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第3話「勘違いの連鎖と実技演習」
俺の評価がおかしい。
いや、正確にはノエルの中での俺の評価が、何らかのバグを起こして急上昇している気がする。
あの日以来、ノエルからの視線に「怯え」ではなく「熱」がこもるようになった。廊下ですれ違うと、深々とお辞儀をしてくる。食堂で遠くの席から微笑みかけてくる。
そのたびに俺は「見なかったこと」にするスキルを発動しているが、精神的な疲労が限界に近かった。
そんな中、一番恐れていた授業がやってきた。
魔法実技演習だ。
この世界の貴族は魔力を持って生まれる者が多く、学園でも魔法の制御や運用を学ぶ授業がある。そしてお約束のように、二人一組でのペアワークが行われるのだ。
演習場である広い芝生広場に、クラス全員が集められた。
教師が声を張り上げる。
「では、二人一組になってペアを作れ。魔力の波長を合わせる練習を行う」
俺にとって地獄の時間の始まりだ。
本来なら、公爵家の俺と組みたがる生徒は山ほどいるはずだ。だが、今の俺は「孤高で人を寄せ付けない絶対零度の貴公子」という、なんとも痛々しいキャラ付けが定着してしまっている。
案の定、周囲の生徒たちは俺を遠巻きにし、互いに目配せをしてペアを作っていく。
「ルシアン様に声をかけるなんて恐れ多い」
「邪魔をしたら氷漬けにされるぞ」
そんなヒソヒソ声が聞こえる。いいぞ、その調子だ。俺は一人で余って、教師と組むか見学になればそれが一番平和だ。
一方で、ノエルの方は別の意味でピンチを迎えていた。
オメガである彼に、下心を持ったアルファたちが群がっているのだ。
「おい、俺と組もうぜ。手取り足取り教えてやるよ」
「僕の方が魔力量が多いぞ。いい経験になる」
ノエルは困ったように眉を下げ、愛想笑いを浮かべて後ずさっている。拒絶したいが、相手は身分のある貴族たちだ。無下に断れないのだろう。
俺は広場の端にある大きなオークの木の下で、腕組みをしてその様子を眺めていた。もちろん、無表情で。
心の中では(うわぁ、原作通りの展開だ。あいつら本当にしつこいな。頑張れノエル、逃げろノエル)と応援しているのだが、傍から見れば冷徹な観察者にしか見えないだろう。
ふと、ノエルが包囲網の隙間からこちらを見た。
助けを求めるような、すがるような瞳。
まずい。目が合った。
俺は咄嗟に視線を逸らし、空を見上げた。今日の天気は晴れ。雲ひとつない青空だ。あそこの雲、クロワッサンに見えるな……などと現実逃避を始める。
すると、俺の態度を見た取り巻きのアルファの一人が、勘違いをして声を上げた。
「おい見ろ、ヴァルドア卿が呆れてらっしゃるぞ! こんな身分の低いオメガにうつつを抜かして、みっともないと!」
「ひっ……確かに、あの冷たい目は……」
「やばい、不興を買ったか? 行こうぜ」
彼らは俺(の方を見ていただけだが)を恐れ、蜘蛛の子を散らすようにノエルから離れていった。
後に残されたのは、ぽつんと立ち尽くすノエルと、木陰で空を見上げている俺だけ。
広場には、すでにペアを組み終えた生徒たちが散らばっている。
余っているのは、俺とノエルだけだ。
『嘘だろ……』
俺は冷や汗をかいた。この状況はまずい。教師がこちらに気づき、手招きをしている。
「ヴァルドア、シルヴァ。お前たち余っているなら組みなさい」
神よ。あなたは俺に死ねと言うのですか。
ノエルがおずおずと近づいてくる。
「あ、あの……ルシアン様。よろしくお願いします」
俺はゆっくりと彼を見下ろした。
断りたい。「腹が痛い」と言って保健室に逃げ込みたい。だが、公爵家の人間がそんな仮病を使えるわけがないし、教師の命令に背くのも目立ちすぎる。
俺は短く息を吐き出した。
「……勝手にしろ」
精一杯の拒絶と諦めを含んだ言葉だった。お前の好きにすればいい、俺は知らん、という意味だ。
だがノエルは、ぱあっと顔を輝かせた。
「はい! 精一杯、頑張ります!」
実技の内容は、互いの掌を合わせ、魔力を循環させるというものだった。
