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第20話「辺境の薬屋」
あれから、季節がいくつか巡った。
大陸の北端、国境近くの小さな村はずれに、一軒の新しい家が建っていた。
看板には「グリーンの薬屋」と控えめな文字。
「エリアル先生、薬草ありがとう! おかげでおばあちゃんの腰痛が治ったよ!」
村の子供が元気よく手を振って帰っていく。
エリアルはエプロン姿で手を振り返した。その顔色は以前よりもずっと良く、内側から発光するような幸福感に満ちていた。
「働きすぎじゃないか?」
奥の部屋から、ジークフリートが出てきた。
かつての白銀の鎧は納戸の奥に仕舞われ、今はきなりのシャツに作業ズボンというラフな格好だ。だが、その引き締まった肉体と鋭い眼光は健在で、時折村の自警団に稽古をつけては「鬼教官」と恐れられている。
「大丈夫ですよ。ジークこそ、畑仕事で疲れていませんか?」
エリアルが笑いかけると、ジークフリートは不器用にはにかんだ。
「貴方のためなら、どんな労働も苦ではない」
彼はエリアルの腰を抱き寄せ、自然な動作で唇を重ねた。
「ん……昼間から……」
「誰も見ていない」
ジークフリートは首筋の噛み跡に舌を這わせる。
エリアルのフェロモンは、番になったことで安定し、以前のような無差別な魅了効果は薄れていた。代わりに、ジークフリートに対してだけ、強烈に作用する甘い誘惑となっていた。
「愛している、エリアル」
「私もです、ジーク」
二人は幸せそうに微笑み合った。
王都での騒動は遠い過去の話。ここでは誰も彼らの正体を知らない。ただの仲睦まじい薬師とその夫として、静かな時を刻んでいる。
世界を変えることはできなかったかもしれない。
けれど、二人の世界は、ここにある。
窓の外には、二人が植えた薬草の花畑が、風に揺れて金色に輝いていた。
それは、どんな宝石よりも美しい、彼らの愛の結晶だった。
大陸の北端、国境近くの小さな村はずれに、一軒の新しい家が建っていた。
看板には「グリーンの薬屋」と控えめな文字。
「エリアル先生、薬草ありがとう! おかげでおばあちゃんの腰痛が治ったよ!」
村の子供が元気よく手を振って帰っていく。
エリアルはエプロン姿で手を振り返した。その顔色は以前よりもずっと良く、内側から発光するような幸福感に満ちていた。
「働きすぎじゃないか?」
奥の部屋から、ジークフリートが出てきた。
かつての白銀の鎧は納戸の奥に仕舞われ、今はきなりのシャツに作業ズボンというラフな格好だ。だが、その引き締まった肉体と鋭い眼光は健在で、時折村の自警団に稽古をつけては「鬼教官」と恐れられている。
「大丈夫ですよ。ジークこそ、畑仕事で疲れていませんか?」
エリアルが笑いかけると、ジークフリートは不器用にはにかんだ。
「貴方のためなら、どんな労働も苦ではない」
彼はエリアルの腰を抱き寄せ、自然な動作で唇を重ねた。
「ん……昼間から……」
「誰も見ていない」
ジークフリートは首筋の噛み跡に舌を這わせる。
エリアルのフェロモンは、番になったことで安定し、以前のような無差別な魅了効果は薄れていた。代わりに、ジークフリートに対してだけ、強烈に作用する甘い誘惑となっていた。
「愛している、エリアル」
「私もです、ジーク」
二人は幸せそうに微笑み合った。
王都での騒動は遠い過去の話。ここでは誰も彼らの正体を知らない。ただの仲睦まじい薬師とその夫として、静かな時を刻んでいる。
世界を変えることはできなかったかもしれない。
けれど、二人の世界は、ここにある。
窓の外には、二人が植えた薬草の花畑が、風に揺れて金色に輝いていた。
それは、どんな宝石よりも美しい、彼らの愛の結晶だった。
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