していく彼の姿に、安堵する。そのすべてが、愛おしくてたまらなかった。
だが、同時に、彼に触れたい、この想いを伝えたいという欲望との戦いだった。クールな仮面を貼り付け、必死で理性を保つ。彼をこれ以上、傷つけたくなかった。
彼が再びピアノに向かい、あの美しいメロディを紡いだ夜。俺は鳥肌が立つほどの感動を覚えた。やはり、この才能は本物だ。絶対に、ここで終わらせてはいけない。
俺は、俺の持てるすべてを使って、彼のためのステージを用意した。仕組まれた偶然。彼には卑怯だと思われたかもしれない。だが、どうしても、もう一度、彼の音楽を世界に届けたかった。
稽古中の、あのキス未遂。危うく、すべてを壊してしまうところだった。湊の驚いた顔を見て、罪悪感で胸が張り裂けそうになった。俺は、なんて身勝手な男だ。
そして、スキャンダルが暴かれた、あの夜。
絶望し、再び逃げようとする彼を見て、俺はもう自分を抑えることができなかった。
「愛してる」
長年、このクールな仮面の下に隠し続けてきた、一途で、熱烈な想い。
それを伝えた時、彼が「好きです」と返してくれた瞬間を、俺は一生忘れないだろう。世界中を敵に回してもいい。この腕の中に、彼がいるのなら。
今、彼は、俺の隣で穏やかな寝息を立てている。
舞台の成功で、少し疲れたのだろう。その寝顔は、俺が初めて出会った頃のような、無防備さがあった。
俺は、その頬にそっとキスを落とす。
君を救った、なんて思わない。
君が、俺を救ってくれたんだ、湊。
君という光が、俺のモノクロだった世界に、鮮やかな色をくれたんだ。
これからも、ずっと、君の隣で。
クールな仮面の下に隠されたこの熱情は、もう隠す必要はない。すべて、君だけのものだ。
まだ無名の俳優だった頃、友人に無理やり連れて行かれた小さなライブハウス。そこで、俺は「朝比奈湊」という原石に出会った。
たった一人、ギターを抱えてステージに立つ彼は、ひどく儚げで、今にも消えてしまいそうだった。だが、歌い始めた瞬間、その印象は覆された。彼の身体からほとばしる、魂を削るような歌声。切実なメロディ。そのパフォーマンスは、俺の心を鷲掴みにして離さなかった。
衝撃だった。嫉妬すら覚えるほどの、圧倒的な才能。
その日から、俺は彼の虜になった。
彼が「ステラクラウン」としてデビューした時、自分のことのように嬉しかった。テレビで彼の姿を見るたび、彼の作った曲が街で流れるたび、胸が高鳴った。彼は、あっという間にスターダムを駆け上がっていった。
だが、その輝きが強ければ強いほど、俺の胸はざわついた。芸能界という場所は、純粋すぎる才能を食い物にする。いつか、彼が壊されてしまうのではないか。そんな不安が、常に心のどこかにあった。
そして、その予感は、最悪の形で現実となる。
捏造されたスキャンダル。
テレビのワイドショーで、やつれた顔で頭を下げる彼を見た時、俺はテレビの前で、無力感に苛まれていた。拳を握りしめ、どうしようもない怒りで身体が震えた。なぜ、誰も彼の無実を信じない。なぜ、あんな素晴らしい才能を、寄ってたかって潰そうとするのか。
彼が芸能界を引退し、消息を絶った時、俺の中で何かが決壊した。
もう、待ってはいられない。
俺が、彼を救い出す。
あらゆる手を尽くして、彼の居場所を突き止めた。そして、雨の路地裏で、心身ともに限界の彼を見つけた時、張り裂けそうになる心臓を必死で抑えながら、声をかけた。
「安全な場所を提供します」
俺の人生を懸けた、最大の賭けだった。
マンションでの同居生活は、天国と地獄のようだった。
すぐそばに、焦がれてやまなかった彼がいる。眠っている彼の寝顔を、盗み見る。少しずつ元気を取り戻していく彼の姿に、安堵する。そのすべてが、愛おしくてたまらなかった。
だが、同時に、彼に触れたい、この想いを伝えたいという欲望との戦いだった。クールな仮面を貼り付け、必死で理性を保つ。彼をこれ以上、傷つけたくなかった。
彼が再びピアノに向かい、あの美しいメロディを紡いだ夜。俺は鳥肌が立つほどの感動を覚えた。やはり、この才能は本物だ。絶対に、ここで終わらせてはいけない。
俺は、俺の持てるすべてを使って、彼のためのステージを用意した。仕組まれた偶然。彼には卑怯だと思われたかもしれない。だが、どうしても、もう一度、彼の音楽を世界に届けたかった。
稽古中の、あのキス未遂。危うく、すべてを壊してしまうところだった。湊の驚いた顔を見て、罪悪感で胸が張り裂けそうになった。俺は、なんて身勝手な男だ。
そして、スキャンダルが暴かれた、あの夜。
絶望し、再び逃げようとする彼を見て、俺はもう自分を抑えることができなかった。
「愛してる」
長年、このクールな仮面の下に隠し続けてきた、一途で、熱烈な想い。
それを伝えた時、彼が「好きです」と返してくれた瞬間を、俺は一生忘れないだろう。世界中を敵に回してもいい。この腕の中に、彼がいるのなら。
今、彼は、俺の隣で穏やかな寝息を立てている。
舞台の成功で、少し疲れたのだろう。その寝顔は、俺が初めて出会った頃のような、無防備さがあった。
俺は、その頬にそっとキスを落とす。
君を救った、なんて思わない。
君が、俺を救ってくれたんだ、湊。
君という光が、俺のモノクロだった世界に、鮮やかな色をくれたんだ。
これからも、ずっと、君の隣で。
クールな仮面の下に隠されたこの熱情は、もう隠す必要はない。すべて、君だけのものだ。
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