肌と肌が触れ合う。それはバース性を持つこの世界の人間にとって、非常に親密で危険な行為だ。
俺は革手袋を外すのを躊躇ったが、ノエルはすでに白い素手を差し出している。仕方なく、俺も手袋を外して、彼の手のひらに自分の手を重ねた。
小さくて、温かい手。
そして、ふわりと香る甘い匂いが強くなる。
一瞬、背筋がぞくりとした。本能が「食らえ」と叫ぶのを、理性でねじ伏せる。
ノエルの方も、顔を真っ赤にして震えていた。
「ルシアン様の魔力……すごく、大きくて……冷たくて、でも綺麗です」
彼はうっとりとした目で俺を見つめた。
違う、それは俺が緊張して手が冷たくなっているだけだ。
俺はできるだけ早く終わらせるために、魔力循環の効率を最大まで高めた。本来なら時間をかけて行う工程を、一瞬で終わらせる。
「終わりだ」
俺はパッと手を離し、すぐに手袋をはめ直した。まるで汚いものに触れたかのような素早さだったが、これは自分の理性が持たなくなるのを恐れての行動だ。
ノエルは少し寂しそうに自分の手を見つめ、それから俺を見上げた。
「ありがとうございました。あの、さっきの……助けていただいて」
「……何のことだ」
「僕に群がっていた人たちを、視線だけで追い払ってくれましたよね。僕が困っているのに気づいて」
またその解釈か。
「勘違いするな」
俺は冷たく言い放った。
「騒がしくて目障りだっただけだ。お前のためじゃない」
これなら突き放せるだろう。自分がいかにちっぽけで、迷惑な存在か自覚するはずだ。
しかし、ノエルはなぜか、深く納得したようにうなずいた。
「はい……そうですね。僕が弱くて、自分で対処できなかったから、ルシアン様を不快にさせてしまったんですね。……すみません。もっと強くなります。ルシアン様の隣に立っても恥ずかしくないように」
『えっ、なんでそうなるの?』
ポジティブすぎる。いや、これは彼の生存戦略なのか?
俺の拒絶を「指導」として受け取っているようだ。
ノエルの瞳には、揺るぎない尊敬と、熱っぽい好意が宿っていた。
俺は何も言えなくなり、ただ黙って彼に背を向けた。
背中にかかる視線が熱い。
破滅フラグ回避どころか、特大のフラグ建築を着々と進めている気がしてならない。
いや、正確にはノエルの中での俺の評価が、何らかのバグを起こして急上昇している気がする。
あの日以来、ノエルからの視線に「怯え」ではなく「熱」がこもるようになった。廊下ですれ違うと、深々とお辞儀をしてくる。食堂で遠くの席から微笑みかけてくる。
そのたびに俺は「見なかったこと」にするスキルを発動しているが、精神的な疲労が限界に近かった。
そんな中、一番恐れていた授業がやってきた。
魔法実技演習だ。
この世界の貴族は魔力を持って生まれる者が多く、学園でも魔法の制御や運用を学ぶ授業がある。そしてお約束のように、二人一組でのペアワークが行われるのだ。
演習場である広い芝生広場に、クラス全員が集められた。
教師が声を張り上げる。
「では、二人一組になってペアを作れ。魔力の波長を合わせる練習を行う」
俺にとって地獄の時間の始まりだ。
本来なら、公爵家の俺と組みたがる生徒は山ほどいるはずだ。だが、今の俺は「孤高で人を寄せ付けない絶対零度の貴公子」という、なんとも痛々しいキャラ付けが定着してしまっている。
案の定、周囲の生徒たちは俺を遠巻きにし、互いに目配せをしてペアを作っていく。
「ルシアン様に声をかけるなんて恐れ多い」
「邪魔をしたら氷漬けにされるぞ」
そんなヒソヒソ声が聞こえる。いいぞ、その調子だ。俺は一人で余って、教師と組むか見学になればそれが一番平和だ。
一方で、ノエルの方は別の意味でピンチを迎えていた。
オメガである彼に、下心を持ったアルファたちが群がっているのだ。
「おい、俺と組もうぜ。手取り足取り教えてやるよ」
「僕の方が魔力量が多いぞ。いい経験になる」
ノエルは困ったように眉を下げ、愛想笑いを浮かべて後ずさっている。拒絶したいが、相手は身分のある貴族たちだ。無下に断れないのだろう。
俺は広場の端にある大きなオークの木の下で、腕組みをしてその様子を眺めていた。もちろん、無表情で。
