異世界で獣人王の専属トリマーになりました~もふもふライオン王は愛玩動物(俺)に溺愛中~

水凪しおん

文字の大きさ
12 / 16

第11話「魂を繋ぐ噛み痕」

しおりを挟む
 抱擁が深まるにつれ、晴人の体に再びあの熱が戻ってきた。
 医者から投与された抑制剤の効果が切れかかっているのだ。いや、レグルスという「番」となるべき相手を前にして、本能が薬の力をねじ伏せたのかもしれない。
「ん……っ」
 晴人の口から、甘い吐息が漏れた。
 レグルスの腕に力が入る。
「ハルト。お前の匂いが、また濃くなっている」
 レグルスの声は熱を帯び、耳元で囁かれるだけで腰が砕けそうになる。
「レグルス様、私……」
「俺も限界だ。これ以上、理性を保つ自信がない」
 レグルスは晴人をベッドへと押し倒した。瓦礫に埋もれていたベッドだが、その上のマットレスだけは無事だった。
 月明かりが、二人の姿を照らし出す。
 レグルスの瞳孔は細まり、完全に「オス」の目になっている。だが、そこにあるのは暴力的な衝動ではなく、深い愛情と執着だった。
「お前を俺のものにしたい。魂の髄まで、俺だけのものだと刻み込みたい」
「……はい。私も、あなたのものになりたいです」
 晴人の同意の言葉は、最後の引き金となった。
 レグルスの唇が晴人の唇を塞ぐ。
 それは捕食のようなキスだった。舌が絡み合い、唾液を交換し合う。
 晴人の服が次々と剥ぎ取られ、素肌が夜気に晒される。しかしすぐに、レグルスの熱い体温が覆いかぶさってくる。
「愛している、ハルト」
 獣人の王が、愛玩動物である人間に愛を囁く。それは世界の常識を覆す行為だが、今の二人には関係なかった。
 快感の波が押し寄せる中、レグルスの顔が晴人の首筋へと近づいた。
 オメガの急所。そこに「マーキング」を施すことで、二人は永遠の番(つがい)となる。
「痛いかもしれん。だが、絶対に離さん」
「いいですよ。全部、あなたにあげます」
 晴人はレグルスの頭を抱きしめ、首を晒した。
 ザクリ。
 鋭い犬歯が、柔らかな皮膚を貫く。
 鮮烈な痛みが走ったが、それは一瞬で、頭が真っ白になるほどの快感へと変わった。
 レグルスの魔力が、傷口から体内へと流れ込んでくる。熱く、重く、そして温かい光の奔流。
「あ、あああっ……!」
 晴人は背中を反らせ、声にならない叫びを上げた。
 魂が溶け合い、一つの形になっていく感覚。
 レグルスのフェロモンと晴人のフェロモンが完全に混じり合い、部屋中を至高の香りで満たしていった。
 それは、新しい王の伴侶が誕生した瞬間だった。
 レグルスは傷口を丁寧に舐め取り、満足げに喉を鳴らした。
 その瞳は、獲物を確保した満足感と、伴侶を得た喜びに満ちて輝いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

鬼神と恐れられる呪われた銀狼当主の元へ生贄として送られた僕、前世知識と癒やしの力で旦那様と郷を救ったら、めちゃくちゃ過保護に溺愛されています

水凪しおん
BL
東の山々に抱かれた獣人たちの国、彩峰の郷。最強と謳われる銀狼一族の若き当主・涯狼(ガイロウ)は、古き呪いにより発情の度に理性を失う宿命を背負い、「鬼神」と恐れられ孤独の中に生きていた。 一方、都で没落した家の息子・陽向(ヒナタ)は、借金の形として涯狼の元へ「花嫁」として差し出される。死を覚悟して郷を訪れた陽向を待っていたのは、噂とはかけ離れた、不器用で優しい一匹の狼だった。 前世の知識と、植物の力を引き出す不思議な才能を持つ陽向。彼が作る温かな料理と癒やしの香りは、涯狼の頑なな心を少しずつ溶かしていく。しかし、二人の穏やかな日々は、古き慣習に囚われた者たちの思惑によって引き裂かれようとしていた。 これは、孤独な狼と心優しき花嫁が、運命を乗り越え、愛の力で奇跡を起こす、温かくも切ない和風ファンタジー・ラブストーリー。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

銀狼様とのスローライフ

八百屋 成美
BL
激務に心身を病み、逃げるように田舎へ移り住んだ佐伯湊。 ある雨の日、彼は庭先で銀色に輝く巨大な狼を拾う。 それは、人間に追われ傷ついた神獣、リュカだった。 傷の手当てをきっかけに、湊の家に居座ることになったリュカ。 尊大で俺様な態度とは裏腹に、彼は湊が作ったご飯を美味しそうに食べ、寒い夜にはその温かい毛並みで湊を包み込んでくれる。 孤独だった湊の心は、リュカの無償の愛によって次第に満たされていく。 しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...