新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん

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エピローグ「新しい年の、始まりの味」

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 あれから、5年の月日が流れた。
 王都の一角に一軒の小さなレストランが佇んでいる。

『陽だまりの食卓』

 それが店の名前だ。
 派手な看板はないが、その温かい雰囲気と何よりここでしか味わえない絶品の料理を求めて、店は連日多くの客で賑わっていた。
 店の主人はカイ・フォン・アークライト。
 そして騎士団長の職務の合間を縫って、時々ウェイターとして店を手伝うのは彼の番であるリアムだ。
 氷の騎士が慣れない手つきで皿を運ぶ姿は、今や王都の名物の一つとなっていた。

 そして、今日は新年。
 店は休みを取り、家族水入らずの時間を過ごしていた。

「パパ、これなあに?」

 食卓の上を指さして、カイにそっくりな穏やかな顔立ちの男の子アルが尋ねた。
 彼の隣ではリアムに似て勝ち気そうな瞳をした女の子リナが、早く食べたいとフォークを握りしめている。
 二人はカイとリアムの間に生まれた、愛しい宝物だ。

 食卓の中央には、大きな角皿に美しく盛り付けられたおせち料理があった。
 5年前、カイが凍える物置部屋で一人で作ったものとは比べ物にならないほど豪華で、彩り豊かだ。

「これはね、黒豆っていうんだよ。一年、まめに、元気に働けますようにっていうおまじない」

 カイはアルの皿に黒豆を少し取り分けてやりながら、優しく微笑んだ。

「じゃあ、このキラキラしてるのは?」

 リナが指さしたのは、魚の卵の塩漬けだ。

「それは、数の子。たくさんの子供に恵まれますようにって意味があるんだ。アルとリナが生まれてきてくれたみたいにね」

「へえ!」

 子供たちは目を輝かせてカイの話に聞き入っている。
 その様子をリアムが深い愛情に満ちた眼差しで見守っていた。
 床ではすっかり大きくなった銀狼のシルヴァが、おこぼれを期待して尻尾を振っている。

 あの日の、孤独で絶望に満ちた新年が嘘のようだ。
 一つの料理が運命を動かした。
 一人の男との出会いが世界を変えた。
 凍える部屋で一人で作った始まりの味は、今、こんなにもたくさんの温かい笑顔に囲まれている。

「リアムさんも、どうぞ」

 カイがリアムの皿に料理を取り分ける。

「ああ」

 リアムはその一切れを口に運び、ゆっくりと味わった。
 そしてカイに向かって、最高の笑顔を見せた。

「……美味い。世界で一番だ」

 それは初めて出会った日と、全く同じ言葉。
 カイは幸せを噛み締めるように、そっと微笑み返した。

「明けましておめでとうございます、リアムさん」

「ああ。明けましておめでとう、カイ。そして、これからもよろしく頼む」

 二人は子供たちに気づかれないように、テーブルの下でそっと手を繋いだ。

 窓の外では新しい年を祝う教会の鐘が、高らかに鳴り響いていた。
 陽だまりの食卓は、今日も幸せな温もりと美味しい香りに満ち溢れている。
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