冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~

水凪しおん

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第11話「雪解けの森と、二度目のプロポーズ」

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 長い冬が終わりを告げ、ノースガルドにも遅い春がやってきた。
 雪解け水が小川となって流れ、あちこちで若草が芽吹いている。空気は柔らかく、日差しは心地よい暖かさを運んでくる。
 そんな穏やかな午後、私はグリーグ様に誘われて、ピクニックに出かけた。
 場所は、以前二人で見つけた、雪見草が群生していた森の奥の広場だ。
 バスケットには私が作ったサンドイッチと果物のジュース。
 敷物を広げ、二人で並んで座ると、小鳥のさえずりが聞こえてきた。

「……平和だな」

 グリーグ様が、手足を伸ばして目を細めた。
 普段の軍服ではなく、ラフなシャツ姿の彼は、どこか若々しく見える。

「はい。嘘みたいに静かです」

 私は彼にサンドイッチを手渡した。
 彼はそれを美味しそうに頬張ると、不意に真面目な顔をして私を見た。

「ジュリアン、話がある」

 その声のトーンに、私はドキリとした。
 いつもの事務的なものでも、日常会話のものでもない。もっと深く、重い響き。
 彼は懐から、小さな箱を取り出した。
 装飾のない、素朴な木箱だ。彼がスノーバームのために作った箱に似ているが、もっと丁寧に磨き上げられている。

「……これは?」
「開けてみてくれ」

 促されて箱を開けると、中には指輪が入っていた。
 宝石店で売っているような煌びやかなものではない。銀色の金属を加工し、中心に小さな、しかし深く澄んだ青い石が埋め込まれている。

「これは、この近くの鉱山で採れた『氷晶石』だ。雪のように溶けず、永遠に変わらないと言われている」

 彼は照れくさそうに説明した。

「台座の加工は……俺がやった。少し不格好だが」
「グリーグ様が……?」

 驚いて指輪を見つめる。
 確かに、プロの職人のような繊細さはないかもしれない。でも、一つ一つの曲線に、彼がどれだけ時間をかけ、どれだけ想いを込めて削ったかが伝わってくる。
 完璧ではない、けれど世界で一番温かい指輪だ。
 グリーグ様は、私の手を取り、その薬指に指輪を通した。
 サイズはぴったりだった。

「ジュリアン。俺は不器用で、言葉も足りない。獣人の血を引く、荒くれ者だ」

 彼は私の目を見て、一語一語を噛み締めるように言った。

「だが、お前を愛する気持ちだけは、誰にも負けない。お前が笑えば俺も嬉しいし、お前が泣けば胸が張り裂けそうになる。……お前なしの人生なんて、もう考えられないんだ」

 彼の黄金色の瞳が、潤んで揺れている。

「俺と、番になってくれないか。正式に、結婚してほしい」

 二度目のプロポーズ。
 一度目は王命による強制的なものだった。顔も知らない相手への、押し付けられた結婚。
 でも今は違う。
 私たちが互いに選び、互いに望んだ、心からの誓い。
 涙が溢れて止まらなかった。悲しいからではない。あまりにも幸せすぎて、胸がいっぱいになってしまったからだ。

「……はい。喜んで」

 私は泣き笑いの顔で頷いた。

「私を、グリーグ様のお嫁さんにしてください。……ううん、私がグリーグ様を幸せにします!」

 私の言葉に、彼は目を見開き、それから今まで見たこともないような、満面の笑みを浮かべた。

「ああ。……ありがとう、ジュリアン」

 彼は私を引き寄せ、強く、しかし壊れないように優しく抱きしめた。
 そして、私たちの唇が重なった。
 春の風が、二人を祝福するように吹き抜けていった。
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