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第十一話「陽だまりのスローライフ」
あの激しい戦いから、数ヶ月の月日が流れた。
森のログハウスには、今日も二人の穏やかな笑い声が響いている。俺とグレイは恋人として、満ち足りた幸せな日々を送っていた。
グレイは、以前にも増して家の仕事を手伝ってくれるようになった。彼の力仕事のおかげで、庭には新しく、美しい花壇と、二人で座れるブランコが作られた。俺がキッチンでお菓子を焼いていると、彼は黙って後ろから俺を抱きしめ、その肩に顎を乗せてくるのが、最近の彼の甘え方だった。
ある日、俺たちは久しぶりに、町へ買い出しに出かけた。二人で手を繋いで歩く町の道は、以前一人で歩いた時とは全く違う景色に見えた。道行く人々が、強面のグレイと俺の組み合わせを不思議そうに見ていたけれど、そんなことは全く気にならなかった。
ギルドの前を通りかかった時、冒険者たちの噂話が、ふと耳に入ってきた。
「聞いたか? Sランクパーティの『紅蓮の剣』、とうとう解散したらしいぜ」
「ああ、リーダーのアランが自暴自棄になって、酒場で暴れて捕まったって話だ。他のメンバーも、みんな散り散りになったとか」
「結界師を追い出したのが運の尽きだったな。自業自得だ」
その言葉を聞いても、俺の心は少しも揺れなかった。彼らがどうなろうと、もう俺には関係のないことだ。今の俺には、過去を振り返る必要など、どこにもなかった。隣にいるグレイが、俺の表情を窺うように顔を覗き込んできたので、俺は「大丈夫だよ」と微笑みかけて、彼の手にぎゅっと力を込めた。
家に帰ると、グレイが、町からの帰り道に庭で摘んだらしい野の花を、照れくさそうに俺に差し出してくれた。
「……お前に、似合うと思って」
色とりどりの、素朴で可愛らしい花束。その不器用な優しさが、俺にとっては何よりもかけがえのない宝物だった。俺は、その花をキッチンの小さな瓶に飾り、お礼に、彼の好物である蜂蜜たっぷりのパンケーキを焼いた。
二人でテーブルに向かい合い、焼きたてのパンケーキを頬張る。
窓から差し込む午後の陽光が、キラキラとテーブルの上で踊っている。その光景は、まるで一枚の絵画のように、温かく、そして幸せに満ちていた。
「ノア、美味い」
「ふふ、良かった。また作ってあげるね」
特別なことなんて何もない。ただ、愛する人と共に食卓を囲み、笑い合う。そんな、ありふれた日常こそが、俺がずっと求めていたものだったのだ。
追放されたあの日、俺は絶望の代わりに、自由への希望を見出した。そして、この森で、最高の家と、最高のパートナーを見つけることができた。
窓の外では、グレイが作ってくれたブランコが、心地よい風に揺れている。
陽だまりのような、甘くて温かい幸せが、ここにはあった。
俺たちのスローライフは、これからもずっと、この聖域の中で続いていく。
森のログハウスには、今日も二人の穏やかな笑い声が響いている。俺とグレイは恋人として、満ち足りた幸せな日々を送っていた。
グレイは、以前にも増して家の仕事を手伝ってくれるようになった。彼の力仕事のおかげで、庭には新しく、美しい花壇と、二人で座れるブランコが作られた。俺がキッチンでお菓子を焼いていると、彼は黙って後ろから俺を抱きしめ、その肩に顎を乗せてくるのが、最近の彼の甘え方だった。
ある日、俺たちは久しぶりに、町へ買い出しに出かけた。二人で手を繋いで歩く町の道は、以前一人で歩いた時とは全く違う景色に見えた。道行く人々が、強面のグレイと俺の組み合わせを不思議そうに見ていたけれど、そんなことは全く気にならなかった。
ギルドの前を通りかかった時、冒険者たちの噂話が、ふと耳に入ってきた。
「聞いたか? Sランクパーティの『紅蓮の剣』、とうとう解散したらしいぜ」
「ああ、リーダーのアランが自暴自棄になって、酒場で暴れて捕まったって話だ。他のメンバーも、みんな散り散りになったとか」
「結界師を追い出したのが運の尽きだったな。自業自得だ」
その言葉を聞いても、俺の心は少しも揺れなかった。彼らがどうなろうと、もう俺には関係のないことだ。今の俺には、過去を振り返る必要など、どこにもなかった。隣にいるグレイが、俺の表情を窺うように顔を覗き込んできたので、俺は「大丈夫だよ」と微笑みかけて、彼の手にぎゅっと力を込めた。
家に帰ると、グレイが、町からの帰り道に庭で摘んだらしい野の花を、照れくさそうに俺に差し出してくれた。
「……お前に、似合うと思って」
色とりどりの、素朴で可愛らしい花束。その不器用な優しさが、俺にとっては何よりもかけがえのない宝物だった。俺は、その花をキッチンの小さな瓶に飾り、お礼に、彼の好物である蜂蜜たっぷりのパンケーキを焼いた。
二人でテーブルに向かい合い、焼きたてのパンケーキを頬張る。
窓から差し込む午後の陽光が、キラキラとテーブルの上で踊っている。その光景は、まるで一枚の絵画のように、温かく、そして幸せに満ちていた。
「ノア、美味い」
「ふふ、良かった。また作ってあげるね」
特別なことなんて何もない。ただ、愛する人と共に食卓を囲み、笑い合う。そんな、ありふれた日常こそが、俺がずっと求めていたものだったのだ。
追放されたあの日、俺は絶望の代わりに、自由への希望を見出した。そして、この森で、最高の家と、最高のパートナーを見つけることができた。
窓の外では、グレイが作ってくれたブランコが、心地よい風に揺れている。
陽だまりのような、甘くて温かい幸せが、ここにはあった。
俺たちのスローライフは、これからもずっと、この聖域の中で続いていく。
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