絶対的センターだった俺を匿ったのは、実は俺の熱烈なファンだったクールな俳優様でした。秘密の同居から始まる再生ラブ

水凪しおん

文字の大きさ
24 / 24

エピローグ:光の差す場所

 舞台の大成功から、一年が経った。
 季節は巡り、また雨の多い六月を迎えている。
「湊、そこの塩、取ってくれるか」
「はい、どうぞ」
 キッチンのカウンターで、俺と海翔は並んで夕食の準備をしていた。一年前、モデルルームのように生活感のなかったこの部屋は、今ではすっかり俺たちの「家」になっている。
 あの日を境に、俺の人生は再び光を取り戻した。
 舞台でのパフォーマンスと、俺が手掛けた音楽は高く評価され、俺は実力派の舞台俳優、そして作曲家として、確固たる地位を築き始めていた。
 もちろん、俺たちの関係を色眼鏡で見る人間が完全にいなくなったわけではない。だが、俺たちの仕事に対する真摯な姿勢と、海翔の揺るぎないサポートのおかげで、世間は俺たちを「公認のカップル」として、温かく見守ってくれるようになっていた。
 海翔も、トップ俳優として第一線を走り続けている。スキャンダルを乗り越え、さらに深みを増した彼の演技は、多くの人々を魅了していた。
「……できた。湊、運ぶの手伝って」
「うん」
 テーブルに、彩り豊かな料理が並ぶ。二人で一緒に料理をする。なんてことない、穏やかな時間。この日常が、何よりも愛おしい。
 食事をしながら、最近の出来事を報告し合う。
「次の舞台の曲、どう?」
「うん、良い感じ。今度、聴いてくれる?」
「もちろん。楽しみにしてる」
 そんな会話が、心地良い。
 食事が終わり、二人でソファに座って、映画を観る。ごく自然に、海翔の肩に寄りかかると、彼が俺の髪を優しく撫でた。
 一年前の今頃は、絶望の淵にいたなんて、信じられない。
「……海翔さん」
「ん?」
「俺、新しいラブソングを作ったんだ」
「へえ」
「あなたへの、歌」
 俺がそう言うと、海翔は少し驚いたように目を見開き、それから、たまらなく愛おしそうな顔で微笑んだ。
「……聴かせてくれるか」
「うん。今度、ピアノで弾くね」
「楽しみだな」
 彼は、俺の額に優しいキスを落とした。
 捏造されたスキャンダル。失われたステージ。絶望の中で出会った、たった一つの光。
 嵐のような日々を乗り越えて、俺たちが見つけたのは、こんなにも穏やかで、満たされた日常だった。
 これからも、きっと色々なことがあるだろう。でも、もう怖くない。
 二人でいれば、どんな道も、光の差す場所に変えていける。
 窓の外では、優しい雨が降っている。
 あの日、俺の全てを奪ったはずの雨は、今では、俺たちの愛を育む、穏やかなBGMのように聞こえた。
 俺たちは、これからもこの光の差す場所で、共に歩んでいく。
 甘く、満たされた未来を、二人で誓い合いながら。

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

忘れた名前の庭で

千葉琴音
BL
【凍てついた記憶を溶かすのは、不器用な守護者の体温】 「俺のことはルーカスでいい」 目覚めると、僕は自分の名前すら忘れていた。 唯一の肉親である兄・テオドールの死と同時に失われた記憶。無愛想な兄の友人ルーカスと共にゆっくりと兄の足跡を辿っていく。 厳格で甘いものが嫌いだった亡き兄・テオドール。彼が密かに弟のために植物図鑑を読み、内緒で菓子を買い与えていたという、口にされることのなかった真実。 ルーカスの語る「かつての自分」と、今の自分が少しずつ重なっていく中、アルノは因縁の魔獣の住む森へと足を踏み入れる。そこで彼が思い出したのは、独りで耐える術ではなく、誰かに抱きしめられて「息をする」方法だった。 孤独な少年と、彼を見守り続けた騎士。二人が雪解けの庭で見つける、新しい絆の物語。

契約書はよく読めとあれほど!

RNR
BL
異世界で目が覚めた、就職浪人中の美容系男子、優馬。 最初に出会った美しい貴族青年は、言葉が通じないが親切に手を差し伸べてくれた。 彼の屋敷に招かれた際、文字は読めないもののなにかの書類にサインをすると、その彼と結婚したことになっていて……。 この世界で何をする? また無職生活? 本当にそれでいい? 葛藤する日々と、それを惜しみない愛情で支える夫。 理想の自分と、理想の幸せを探す物語。 23話+続編2話+番外編2話

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

脳筋剣士と鈍感薬師 ~騎士様、こいつです~

季エス
BL
「ルカーシュは、駄目よ」  その時胸に到来した思いは安堵であり、寂しさでもあった。  ルカーシュは薬師だ。幼馴染と共に、魔王を倒すために村を出た。彼は剣士だった。薬師のルカーシュは足手纏いだった。途中で仲間が増えたが、それでも足手纏いである事に変わりはなかった。そうしてついに、追い出される日が来たのだ。  ルカーシュはそっと、瞼を伏せた。  明日、明日になったら、笑おう。そして、礼と別れを言うのだ。  だから、今だけは、泣いてもいいかな。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結 第三章 完結

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

完結·氷の侯爵はおっさん騎士を溺愛したい〜枯れおじの呪いを解くには恋が必要らしいです~

BL
少年だったルイを庇って呪いを受けた騎士ディオン。 それから年月が経ち、ルイは青年に、ディオンはおっさん騎士になっていた。 魔法を使うと呪いが進むディオン。その呪いを解呪しようと試行錯誤なルイ。 そんなとき、ひょんなことから恋をすれば呪いが解けるのでは、となりルイがディオンに恋をさせようと様々な奇行を始める。 二人は呪いを解くことができるのか、そして二人の関係は―――――― ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています