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番外編「朝の温もりと永遠の約束」
厚い雲の隙間から差し込んだ朝陽が、寝室の床に柔らかな光の筋を描いていた。
広々とした天蓋付きのベッドの中で、ルシアンはゆっくりとまぶたを開いた。何よりもルシアンを心地よくさせていたのは、背後から彼をすっぽりと包み込んでいる温かな体温だった。
たくましい腕がルシアンの腰にしっかりと巻きつき、背中には広く厚い胸板がぴったりと張り付いている。深い森を思わせるアルファの香りが、ルシアンの全身を甘く満たしていた。
ルシアンがそっとマルコの腕の中から抜け出そうと身じろぎした瞬間、腰に回されていた腕にぎゅっと強い力が込められた。
「……どこへ行く気だ」
寝起きの低くかすれた声が、ルシアンのうなじをくすぐる。ルシアンは思わず小さく肩を跳ねさせ、顔を赤らめて振り返った。
「マルコ様、もう朝です。朝食の準備を……」
「厨房の者に任せておけばいい。まだ、もう少しだけこうしていろ」
マルコはルシアンの言葉を遮るように、彼の肩に顔を埋めて深く息を吸い込んだ。
「マルコ様は、本当にわがままですね」
わざと少しだけ呆れたような声を出してみるが、マルコは意に介する様子もなく、ルシアンの頬に短い口づけを落とした。
「お前に対してだけだ。他の者には微塵も興味がない」
しばらくの間、ただ互いの体温を分け合う静かな時間が流れた。やがて、マルコがゆっくりと体を起こし、ベッドの脇に置かれていた黒いベルベットの小箱を手に取った。
マルコが小箱の蓋を開けると、そこには大粒の紫水晶があしらわれた美しい指輪が収められていた。
「ルシアン」
マルコが低い声で名を呼ぶと、ルシアンは息を呑み、小さく震える両手を胸の前で握りしめた。
「過去にお前を傷つけたすべてのものを、私が破壊する。お前の悲しみも、苦痛も、すべて私が奪い取る。だからお前は、ただ私の隣で笑っていてくれればいい」
マルコはルシアンの左手を取り、その薬指に冷たい金属の輪をゆっくりと滑り込ませた。
「私と、正式に結婚してくれ。帝国の、いや、私個人の唯一の伴侶として、永遠にそばにいてほしい」
その言葉を聞いた瞬間、ルシアンの瞳から堪えきれなくなった涙が大粒のしずくとなってこぼれ落ちた。ルシアンは泣き笑いのような表情を浮かべながら、マルコの首に両腕をしっかりと回した。
「……はい。喜んで、お受けいたします」
声は震えていたが、その響きには迷いは一切なかった。
「私こそ、あなたなしではもう生きていけません。マルコ様、愛しています」
ルシアンが初めて口にした明確な愛の言葉に、マルコは息を呑み、そして次の瞬間、ルシアンの体を抱え込むようにして強く抱きしめた。
広々とした天蓋付きのベッドの中で、ルシアンはゆっくりとまぶたを開いた。何よりもルシアンを心地よくさせていたのは、背後から彼をすっぽりと包み込んでいる温かな体温だった。
たくましい腕がルシアンの腰にしっかりと巻きつき、背中には広く厚い胸板がぴったりと張り付いている。深い森を思わせるアルファの香りが、ルシアンの全身を甘く満たしていた。
ルシアンがそっとマルコの腕の中から抜け出そうと身じろぎした瞬間、腰に回されていた腕にぎゅっと強い力が込められた。
「……どこへ行く気だ」
寝起きの低くかすれた声が、ルシアンのうなじをくすぐる。ルシアンは思わず小さく肩を跳ねさせ、顔を赤らめて振り返った。
「マルコ様、もう朝です。朝食の準備を……」
「厨房の者に任せておけばいい。まだ、もう少しだけこうしていろ」
マルコはルシアンの言葉を遮るように、彼の肩に顔を埋めて深く息を吸い込んだ。
「マルコ様は、本当にわがままですね」
わざと少しだけ呆れたような声を出してみるが、マルコは意に介する様子もなく、ルシアンの頬に短い口づけを落とした。
「お前に対してだけだ。他の者には微塵も興味がない」
しばらくの間、ただ互いの体温を分け合う静かな時間が流れた。やがて、マルコがゆっくりと体を起こし、ベッドの脇に置かれていた黒いベルベットの小箱を手に取った。
マルコが小箱の蓋を開けると、そこには大粒の紫水晶があしらわれた美しい指輪が収められていた。
「ルシアン」
マルコが低い声で名を呼ぶと、ルシアンは息を呑み、小さく震える両手を胸の前で握りしめた。
「過去にお前を傷つけたすべてのものを、私が破壊する。お前の悲しみも、苦痛も、すべて私が奪い取る。だからお前は、ただ私の隣で笑っていてくれればいい」
マルコはルシアンの左手を取り、その薬指に冷たい金属の輪をゆっくりと滑り込ませた。
「私と、正式に結婚してくれ。帝国の、いや、私個人の唯一の伴侶として、永遠にそばにいてほしい」
その言葉を聞いた瞬間、ルシアンの瞳から堪えきれなくなった涙が大粒のしずくとなってこぼれ落ちた。ルシアンは泣き笑いのような表情を浮かべながら、マルコの首に両腕をしっかりと回した。
「……はい。喜んで、お受けいたします」
声は震えていたが、その響きには迷いは一切なかった。
「私こそ、あなたなしではもう生きていけません。マルコ様、愛しています」
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