12 / 24
第11話「竜の力と、絶対的な信頼」
しおりを挟む
「魔竜公ダリウス・ナイトレイヴンによる傷害事件」は、瞬く間に王宮を駆け巡った。
オズワルド財務卿はこれを好機と見てダリウスの危険性を声高に糾弾し、彼に与する貴族たちも同調した。
事態はダリウスの爵位剥奪や領地没収を求める声にまで発展していた。
そしてその矛先は当然、彼を擁護してきた俺にも向けられた。
「宰相クリストフは魔竜公に篭絡されている!」
「そうだ、二人で共謀し、国家転覆を企んでいるに違いない!」
根も葉もない噂が流れ、俺の立場は日に日に悪化していく。
そしてついにオズワルドの仕掛けた罠が、最終段階へと移行した。
俺の宰相執務室に近衛騎士団が踏み込んできた。
「宰相クリストフ・フォン・ヴァルディオス! 貴公に国家反逆罪の容疑がかけられた! 大人しく同行願おう!」
騎士団長が突きつけてきた令状には、俺がダリウスと共謀して隣国に竜涙石を横流ししていたという、信じがたい罪状が記されていた。
そしてその証拠として、俺のサインが偽造された密約書まで用意されていた。
あまりにも見え透いた罠。
だが今の俺にはそれを覆すだけの力がなかった。
俺は抵抗することなく投獄された。
冷たく湿った石造りの牢獄の中で、俺は己の無力さを噛み締めていた。
ダリウスを信じていた。
だが彼を信じるあまり、敵の狡猾さを見誤っていた。
誰もが俺の罪を信じて疑わなかった。
俺がこれまでに行ってきた政策改革で不利益を被った貴族たちは、鬼の首を取ったように俺を非難した。
俺を監視していたセドリックでさえ、苦々しい表情で「やはり貴方はそういう人間だったのですか」と吐き捨てた。
絶望的な状況。
だが不思議と心は落ち着いていた。
なぜなら俺には確信があったからだ。
(――あの男だけは、俺を信じている)
その確信はすぐに現実のものとなった。
ダリウスが俺が投獄されたと知るや否や、王宮に乗り込んできたのだ。
彼は尋問室でふんぞり返るオズワルドの前に、音もなく現れた。
「……何の用かな、魔竜公。君も共犯者として捕まりに来たのかね?」
オズワルドが勝利を確信した笑みで言う。
だがダリウスは全く動じなかった。
「あいつがそんなことをするはずがない」
ただ静かに、だが絶対的な確信を込めて、彼はそう断言した。
「戯言を! 証拠は全て挙がっておるわ!」
「証拠だと?」
ダリウスはふっと鼻で笑った。
彼の瞳は、常人にはない深い輝きを宿している。かつてクリストフが「祝福」と呼んだ、竜の血筋だけが持つ特別な力――その片鱗が、今まさに発揮されようとしていた。
そして彼の赤い瞳が妖しい光を放ち始める。
それは竜の血を引く者にしか使えない、万物を見通すと言われる真実の瞳。
「お前のような矮小な人間の浅知恵など、俺の目には全てお見通しだ」
ダリウスはオズワルドが隠し持っていた不正の証拠――裏帳簿の隠し場所、密会していた商人との金の流れ、輸送隊襲撃を指示した密書――その全てを、まるで見てきたかのように語り始めた。
オズワルドの顔からみるみる血の気が引いていく。
「な、なぜそれを……ありえん……!」
「終わりだ、オズワルド」
ダリウスのその一言で全ては決した。
彼の情報に基づき近衛騎士団が財務卿の屋敷を捜索した結果、不正の証拠が次々と発見された。
俺にかけられた容疑は晴れ、逆にオズワルドとその一派が国家反逆罪で投獄されることになった。
牢から出された俺を待っていたのは、無言で佇むダリウスだった。
「……信じていたよ」
俺がそう言うと彼は少しだけ驚いたように目を見開き、そしてふいと顔を背けた。
その耳がわずかに赤く染まっているのを、俺は見逃さなかった。
「当たり前だ」
ぶっきらぼうなその返事に、俺は思わず笑みがこぼれた。
この絶対的な信頼が俺の心をどれだけ救ってくれたことか。
俺たちはこの事件を通して、さらに強く、深く結びついたのだった。
オズワルド財務卿はこれを好機と見てダリウスの危険性を声高に糾弾し、彼に与する貴族たちも同調した。
事態はダリウスの爵位剥奪や領地没収を求める声にまで発展していた。
そしてその矛先は当然、彼を擁護してきた俺にも向けられた。
「宰相クリストフは魔竜公に篭絡されている!」
「そうだ、二人で共謀し、国家転覆を企んでいるに違いない!」
根も葉もない噂が流れ、俺の立場は日に日に悪化していく。
そしてついにオズワルドの仕掛けた罠が、最終段階へと移行した。
俺の宰相執務室に近衛騎士団が踏み込んできた。
「宰相クリストフ・フォン・ヴァルディオス! 貴公に国家反逆罪の容疑がかけられた! 大人しく同行願おう!」
騎士団長が突きつけてきた令状には、俺がダリウスと共謀して隣国に竜涙石を横流ししていたという、信じがたい罪状が記されていた。
そしてその証拠として、俺のサインが偽造された密約書まで用意されていた。
あまりにも見え透いた罠。
だが今の俺にはそれを覆すだけの力がなかった。
俺は抵抗することなく投獄された。
冷たく湿った石造りの牢獄の中で、俺は己の無力さを噛み締めていた。
ダリウスを信じていた。
だが彼を信じるあまり、敵の狡猾さを見誤っていた。
誰もが俺の罪を信じて疑わなかった。
俺がこれまでに行ってきた政策改革で不利益を被った貴族たちは、鬼の首を取ったように俺を非難した。
俺を監視していたセドリックでさえ、苦々しい表情で「やはり貴方はそういう人間だったのですか」と吐き捨てた。
絶望的な状況。
だが不思議と心は落ち着いていた。
なぜなら俺には確信があったからだ。
(――あの男だけは、俺を信じている)
その確信はすぐに現実のものとなった。
ダリウスが俺が投獄されたと知るや否や、王宮に乗り込んできたのだ。
彼は尋問室でふんぞり返るオズワルドの前に、音もなく現れた。
「……何の用かな、魔竜公。君も共犯者として捕まりに来たのかね?」
オズワルドが勝利を確信した笑みで言う。
だがダリウスは全く動じなかった。
「あいつがそんなことをするはずがない」
ただ静かに、だが絶対的な確信を込めて、彼はそう断言した。
「戯言を! 証拠は全て挙がっておるわ!」
「証拠だと?」
ダリウスはふっと鼻で笑った。
彼の瞳は、常人にはない深い輝きを宿している。かつてクリストフが「祝福」と呼んだ、竜の血筋だけが持つ特別な力――その片鱗が、今まさに発揮されようとしていた。
そして彼の赤い瞳が妖しい光を放ち始める。
それは竜の血を引く者にしか使えない、万物を見通すと言われる真実の瞳。
「お前のような矮小な人間の浅知恵など、俺の目には全てお見通しだ」
ダリウスはオズワルドが隠し持っていた不正の証拠――裏帳簿の隠し場所、密会していた商人との金の流れ、輸送隊襲撃を指示した密書――その全てを、まるで見てきたかのように語り始めた。
オズワルドの顔からみるみる血の気が引いていく。
「な、なぜそれを……ありえん……!」
「終わりだ、オズワルド」
ダリウスのその一言で全ては決した。
彼の情報に基づき近衛騎士団が財務卿の屋敷を捜索した結果、不正の証拠が次々と発見された。
俺にかけられた容疑は晴れ、逆にオズワルドとその一派が国家反逆罪で投獄されることになった。
牢から出された俺を待っていたのは、無言で佇むダリウスだった。
「……信じていたよ」
俺がそう言うと彼は少しだけ驚いたように目を見開き、そしてふいと顔を背けた。
その耳がわずかに赤く染まっているのを、俺は見逃さなかった。
「当たり前だ」
ぶっきらぼうなその返事に、俺は思わず笑みがこぼれた。
この絶対的な信頼が俺の心をどれだけ救ってくれたことか。
俺たちはこの事件を通して、さらに強く、深く結びついたのだった。
252
あなたにおすすめの小説
もふもふ守護獣と運命の出会い—ある日、青年は異世界で大きな毛玉と恋に落ちた—
なの
BL
事故に巻き込まれ、雪深い森で倒れていた青年・ユナ。
命の危険に晒されていた彼を救ったのは、白銀の毛並みを持つ美しい人狼・ゼルだった。
ゼルは誰よりも優しくて、そして――独占欲がとにかく強い。
気がつけばユナは、もふもふの里へ連れていかれる。
そこでは人狼だけでなく、獣人や精霊、もふもふとした種族たちが仲良く暮らしており、ユナは珍しい「人間」として大歓迎される。
しかし、ゼルだけは露骨にユナを奪われまいとし、
「触るな」「見るな」「近づくな」と嫉妬を隠そうとしない。
もふもふに抱きしめられる日々。
嫉妬と優しさに包まれながら、ユナは少しずつ居場所を取り戻していく――。
勇者として召喚されたのに、敵である魔王様に捕らえられました。でもなぜか「俺の花嫁になれ」と世界一甘い溺愛が始まって困惑しています
水凪しおん
BL
勇者として異世界に召喚された高校生、橘明(たちばな あき)。彼に与えられた使命は、世界を闇に染める魔王を討伐すること。しかし、幾多の困難の末にたどり着いた魔王城で彼を待っていたのは、想像を絶するほど美しく、そして孤独な魔王カイリだった。
圧倒的な力の前に膝をついたアキに、魔王が告げたのは意外な言葉。
「お前を俺の所有物にする。これは決定だ」
これは、敵同士だったはずの二人が、やがて世界を救うための「最強の主従」となり、誰よりも深い愛で結ばれる物語。
冷徹な仮面の下に隠された魔王の激しい独占欲と、戸惑いながらもその愛に心解かされていく転生勇者。
甘くて少しだけ切ない、至高の異世界ファンタジーBL、ここに開幕!
冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~
水凪しおん
BL
「君は、俺の宝だ」
無実の罪を着せられ、婚約破棄の末に極寒の辺境へ追放された公爵令息ジュリアン。
彼を待ち受けていたのは、「北の食人狼」と恐れられる将軍グリーグとの政略結婚だった。
死を覚悟したジュリアンだったが、出会った将軍は、噂とは真逆の不器用で心優しいアルファで……?
前世の記憶を持つジュリアンは、現代知識と魔法でボロボロの要塞を快適リフォーム!
手作りスープで将軍の胃袋を掴み、特産品開発で街を救い、気づけば冷徹将軍から規格外の溺愛を受けることに。
一方、ジュリアンを捨てた王都では、破滅の足音が近づいていて――。
冤罪追放から始まる、銀狼将軍との幸せいっぱいな溺愛スローライフ、ここに開幕!
【オメガバース/ハッピーエンド/ざまぁあり/子育て/スパダリ】
過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件
水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。
赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。
目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。
「ああ、終わった……食べられるんだ」
絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。
「ようやく会えた、我が魂の半身よ」
それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!?
最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。
この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない!
そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。
永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。
敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。
動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする
葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。
前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち…
でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ…
優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。
オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に
水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。
誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。
しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。
学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。
反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。
それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。
「お前は俺の所有物だ」
傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。
強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。
孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。
これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる