【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん

文字の大きさ
8 / 24

第7話「初めての街デート」

「アッシュ、明日、近くの街まで買い物に行こうと思うんだけど」

「分かった。準備しておく」

 畑仕事に使う新しいクワや、生活に必要な物資を買い足すため、僕たちは一番近くにある街へ出かけることにした。辺境と言っても、馬車で半日も走れば、そこそこ大きな街があるのだ。
 アッシュがいてくれれば、道中の魔物も心配ない。二人きりで遠出するのは初めてで、僕はまるで遠足前の子供のように、少し浮かれていた。

 翌日、アッシュがどこからか調達してきた馬車に乗り、僕たちは街へと向かった。
 街は思っていたよりも活気があり、様々な人々が行き交っている。僕は久しぶりの喧騒に少し目を輝かせながら、露店で売られている品々を眺めていた。

「まずは鍛冶屋に行って、クワを買わないと」

「その前に、寄るところがある」

 僕がそう言うと、アッシュは僕の腕を掴み、半ば強引に一軒の服屋へと連れて行った。

「え、アッシュ? なんで服屋に?」

「お前の服、汚れている。新しいのを買え」

 言われてみれば、僕が着ているのは実家から持ってきた着古した服で、あちこちに畑仕事でついた土汚れが染み付いている。

「で、でも、お金が……」

「俺が出す」

 有無を言わさぬ口調で、アッシュは僕を店の中へと押し込んだ。そして、店員に何やら耳打ちすると、次から次へと僕に似合いそうな服を持ってきた。

「これを着てみろ」

「こっちもだ」

 僕はアッシュに言われるがまま、シャツやズボン、上着などを試着させられた。着替えるたびに、アッシュは腕を組んで僕をじっと観察し、小さく頷いたり、首を傾げたりする。その真剣な姿は、まるで自分の恋人の服を選んでいるかのようで、僕の心臓はさっきからずっとうるさかった。

 最終的に、アッシュが選んだ数着の服をすべて買い、店を出た。
 新しい服は着心地がよくて、なんだか気分も軽くなる。

「ありがとう、アッシュ。でも、なんだか申し訳ないな」

「気にするな」

 夕暮れの帰り道、馬車に揺られながら、アッシュがぶっきらぼうに呟いた。

「……お前はもっと自分を飾るべきだ」

「え?」

「綺麗だ。……だが、他の奴に見せたくはないな」

 その言葉はとても小さくて、聞き間違いかと思うほどだったけれど、僕の耳にははっきりと届いていた。彼の横顔が夕日でほんのり赤く染まっているように見えて、僕もつられて顔が熱くなるのを感じた。

あなたにおすすめの小説

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

追放された宮廷錬金術師、辺境で気ままに土いじりしてたら神獣や幼馴染の天才騎士が集まり最強国家に〜今さら戻れと言われても〜

黒崎隼人
ファンタジー
「そこにいたか、役立たずの錬金術師。今日限りでこの王城から出て行ってもらう」 王国の結界を維持し、枯れた大地を豊かにする「失われた古代錬金術」。 その使い手であるルークは、自分の価値を理解しない第一王子レオンによって、あっさりと宮廷を追放されてしまう。 しかし、長年の酷使から解放されたルークの心は晴れやかだった。 「これで、やっと静かに眠れる」 自由を求めて最果ての「死の荒野」へと旅立ったルーク。 そこへ、すべてを捨てて追いかけてきた幼馴染の天才騎士セリアが合流する。 二人は何もない荒れ地を錬金術で瞬く間に緑豊かな大地へと変え、泥の巨人グランやもふもふの神獣シロを家族に迎え、美味しいパンを焼く気ままなスローライフをスタートさせた。 一方、ルークを失った王国は、結界が崩壊し大地が枯れ果て、未曾有の危機に瀕していた。 焦った王子が軍を率いてルークを連れ戻しにやってくるが、ルークの作った最強のゴーレムと神獣の前に、手も足も出ずに逃げ帰ることに。 気づけばルークの開拓した村は、難民を救い、近隣諸国も一目置く「最強の独立国家」へと発展していて――!? これは、優しくて規格外な錬金術師が、大切な人たちと永遠の平穏を紡ぐ、最高に幸せな辺境スローライフ。

