オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に

水凪しおん

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番外編2「カイの嫉妬」

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 社会改革のための活動が本格化するにつれ、ユキは多くの人々と接する機会が増えていった。彼の誠実な人柄と深い知識は多くの有力者たちを惹きつけ、改革への協力者を増やす大きな力となっていた。

 その日、ユキは改革に賛同してくれた隣国の有力貴族であるアルファの青年と、今後の協力体制について打ち合わせをしていた。相手は知的で物腰も柔らかく話は非常にスムーズに進んでいた。

「ユキ卿の魔法理論は実に素晴らしい。ぜひ我が国の魔法騎士団にもご教授いただきたい」

「光栄です。いつでも協力させていただきますよ」

 二人がにこやかに握手を交わし親しげに談笑している。その光景を会議室のドアの隙間から、カイが燃えるような瞳で睨みつけていたことなどユキは知る由もなかった。

(……なんだ、あの男は。ユキに気安く触るな……!)

 カイの心の中では猛烈な嫉妬の嵐が吹き荒れていた。ユキが自分以外のアルファと親しく話している。ただそれだけのことが我慢ならないほど気に食わない。理屈ではない。本能が自分の番を奪われるのではないかという危機感を訴えていた。

 会議が終わり、ユキがそのアルファの青年と廊下を歩いていると、突然後ろから強い力で腕を引かれた。

「え……カイ?」

 驚くユキの目の前には眉間に深い皺を寄せ、明らかに不機嫌なオーラを全身から発しているカイが立っていた。

「……会議はもう終わったはずだが?」

 カイはユキの隣に立つアルファの青年を、値踏みするように睨みつけながら言った。その瞳にはあからさまな敵意と牽制の色が浮かんでいる。

「ええ、カイ卿。ユキ卿とは非常に有意義な話をさせていただきました」

 相手の青年はカイの敵意に気づきながらも、大人の対応で穏やかに微笑んだ。しかしカイの機嫌はますます急降下していく。

 次の瞬間、カイはユキの腰をぐっと引き寄せ、自分の腕の中に閉じ込めるように強く抱きしめた。そして相手のアルファに向かって低い声で言い放つ。

「彼は私の番だ。あまり馴れ馴れしくしないでいただきたい」

 それは会議の席が並ぶ公的な場での、あまりにも堂々とした独占欲の表明だった。周囲にいた関係者たちはエーレンベルク家次期当主の子供っぽいとも言える嫉妬に、驚いて目を丸くしている。

「か、カイ! 何言ってるんだ、みんな見てる……!」

 ユキは顔を真っ赤にしてカイの腕の中で身じろぎした。しかしカイは聞く耳を持たず、なおも挑戦的な視線を相手の青年に送り続けている。

 そのあまりに分かりやすい嫉妬の態度に、ユキは呆れを通り越してなんだか笑いがこみ上げてきてしまった。

(この人、本当に……)

 普段は冷静で傲慢な王様のように振る舞っているくせに、自分のことになるとこんなにも冷静さを失ってしまう。そのギャップが愛おしくてたまらない。

 ユキは呆れたふりをしながらも、カイの胸にそっと自分の顔を寄せた。

「……分かったから。もう大丈夫だから」

 そう囁くと、ようやくカイの体から力が抜けていく。

 結局その日はカイの嫉妬が原因で少しだけ気まずい雰囲気になってしまった。しかし夜、二人きりになった寝室でカイに「あんなに嫉妬してくれるなんて、僕って本当に愛されてるんだな」とからかうと、彼はまた顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまうのだった。

 そんな甘くて少し騒がしい日常の一コマは、二人の絆が誰にも揺るがすことのできないほど深く強いものであることを示していた。
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