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番外編「二人だけの果樹園」
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アレンがファリドの妃として迎えられてから、季節は一度巡った。二人の結婚生活は穏やかで、満ち足りたものだった。
ある日、アレンは王宮の奥にある、今は使われていない広い庭の一角にファリドを案内した。
「ここを、僕にいただけませんか?ずっと、育ててみたかったものがあるんです」
それからというもの、アレンはその庭に付きっきりになった。そこは、二人だけの秘密の果樹園だった。
数ヶ月後、果樹園には、サハランの人々が見たこともない植物たちが実を結び始めた。枝もたわわに実った真っ赤なリンゴ。甘い香りを放つモモ。そして地面には、宝石のように輝く真っ赤な果実、イチゴが実っていた。
そう、この果樹園では、アレンが故郷で「食える実がならない」と罵られた、その「食える実」がなっていたのだ。彼のスキルは、愛する人と結ばれ心が満たされた今、彼の強い想いに応えて進化を遂げていた。
ファリドは公務を終えると、まっすぐにこの果樹園へやってきて、アレンと一緒にもぎたての果物を頬張るのが日課になった。
「うまい!こんなに甘くてみずみずしい果物は初めてだ!」
子供のようにはしゃぐファリドの姿を見るのが、アレンにとって何よりの幸せだった。かつて、この力で家族を喜ばせたかったという叶わなかった夢が、今、形を変えてここで叶っている。
「アレン。君の故郷の人々は、本当に惜しいことをしたな」
ファリドは、アレンの心の傷を察したように優しく言った。
「だが、そのおかげで私が君と出会えたのだと思うと、少しだけ、彼らに感謝したくなる」
ファリドはアレンの隣に座ると、自らが摘んだ真っ赤なイチゴを、そっとアレンの口元へ運んだ。
「さあ、アレンも。これは、君の優しさと、私たちの愛が育てた果物だ」
アレンは照れながらも、そのイチゴをぱくりと口に含む。口いっぱいに広がる甘酸っぱさは、幸せそのものの味がした。
ある日、アレンは王宮の奥にある、今は使われていない広い庭の一角にファリドを案内した。
「ここを、僕にいただけませんか?ずっと、育ててみたかったものがあるんです」
それからというもの、アレンはその庭に付きっきりになった。そこは、二人だけの秘密の果樹園だった。
数ヶ月後、果樹園には、サハランの人々が見たこともない植物たちが実を結び始めた。枝もたわわに実った真っ赤なリンゴ。甘い香りを放つモモ。そして地面には、宝石のように輝く真っ赤な果実、イチゴが実っていた。
そう、この果樹園では、アレンが故郷で「食える実がならない」と罵られた、その「食える実」がなっていたのだ。彼のスキルは、愛する人と結ばれ心が満たされた今、彼の強い想いに応えて進化を遂げていた。
ファリドは公務を終えると、まっすぐにこの果樹園へやってきて、アレンと一緒にもぎたての果物を頬張るのが日課になった。
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「さあ、アレンも。これは、君の優しさと、私たちの愛が育てた果物だ」
アレンは照れながらも、そのイチゴをぱくりと口に含む。口いっぱいに広がる甘酸っぱさは、幸せそのものの味がした。
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