魔力ゼロの『外れ聖女(男)』、 追放先で知識を武器に国を改革したら、孤高の獅子王に「お前は俺の宝だ」と唯一無二の番として激しく求められる

水凪しおん
BL
図書館司書のミコトは、ある日突然、異世界に『聖女』として召喚される。しかし、聖女に必須の魔力がゼロだったため、『役立たず』の烙印を押され、人間国と同盟関係にある隣国・獣人国へ『贈り物』として厄介払いされてしまう。 武力至上主義の国で待ち受けていたのは、冷徹な若き獅子王カイゼル。「我が国に益をもたらさぬ者は不要だ」と言い放つ彼に、ミコトは生き残りをかけて唯一の武器である『知識』で国を改革することを誓う。 食文化、衛生、農業――次々と問題を解決していくミコトを、民は『賢者様』と呼び、冷たいはずの王の瞳にも次第に熱が宿り始める。 「お前は私の側にいればいい」 これは、捨てられた青年が自らの価値を証明し、孤高の獅子王の唯一無二の番となって、その激しい独占欲と溺愛に蕩かされる物語。

辺境の薬師は追放されたオメガの元聖職者~孤独な最強アルファ傭兵を拾ったら、激重な執着で運命の番にされました~

水凪しおん
BL
大陸の教会で尊敬を集めていた聖職者ルシアンは、発情期によってオメガであることが露見し、すべてを奪われ北の辺境の村へと追放された。 心を閉ざし、素朴な薬師としてひっそり暮らしていた彼は、ある吹雪の夜、瀕死の重傷を負った大柄なアルファの傭兵ガルドを拾う。 過去に相棒を守れなかった後悔から誰とも深く関わろうとしないガルドと、再び裏切られることを恐れるルシアン。 見えない境界線を引いて奇妙な共同生活を送る二人だったが、オメガとアルファの抗えない本能が、次第に互いを強く求めさせていく。 「永遠の約束はしない。ただ今夜だけ……」 傷を舐め合うだけの刹那的な関係のつもりが、運命の番としての強烈な引力に二人は絡め取られていく。 そんな中、ルシアンを捕らえようと教会の追手である騎士団が現れて――。 「俺に、また同じ後悔をしろと言うのか。……ルシアンは俺の番だ」 不器用で孤独な最強アルファ傭兵と、傷ついたオメガの元聖職者。 雪深い辺境の村を舞台に、臆病な大人二人が運命に抗い、やがて甘く深い絆で結ばれるまでの救済と溺愛のBLファンタジー。 ※本作には一部、流血を伴う戦闘シーンや、性的な事象を暗示する表現が含まれています。15歳未満の方の閲覧はご注意ください。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

追放された出来損ないアルファですが、魔力相殺の力で孤高の天才魔術師と最強パーティーを組みました〜二人で無双して下剋上します〜

水凪しおん
BL
名門剣士一族のアルファとして生まれながら、魔力も筋力も乏しく「出来損ない」と冷遇されてきた青年、ルーク。 息苦しい家を飛び出し、冒険者として生きていくことを決意した彼は、森で一人の特級魔術師と出会う。 彼の名はシリウス。 圧倒的な才能と魔力を持つエリートアルファだが、その強大すぎる魔法の余波が味方をも巻き込むため、誰ともパーティーを組めず孤高を貫いていた。 「俺の魔法の余波を消せる人間なんて、今まで一人もいなかった」 ルークが持つ、実家では無用の長物と見なされていた精密な「魔力相殺」の技術。 それは、シリウスの破壊的な魔力を完璧にコントロールするための唯一の鍵だった。 交わることのない波長。欠けた器と、あふれすぎる中身。 いびつな二つの歯車は互いの弱点を補い合い、完璧な連携で次々と規格外の魔物を討伐していく。 アルファ同士という本能の反発を越え、対等な関係で背中を預け合ううちに、二人の間には深く熱い絆が芽生え始める。 やがて、ルークを連れ戻そうと迫る冷酷な実家の兄。 圧倒的な武力を誇る一族の刺客を前に、ルークとシリウスは真の共鳴を果たし、運命の逆転劇を巻き起こす――。 家柄やオメガバースの運命にとらわれない。 これは、無能と蔑まれた青年と孤独な魔術師が、互いの魂を救済し、世界でただ一つの最強のパートナーシップを築き上げるまでの下剋上ファンタジー。