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第1話「追放と絶望」
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降りしきる冷たい雨が、容赦なくカイル・フォン・アルフレッドの体を打ち付けていた。
つい先ほどまで着ていたはずの豪華な礼服は見る影もなく、今はみすぼらしい麻の服が肌に張り付き、濡れた亜麻色の髪から絶えず冷たい雫が滴り落ちている。
「なぜ、こんなことに……」
絞り出した声は、雨音にかき消された。
***
ほんの数時間前まで、カイルは王城の大広間にいた。
公爵家の嫡男として、そして聖女リリアンナの婚約者として、誰もが羨む未来が約束されていたはずだった。
しかし、その全ては、リリアンナのたった一言で崩れ去った。
「カイル様が、その不吉な『呪物鑑定』の力で、わたくしを呪おうといたしました!」
彼女が涙ながらにそう叫んだ瞬間、広間の空気は凍り付いた。
『呪物鑑定』――それは、カイルが生まれつき持つユニークスキル。触れた物に込められた呪いの由来や効果を読み取る力だ。
しかし、呪いという負の側面に関わるその能力は、神聖さを重んじるこの国では忌むべき力として疎まれてきた。
もちろん、カイルが彼女を呪おうとしたなど、事実無根だ。むしろ、彼女が身に着けていた首飾りに微かな呪いの気配を感じ、それを伝えようとしただけだった。
「違う! 私はただ、忠告しようと……!」
必死の弁解は、誰の耳にも届かない。
父親である公爵ですら、冷たい視線を向けるだけだった。王も、かつての友人たちも、誰も彼もが聖女の言葉を信じ、カイルを悪魔のように蔑んだ。
「被告カイル・フォン・アルフレッドの公爵家からの追放、並びに国外、魔の森への永久追放を命ずる!」
王の冷徹な声が響き渡り、カイルの運命は決した。
爵位も、財産も、名誉も、そして愛するはずだった婚約者も、全てを一度に失った。
***
騎士たちに乱暴に引きずられ、最低限の食料と共に魔の森の入り口に捨て置かれる。
そこは、凶暴な魔物が跋扈し、一度足を踏み入れれば二度と生きては戻れないと恐れられる禁忌の場所。事実上の死刑宣告だった。
「リリアンナ……どうして……」
彼女の優しい笑顔は、すべて偽りだったというのか。共に過ごした日々の思い出が、今は毒のようにカイルの心を蝕んでいく。
雨に濡れた地面に膝をつき、カイルは天を仰いだ。灰色の空は、まるで彼の心を映しているかのようだ。
「結局、この力のせいか……」
拳を握りしめる。
幼い頃から、この『呪物鑑定』のせいで気味悪がられ、友人もできず、孤独だった。それでも、いつか誰かの役に立てる力だと信じてきた。
だが、その結果がこれだ。全てを奪われ、魔物がうごめく森に捨てられる。
「こんな力、なければよかった……!」
雨と涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、カイルは森の奥を睨んだ。
どうせ死ぬ運命なら、この忌まわしいスキルを呪いながら、全てに絶望しながら、惨めに朽ち果ててやる。
己の無力さを噛み締め、カイルは雨に打たれるまま、ただ深い絶望に身を沈めていた。
つい先ほどまで着ていたはずの豪華な礼服は見る影もなく、今はみすぼらしい麻の服が肌に張り付き、濡れた亜麻色の髪から絶えず冷たい雫が滴り落ちている。
「なぜ、こんなことに……」
絞り出した声は、雨音にかき消された。
***
ほんの数時間前まで、カイルは王城の大広間にいた。
公爵家の嫡男として、そして聖女リリアンナの婚約者として、誰もが羨む未来が約束されていたはずだった。
しかし、その全ては、リリアンナのたった一言で崩れ去った。
「カイル様が、その不吉な『呪物鑑定』の力で、わたくしを呪おうといたしました!」
彼女が涙ながらにそう叫んだ瞬間、広間の空気は凍り付いた。
『呪物鑑定』――それは、カイルが生まれつき持つユニークスキル。触れた物に込められた呪いの由来や効果を読み取る力だ。
しかし、呪いという負の側面に関わるその能力は、神聖さを重んじるこの国では忌むべき力として疎まれてきた。
もちろん、カイルが彼女を呪おうとしたなど、事実無根だ。むしろ、彼女が身に着けていた首飾りに微かな呪いの気配を感じ、それを伝えようとしただけだった。
「違う! 私はただ、忠告しようと……!」
必死の弁解は、誰の耳にも届かない。
父親である公爵ですら、冷たい視線を向けるだけだった。王も、かつての友人たちも、誰も彼もが聖女の言葉を信じ、カイルを悪魔のように蔑んだ。
「被告カイル・フォン・アルフレッドの公爵家からの追放、並びに国外、魔の森への永久追放を命ずる!」
王の冷徹な声が響き渡り、カイルの運命は決した。
爵位も、財産も、名誉も、そして愛するはずだった婚約者も、全てを一度に失った。
***
騎士たちに乱暴に引きずられ、最低限の食料と共に魔の森の入り口に捨て置かれる。
そこは、凶暴な魔物が跋扈し、一度足を踏み入れれば二度と生きては戻れないと恐れられる禁忌の場所。事実上の死刑宣告だった。
「リリアンナ……どうして……」
彼女の優しい笑顔は、すべて偽りだったというのか。共に過ごした日々の思い出が、今は毒のようにカイルの心を蝕んでいく。
雨に濡れた地面に膝をつき、カイルは天を仰いだ。灰色の空は、まるで彼の心を映しているかのようだ。
「結局、この力のせいか……」
拳を握りしめる。
幼い頃から、この『呪物鑑定』のせいで気味悪がられ、友人もできず、孤独だった。それでも、いつか誰かの役に立てる力だと信じてきた。
だが、その結果がこれだ。全てを奪われ、魔物がうごめく森に捨てられる。
「こんな力、なければよかった……!」
雨と涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、カイルは森の奥を睨んだ。
どうせ死ぬ運命なら、この忌まわしいスキルを呪いながら、全てに絶望しながら、惨めに朽ち果ててやる。
己の無力さを噛み締め、カイルは雨に打たれるまま、ただ深い絶望に身を沈めていた。
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