正義のヒーローはオメガでした。悪の幹部に正体がバレて求愛されています

水凪しおん

文字の大きさ
9 / 16

第8話「極光のアンサンブル」

しおりを挟む
 氷と炎がぶつかり合い、爆発的なエネルギーの渦が生まれる。

 グラキエスの放つ冷気が、ギガント・キメラの動きを鈍らせ、その強靭な皮膚を凍てつかせていく。極低温にさらされた装甲は、分子レベルで結合をもろくし、砕け散る寸前のガラス細工のように軋んだ。

 そこへ、俺が全霊を込めた炎を叩き込む。

「今だ、カイ!」

 エイスケの声が、俺の本能の引き金を引く。

 俺は地面を蹴り、宙高く跳躍した。右腕にスターガードの全エネルギーを集中させる。スーツの限界を告げるアラートが視界の端で赤く点滅しているが、そんなものは無視だ。

「これで、終わりだッ!」

 俺の拳が、凍り付いた怪物の胸郭にめり込んだ。

 瞬間、急激な熱膨張が起こり、怪物の体が内側から破裂するような衝撃音が響き渡る。

 氷の破片と炎の残滓が混じり合い、オーロラのような美しい光景が戦場に広がった。

 断末魔の叫びと共に、巨大な悪夢が崩れ落ちていく。

 勝った。

 着地した俺は、余韻に浸る間もなく膝をついた。

 使いすぎた。

 力の解放による反動だけじゃない。戦闘の高揚感と、近くにいる運命の番のフェロモンに当てられて、体内の熱が制御不能になりかけている。

「レッド!」

 駆け寄ろうとするブルーたちの足元に、再び氷の壁が立ちはだかった。

 グラキエスだ。

 彼は俺の横に立ち、冷ややかな視線をスターガードのメンバーに向けていた。

「勝負はついた。だが、この獲物は渡さない」

 彼は倒れ伏す俺を軽々と抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。

「おい、何を……」

 抗議しようとしたが、声が出ない。熱い吐息だけが漏れる。

「黙っていろ。お前の体の状態、分かっているのか」

 耳元でささやかれた言葉に、俺は体を強張らせた。

 限界だ。目の前がちかちかして、甘い香りが自分の鼻をも刺激し始めている。

「レッドを返せ!」

「返す? こいつは最初から俺のものだ」

 グラキエスは不敵に笑うと、氷の霧を巻き起こし、俺を抱いたままその中へと消えた。

 仲間たちの呼ぶ声が遠ざかり、意識が闇へと溶けていく中、俺はただエイスケの胸の冷たさに安らぎを感じていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

氷の騎士と浄化のオメガ~「出来損ない」と追放された僕ですが、最強の騎士団長様に拾われて、運命の番としてとろとろに溺愛されています~

水凪しおん
BL
「お前のような出来損ないは、我が家の恥だ!」 公爵家の不義の子として生まれ、フェロモンも弱く「出来損ないのオメガ」と虐げられてきたユキ。 18歳の誕生日に濡れ衣を着せられ、真冬の夜、着の身着のままで実家を追放されてしまう。 行き倒れかけたユキを救ったのは、隣国の英雄であり、冷徹無比と恐れられる『氷の騎士団長』レオンハルトだった。 「行く当てがないなら、俺のところへ来い。お前を保護する」 最強の騎士様に拾われたユキだったが、彼を待っていたのは冷遇……ではなく、とろとろに甘やかされる溺愛生活!? しかも、ただの「出来損ない」だと思っていたユキには、国を救い、レオンハルトの「呪い」を解く『聖なる浄化の力』が秘められていて……? 【不器用で一途な最強騎士団長(α) × 健気で料理上手な追放令息(Ω)】 どん底から始まる、運命の救済シンデレラ・オメガバース。 もふもふ聖獣も一緒です!

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

公爵令息は悪女に誑かされた王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

偽りの罪で追放された俺の【緑の手】は伝説級の力だった。不毛の地で運命の番に溺愛され、世界一の穀倉地帯を作って幸せになります

水凪しおん
BL
「君はもう、一人じゃない」 偽りの罪で全てを奪われ、国で最も不毛な土地へ追放された美貌の公爵令息、エリアス。彼が持つ【緑の手】の力は「地味で役立たない」と嘲笑され、その心は凍てついていた。 追放の地で彼を待っていたのは、熊のような大男の領主カイ。無骨で飾らない、けれど太陽のように温かいアルファだった。 カイの深い愛に触れ、エリアスは自らの能力が持つ、伝説級の奇跡の力に目覚めていく。痩せた大地は豊かな緑に覆われ、絶望は希望へと変わる。これは、運命の番と出会い、本当の居場所と幸福を見つけるまでの、心の再生の物語。 王都が犯した過ちの代償を払う時、二人が選ぶ未来とは――。 ざまぁあり、溺愛あり、美味しい作物たっぷりの異世界スローライフ・ボーイズラブ、ここに開幕。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

処理中です...