11 / 13
第10話「永劫の愛を誓う場所」
しおりを挟む
勇者たちが去った後、魔王城は大きな変革の時を迎えていた。
ゼノンは、俺との約束通り、人間界との和解に向けてすぐに行動を開始した。まずは、信頼できる側近を人間の王国へ使者として派遣し、正式な会談の場を設けることを提案したのだ。
最初は半信半疑だった人間たちも、先に帰還した勇者一行からの報告と、魔王側の誠実な態度に、少しずつ警戒を解いていった。
そして、数ヶ月後。
魔族と人間の歴史上、初めてとなる和平交渉のテーブルが、両国の国境地帯に設けられることになった。
その歴史的な瞬間に、俺はゼノンの隣に、彼の伴侶として立っていた。
最初は、「なぜ勇者であるお前が魔王の隣に?」と訝しんでいた人間側の代表者たちも、俺とゼノンの魂の繋がりを知るうちに、少しずつその関係を認めざるを得なくなっていった。
交渉は、決して簡単なものではなかった。
長年にわたる不信と憎悪の歴史は、そう簡単には消せない。何度も議論は紛糾し、決裂寸前になることもあった。
だが、その度に俺とゼノンは、諦めずに粘り強く対話を続けた。
俺は前世の知識を活かし、両者が納得できるような具体的な交易のメリットや、共同で行う魔獣討伐の計画などを提案した。ゼノンは、魔王としての絶対的な力とカリスマで、自国の強硬派を抑えつけ、人間側に譲歩を示した。
魔王と勇者が手を取り合って、平和のために尽力する姿は、頑なだった人々の心を、少しずつ溶かしていった。
そして、ついにその日は訪れた。
魔族と人間との間に、不可侵条約及び友好条約が締結されたのだ。
調印式が終わった瞬間、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。何百年と続いた争いの歴史が、今、終わりを告げたのだ。
その夜、魔王城では盛大な祝賀会が開かれた。
人間側の代表者たちも招かれ、昨日の敵が今日の友として、楽しげに酒を酌み交わしている。信じられないような、夢のような光景だった。
俺は、バルコニーからその様子を眺めながら、静かな感動に浸っていた。
「ユキ」
背後から、愛しい声がする。振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべたゼノンが立っていた。
「お前のおかげだ。お前がいなければ、こんな日は永遠に来なかっただろう」
「そんなことない。ゼノンが、頑張ったからだよ」
俺たちは、どちらからともなく寄り添い、眼下に広がる城下の灯りを見つめた。
「なあ、ユキ」
ゼノンが、改まった口調で俺の名を呼ぶ。
「私と、結婚してくれないか」
それは、あまりにも真っ直ぐなプロポーズだった。
俺の心臓が、大きく跳ねる。分かっていたことなのに、彼の口から改めてその言葉を聞くと、どうしようもなく嬉しくて、胸がいっぱいになる。
「……はい。喜んで」
俺が涙声でそう答えると、ゼノンは俺の体を優しく抱きしめた。
「愛している、ユキ。この世界の何よりも、私の命よりも」
「俺もだよ、ゼノン。愛してる」
俺たちは、どちらからともなく唇を重ねた。
それは、祝福の光に満ちた、どこまでも優しいキスだった。
もう、俺は自己肯定感の低い、ただの社畜じゃない。魔王を討つためだけの、悲しい宿命を背負った勇者でもない。
俺は、ユキ。
世界で一番、愛する人の隣で、彼と共に新しい世界を作っていく。
過労死から始まった俺のセカンドライフは、想像もしていなかった最高のハッピーエンドを迎えようとしていた。
ゼノンは、俺との約束通り、人間界との和解に向けてすぐに行動を開始した。まずは、信頼できる側近を人間の王国へ使者として派遣し、正式な会談の場を設けることを提案したのだ。
最初は半信半疑だった人間たちも、先に帰還した勇者一行からの報告と、魔王側の誠実な態度に、少しずつ警戒を解いていった。
そして、数ヶ月後。
魔族と人間の歴史上、初めてとなる和平交渉のテーブルが、両国の国境地帯に設けられることになった。
その歴史的な瞬間に、俺はゼノンの隣に、彼の伴侶として立っていた。
最初は、「なぜ勇者であるお前が魔王の隣に?」と訝しんでいた人間側の代表者たちも、俺とゼノンの魂の繋がりを知るうちに、少しずつその関係を認めざるを得なくなっていった。
交渉は、決して簡単なものではなかった。
長年にわたる不信と憎悪の歴史は、そう簡単には消せない。何度も議論は紛糾し、決裂寸前になることもあった。
だが、その度に俺とゼノンは、諦めずに粘り強く対話を続けた。
俺は前世の知識を活かし、両者が納得できるような具体的な交易のメリットや、共同で行う魔獣討伐の計画などを提案した。ゼノンは、魔王としての絶対的な力とカリスマで、自国の強硬派を抑えつけ、人間側に譲歩を示した。
魔王と勇者が手を取り合って、平和のために尽力する姿は、頑なだった人々の心を、少しずつ溶かしていった。
そして、ついにその日は訪れた。
魔族と人間との間に、不可侵条約及び友好条約が締結されたのだ。
調印式が終わった瞬間、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。何百年と続いた争いの歴史が、今、終わりを告げたのだ。
その夜、魔王城では盛大な祝賀会が開かれた。
人間側の代表者たちも招かれ、昨日の敵が今日の友として、楽しげに酒を酌み交わしている。信じられないような、夢のような光景だった。
