【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん

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番外編 「英雄が見た最初の光」

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(アッシュ視点)

 魔王を倒し、俺は英雄と呼ばれた。
 だが、その実態は死に場所を求める亡霊のようなものだった。聖剣の呪いは、日夜俺の体を蝕み、骨の髄まで凍えるような痛みが、一瞬たりとも消えることはなかった。
 仲間たちは俺を心配してくれたが、この呪いを癒す術はない。誰にも助けを求めることはできず、ただ一人、絶望の中を彷徨い歩く日々だった。
 いつしか、感情すらも摩耗していった。喜びも、悲しみも、痛みで塗りつぶされて分からなくなっていく。

 そんな時だった。酒場の隅で、とある商人の噂話を耳にしたのは。
「辺境の地に、奇跡の野菜を作る若者がいる」
「どんな病も癒えると評判だ」
 馬鹿げた話だと思った。だが、溺れる者は藁にもすがる。万に一つの可能性に、俺は最後の望みをかけた。

 嵐の夜、やっとの思いで辿り着いたその場所は、噂通り、痩せた土地に不釣り合いなほど生命力に満ち溢れていた。
 小さな家のドアを叩き、俺はほとんど意識のないまま、作物を分けてくれと懇願した。
 ドアを開けて現れたのは、温かい光を宿したような瞳を持つ、一人の青年だった。フィン、と彼は名乗った。

 彼は俺を家に入れ、一杯のスープを差し出してくれた。
 野菜が溶け込んだ、何の変哲もないスープ。
 それを口にした瞬間、全身に衝撃が走った。
 温かい何かが、俺の冷え切った体を内側から優しく溶かしていく。そして、あれほど俺を苦しめていた呪いの痛みが、すうっと潮が引くように和らいでいったのだ。
 生まれて初めて感じた、安らぎ。
 気づけば、俺の目からは涙が溢れていた。枯れ果てたと思っていた涙が、まだ残っていたことに自分でも驚いた。

 この一杯のスープが、この青年が、俺の心を、体を、救ってくれた。
 真っ暗闇だった俺の世界に差し込んだ、初めての光。

 その時、俺は決めたのだ。
 この光を手放してはいけない。いや、手放すものか。
 この青年の作るものを毎日食べたい。彼のそばにいたい。彼を守りたい。
 俺が生きる理由は、もうそれだけで十分だった。

「夫もできる」

 唐突に口から出た言葉に、彼はひどく困惑していたが、俺は本気だった。
 このフィンという光を見つけた、あの日あの瞬間から。
 俺の第二の人生は、すべて彼に捧げると、心に誓ったのだ。
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