森で助けた記憶喪失の青年は、実は敵国の王子様だった!? 身分に引き裂かれた運命の番が、王宮の陰謀を乗り越え再会するまで

水凪しおん

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第13話「永遠の誓い」

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 結婚式は、ヴァレンティス王国の歴史上、最も温かく、美しいものとなった。
 豪華な装飾よりも、国中の花々で飾られた会場は、まるで森の中にいるかのような演出がなされていた。

 純白の礼服に身を包んだフィンは、緊張で指先が震えていた。
 しかし、祭壇の前で待つアシュレイの笑顔を見た瞬間、その震えは止まった。
 彼の隣に立つことへの恐怖はもうない。
 共に歩んでいく覚悟が、フィンを強くしていた。

「健やかなる時も、病める時も……」

 誓いの言葉を交わし、アシュレイがフィンの首筋に口づけを落とす。
 それは、正式な番の契約の証。
 甘い痺れと共に、二人の魂が完全に一つに溶け合う感覚。
 会場からは割れんばかりの拍手と歓声が上がった。

 式の後、二人はバルコニーに出て、集まった国民に手を振った。
 そこには、かつてフィンが治療した子供たちや、森の近くの村人たちの姿もあった。
 みんなが笑顔で、二人を祝福している。

「幸せか? フィン」

 アシュレイが耳元で囁く。

「はい。……夢みたいです」

「夢じゃない。これが、俺たちが掴み取った現実だ」

 アシュレイはフィンの腰を抱き寄せ、空を見上げた。
 澄み渡る青空。
 かつて嵐の中で出会い、一度は引き裂かれた二人の道が、今ここで完全に重なった。

「これからも、ずっとそばにいてくれ。俺の光」

「はい。あなたと共に、どこまでも」

 二人は見つめ合い、微笑んだ。
 その笑顔は、どんな宝石よりも輝いていた。
 王宮の庭園には、二人の愛を象徴するように、王家の紫苑と森の草花が、仲良く咲き乱れていた。

 長い冬が終わり、春が来た。
 アシュレイとフィンの物語は、ここで一つの結末を迎えるが、二人の愛の物語は、これからも永遠に続いていく。
 世界で一番幸せな王子と薬師の伝説として、いつまでも語り継がれていくだろう。
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