心の中では(うわぁ、原作通りの展開だ。あいつら本当にしつこいな。頑張れノエル、逃げろノエル)と応援しているのだが、傍から見れば冷徹な観察者にしか見えないだろう。
ふと、ノエルが包囲網の隙間からこちらを見た。
助けを求めるような、すがるような瞳。
まずい。目が合った。
俺は咄嗟に視線を逸らし、空を見上げた。今日の天気は晴れ。雲ひとつない青空だ。あそこの雲、クロワッサンに見えるな……などと現実逃避を始める。
すると、俺の態度を見た取り巻きのアルファの一人が、勘違いをして声を上げた。
「おい見ろ、ヴァルドア卿が呆れてらっしゃるぞ! こんな身分の低いオメガにうつつを抜かして、みっともないと!」
「ひっ……確かに、あの冷たい目は……」
「やばい、不興を買ったか? 行こうぜ」
彼らは俺(の方を見ていただけだが)を恐れ、蜘蛛の子を散らすようにノエルから離れていった。
後に残されたのは、ぽつんと立ち尽くすノエルと、木陰で空を見上げている俺だけ。
広場には、すでにペアを組み終えた生徒たちが散らばっている。
余っているのは、俺とノエルだけだ。
『嘘だろ……』
俺は冷や汗をかいた。この状況はまずい。教師がこちらに気づき、手招きをしている。
「ヴァルドア、シルヴァ。お前たち余っているなら組みなさい」
神よ。あなたは俺に死ねと言うのですか。
ノエルがおずおずと近づいてくる。
「あ、あの……ルシアン様。よろしくお願いします」
俺はゆっくりと彼を見下ろした。
断りたい。「腹が痛い」と言って保健室に逃げ込みたい。だが、公爵家の人間がそんな仮病を使えるわけがないし、教師の命令に背くのも目立ちすぎる。
俺は短く息を吐き出した。
「……勝手にしろ」
精一杯の拒絶と諦めを含んだ言葉だった。お前の好きにすればいい、俺は知らん、という意味だ。
だがノエルは、ぱあっと顔を輝かせた。
「はい! 精一杯、頑張ります!」
実技の内容は、互いの掌を合わせ、魔力を循環させるというものだった。
肌と肌が触れ合う。それはバース性を持つこの世界の人間にとって、非常に親密で危険な行為だ。
俺は革手袋を外すのを躊躇ったが、ノエルはすでに白い素手を差し出している。仕方なく、俺も手袋を外して、彼の手のひらに自分の手を重ねた。
小さくて、温かい手。
そして、ふわりと香る甘い匂いが強くなる。
一瞬、背筋がぞくりとした。本能が「食らえ」と叫ぶのを、理性でねじ伏せる。
ノエルの方も、顔を真っ赤にして震えていた。
「ルシアン様の魔力……すごく、大きくて……冷たくて、でも綺麗です」
彼はうっとりとした目で俺を見つめた。
違う、それは俺が緊張して手が冷たくなっているだけだ。
俺はできるだけ早く終わらせるために、魔力循環の効率を最大まで高めた。本来なら時間をかけて行う工程を、一瞬で終わらせる。
「終わりだ」
俺はパッと手を離し、すぐに手袋をはめ直した。まるで汚いものに触れたかのような素早さだったが、これは自分の理性が持たなくなるのを恐れての行動だ。
ノエルは少し寂しそうに自分の手を見つめ、それから俺を見上げた。
「ありがとうございました。あの、さっきの……助けていただいて」
「……何のことだ」
「僕に群がっていた人たちを、視線だけで追い払ってくれましたよね。僕が困っているのに気づいて」
またその解釈か。
「勘違いするな」
俺は冷たく言い放った。
「騒がしくて目障りだっただけだ。お前のためじゃない」
これなら突き放せるだろう。自分がいかにちっぽけで、迷惑な存在か自覚するはずだ。
しかし、ノエルはなぜか、深く納得したようにうなずいた。
「はい……そうですね。僕が弱くて、自分で対処できなかったから、ルシアン様を不快にさせてしまったんですね。……すみません。もっと強くなります。ルシアン様の隣に立っても恥ずかしくないように」
『えっ、なんでそうなるの?』
ポジティブすぎる。いや、これは彼の生存戦略なのか?
俺の拒絶を「指導」として受け取っているようだ。
ノエルの瞳には、揺るぎない尊敬と、熱っぽい好意が宿っていた。
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