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番外編「初めての『おはよう』のキス」
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正式な番いの契約を結んでから、初めて迎える朝。
僕は、リオード様の腕の中で目を覚ました。規則正しく上下するたくましい胸板と、すぐそばで聞こえる穏やかな寝息が、ここが僕の帰る場所なのだと教えてくれる。
昨夜、たくさんの人たちに祝福されて開かれた祝宴の後、僕たちは晴れて夫婦になった。
その事実を思うだけで、胸の奥から温かいものが込み上げてきて、自然と笑みがこぼれた。
そっと彼の腕の中から抜け出し、ベッドを降りる。
今日は、僕が彼のために、初めての朝食を作りたかった。
忍び足で寝室を出て、厨房へと向かう。早朝の厨房はまだ静まり返っていて、僕一人のものだった。
何を作ろうか。
この国の朝食は、硬いパンとスープ、それにチーズというのが一般的だ。それも美味しいけれど、今日はもっと、特別なものにしたかった。
僕は、前世の記憶を頼りに、僕の故郷の朝食を作ることにした。
お米を土鍋でことことと炊いて、ふっくらとしたお粥を作る。それに、だしを効かせた、ふわふわの卵焼き。野菜を刻んで入れた、味噌の香りがするスープ。
この世界にある食材だけで作った、ささやかな和の朝食。
リオード様のお口に合うだろうか。少しだけ不安になりながらも、心を込めて作った。
お盆に載せて寝室に戻ると、リオード様はまだベッドの上で、身を起こしたままぼんやりとしていた。僕がいないことに、気づいたのかもしれない。
「リオード様、おはようございます」
「……カイ。どこに行っていた。心配しただろう」
少しだけ拗ねたような声が、なんだか可愛らしくて、くすりと笑ってしまう。
「朝食を作っていました。さあ、どうぞ」
ベッドサイドのテーブルに朝食を並べると、彼は見たことのない料理の数々に、不思議そうな顔をした。
「これは……なんだ?」
「お粥と、卵焼きと、お味噌汁です。僕が昔、食べていたものです」
「……」
彼は、おそるおそる、匙でお粥をすくって口に運んだ。
その金色の瞳が、驚きに見開かれる。
「……なんだこれは。優しい味がする」
次に、卵焼きを一口。
「甘い……だが、美味い」
そして、お味噌汁を一口。
「……体が、温まる」
彼は、夢中になって、僕が作った朝食を食べ進めていく。
その食べっぷりを見ているだけで、僕の心は、幸せでいっぱいになった。
あっという間にすべての皿を空にした彼は、満足そうに息をつくと、僕の方に向き直った。
「カイ」
「はい」
「……最高に、美味かった」
「よかった」
僕がにっこりと笑うと、彼は僕の手を引いて、ベッドに引き寄せた。
そのまま、唇に、柔らかなキスが降ってくる。それは、挨拶代わりの、優しいキスだった。
「おはよう、カイ」
「おはようございます、リオード」
今度は僕から、彼の唇にキスを返す。
これが、僕たちの夫婦としての、最初の朝。
何気ない日常の中に、こんなにも愛しい瞬間が溢れている。
これから毎日、こんな風に、彼と「おはよう」のキスを交わすのだ。
そう思うと、未来が、きらきらと輝いて見えた。
僕は、リオード様の腕の中で目を覚ました。規則正しく上下するたくましい胸板と、すぐそばで聞こえる穏やかな寝息が、ここが僕の帰る場所なのだと教えてくれる。
昨夜、たくさんの人たちに祝福されて開かれた祝宴の後、僕たちは晴れて夫婦になった。
その事実を思うだけで、胸の奥から温かいものが込み上げてきて、自然と笑みがこぼれた。
そっと彼の腕の中から抜け出し、ベッドを降りる。
今日は、僕が彼のために、初めての朝食を作りたかった。
忍び足で寝室を出て、厨房へと向かう。早朝の厨房はまだ静まり返っていて、僕一人のものだった。
何を作ろうか。
この国の朝食は、硬いパンとスープ、それにチーズというのが一般的だ。それも美味しいけれど、今日はもっと、特別なものにしたかった。
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お米を土鍋でことことと炊いて、ふっくらとしたお粥を作る。それに、だしを効かせた、ふわふわの卵焼き。野菜を刻んで入れた、味噌の香りがするスープ。
この世界にある食材だけで作った、ささやかな和の朝食。
リオード様のお口に合うだろうか。少しだけ不安になりながらも、心を込めて作った。
お盆に載せて寝室に戻ると、リオード様はまだベッドの上で、身を起こしたままぼんやりとしていた。僕がいないことに、気づいたのかもしれない。
「リオード様、おはようございます」
「……カイ。どこに行っていた。心配しただろう」
少しだけ拗ねたような声が、なんだか可愛らしくて、くすりと笑ってしまう。
「朝食を作っていました。さあ、どうぞ」
ベッドサイドのテーブルに朝食を並べると、彼は見たことのない料理の数々に、不思議そうな顔をした。
「これは……なんだ?」
「お粥と、卵焼きと、お味噌汁です。僕が昔、食べていたものです」
「……」
彼は、おそるおそる、匙でお粥をすくって口に運んだ。
その金色の瞳が、驚きに見開かれる。
「……なんだこれは。優しい味がする」
次に、卵焼きを一口。
「甘い……だが、美味い」
そして、お味噌汁を一口。
「……体が、温まる」
彼は、夢中になって、僕が作った朝食を食べ進めていく。
その食べっぷりを見ているだけで、僕の心は、幸せでいっぱいになった。
あっという間にすべての皿を空にした彼は、満足そうに息をつくと、僕の方に向き直った。
「カイ」
「はい」
「……最高に、美味かった」
「よかった」
僕がにっこりと笑うと、彼は僕の手を引いて、ベッドに引き寄せた。
そのまま、唇に、柔らかなキスが降ってくる。それは、挨拶代わりの、優しいキスだった。
「おはよう、カイ」
「おはようございます、リオード」
今度は僕から、彼の唇にキスを返す。
これが、僕たちの夫婦としての、最初の朝。
何気ない日常の中に、こんなにも愛しい瞬間が溢れている。
これから毎日、こんな風に、彼と「おはよう」のキスを交わすのだ。
そう思うと、未来が、きらきらと輝いて見えた。
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