Sランクパーティを「役立たず」と追放された結界師の俺、魔物の森に理想のマイホームを建てていたら、最強の傭兵に懐かれてしまいました

水凪しおん

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番外編「甘党傭兵と初めてのデート」

「ノア」

 ある晴れた日の午後、グレイが雑誌を片手に、真剣な顔で俺に話しかけてきた。最強の傭兵が、戦闘以外でこれほど真剣な顔をするのは珍しい。

「どうしたの、グレイ?」
「……町の菓子屋の、あの、三段重ねの果物がたくさん乗ったやつが、食べてみたい」

 彼が、少しだけ頬を染めながら指さしたのは、雑誌に特集されていた、フルーツタワーパフェの写真だった。最強と謳われる男が、キラキラとした目で、甘いパフェをおねだりしてくる。そのあまりの可愛さに、俺は思わず吹き出してしまった。

「わかった、わかったよ。じゃあ、今度の日曜日、一緒に行こうか」
「! 本当か!?」

 俺が二つ返事で承諾すると、グレイは子犬のようにぱあっと顔を輝かせた。こうして、俺とグレイの、初めての「デート」の予定が決まった。

 日曜日。俺たちは、少しだけお洒落をして町へ出かけた。グレイは、俺が以前プレゼントしたシンプルなシャツを着てくれている。それがなんだか嬉しくて、自然と足取りも軽くなった。

 目的の菓子屋は、町の広場に面した、可愛らしいお店だった。ショーケースには、色とりどりのケーキや焼き菓子が宝石のように並んでいる。グレイは、そのショーケースに釘付けになり、目をきらきらと輝かせていた。その強面の風貌と、甘いケーキを見つめる純粋な眼差しのギャップに、店の女性客や店員さんまでが、うっとりとした表情で見とれている。

 俺たちは窓際の席に座り、お目当てのフルーツタワーパフェと、俺はモンブランを注文した。運ばれてきた巨大なパフェを前に、グレイは子供のようにはしゃいでいる。

「すごいな……! 食べるのがもったいないくらいだ」
「ふふ、写真撮ってあげるよ」

 俺がそう言って、魔道具のカメラを向けると、彼は照れくさそうに、しかし嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は、俺だけの宝物だ。

 帰り道、二人で今日の出来事を話しながら歩いていると、路地裏から柄の悪いチンピラ数人に絡まれてしまった。
「よう、そこの兄ちゃんたち。楽しそうじゃねえか。俺たちにもその金、少し分けてくれよ」

 あからさまな言いがかり。俺がどうしようかと身構える前に、グレイが一歩前に出た。

「……失せろ」

 ただ、それだけ。たった一言、軽く睨んだだけで、チンピラたちは全員、腰を抜かして悲鳴を上げ、我先にと逃げていった。最強傭兵の迫力は、伊達ではないらしい。

「大丈夫か、ノア」
「う、うん。ありがとう、グレイ。かっこよかったよ」
 俺がそう言うと、彼は「当然だ」とぶっきらぼうに答えながらも、その耳は真っ赤に染まっていた。

 家に帰り着き、お土産に買ってきたケーキを二人で食べさせ合う。

「……お前の作る菓子が、やっぱり一番美味いが、これも悪くないな」
「気に入ったなら良かった。また一緒に来ようね、グレイ」
「……ああ」

 甘いケーキと、それ以上に甘い時間。
 二人の絆は、町の菓子屋の思い出と共に、また一つ、深く、そして強くなったのだった。

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