俺は、バルコニーからその様子を眺めながら、静かな感動に浸っていた。
「ユキ」
背後から、愛しい声がする。振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべたゼノンが立っていた。
「お前のおかげだ。お前がいなければ、こんな日は永遠に来なかっただろう」
「そんなことない。ゼノンが、頑張ったからだよ」
俺たちは、どちらからともなく寄り添い、眼下に広がる城下の灯りを見つめた。
「なあ、ユキ」
ゼノンが、改まった口調で俺の名を呼ぶ。
「私と、結婚してくれないか」
それは、あまりにも真っ直ぐなプロポーズだった。
俺の心臓が、大きく跳ねる。分かっていたことなのに、彼の口から改めてその言葉を聞くと、どうしようもなく嬉しくて、胸がいっぱいになる。
「……はい。喜んで」
俺が涙声でそう答えると、ゼノンは俺の体を優しく抱きしめた。
「愛している、ユキ。この世界の何よりも、私の命よりも」
「俺もだよ、ゼノン。愛してる」
俺たちは、どちらからともなく唇を重ねた。
それは、祝福の光に満ちた、どこまでも優しいキスだった。
もう、俺は自己肯定感の低い、ただの社畜じゃない。魔王を討つためだけの、悲しい宿命を背負った勇者でもない。
俺は、ユキ。
世界で一番、愛する人の隣で、彼と共に新しい世界を作っていく。
過労死から始まった俺のセカンドライフは、想像もしていなかった最高のハッピーエンドを迎えようとしていた。
105
あなたにおすすめの小説
異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました
水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。
世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。
「見つけた、俺の運命」
敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。
冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。
食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。
その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。
敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。
世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
鬼神と恐れられる呪われた銀狼当主の元へ生贄として送られた僕、前世知識と癒やしの力で旦那様と郷を救ったら、めちゃくちゃ過保護に溺愛されています
水凪しおん
BL
東の山々に抱かれた獣人たちの国、彩峰の郷。最強と謳われる銀狼一族の若き当主・涯狼(ガイロウ)は、古き呪いにより発情の度に理性を失う宿命を背負い、「鬼神」と恐れられ孤独の中に生きていた。
一方、都で没落した家の息子・陽向(ヒナタ)は、借金の形として涯狼の元へ「花嫁」として差し出される。死を覚悟して郷を訪れた陽向を待っていたのは、噂とはかけ離れた、不器用で優しい一匹の狼だった。
前世の知識と、植物の力を引き出す不思議な才能を持つ陽向。彼が作る温かな料理と癒やしの香りは、涯狼の頑なな心を少しずつ溶かしていく。しかし、二人の穏やかな日々は、古き慣習に囚われた者たちの思惑によって引き裂かれようとしていた。
これは、孤独な狼と心優しき花嫁が、運命を乗り越え、愛の力で奇跡を起こす、温かくも切ない和風ファンタジー・ラブストーリー。
最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜
なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。
藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!?
「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」
……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。
スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。
それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。
チート×獣耳×ほの甘BL。
転生先、意外と住み心地いいかもしれない。
銀狼様とのスローライフ
八百屋 成美
BL
激務に心身を病み、逃げるように田舎へ移り住んだ佐伯湊。
ある雨の日、彼は庭先で銀色に輝く巨大な狼を拾う。
それは、人間に追われ傷ついた神獣、リュカだった。
傷の手当てをきっかけに、湊の家に居座ることになったリュカ。
尊大で俺様な態度とは裏腹に、彼は湊が作ったご飯を美味しそうに食べ、寒い夜にはその温かい毛並みで湊を包み込んでくれる。
孤独だった湊の心は、リュカの無償の愛によって次第に満たされていく。
しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる