記憶喪失のふりをしていた最強α騎士、敵国のΩ医師と番になり祖国の陰謀を暴く

水凪しおん

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エピローグ「鋼鉄と木漏れ日」

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 さらに十数年の時が流れ、アレンとセラは立派に成長し、それぞれの道を歩み始めていた。アルファとして強い正義感を持つアレンは、レオのいる黒獅子騎士団に入り、平和を守る騎士の道を。オメガとして深い慈愛を持つセラは、父と同じく医術を志し、王都の医療院で学んでいた。
 カインとリンは、変わらずシルヴァニアの国境の村で、穏やかな日々を送っている。カインはかつての「鋼鉄の騎士」の面影を残しつつも、今では村の自警団をまとめる、頼れるリーダーとして村人たちから慕われていた。リンも、白髪が混じり始めた髪を優しく結い、診療所を訪れる人々の心と体を癒し続ける、村の母親のような存在になっていた。
 ある晴れた日の午後。二人は、診療所の縁側で並んでお茶を飲んでいた。その姿は、まるで長年連れ添った老夫婦のように、安らぎと深い愛情に満ちている。
 カインの薬指には、リンが昔、お守りだと言って薬草を編んで作ってくれた、古びた指輪が。リンの指には、カインが初めての給金で贈った、小さな銀の指輪が、今も変わらず輝いていた。
「なあ、リン」
 カインが、遠くの山並みを眺めながら、ぽつりと呟いた。
「何ですか、カイン」
 リンは、湯呑を置き、穏やかに夫を見つめる。
「君に救われたあの日から、俺の本当の人生は始まったんだと、今でも時々思う。お前と、そして子供たちと過ごしてきたこの毎日が、俺にとっては何物にも代えがたい、最高の宝物だ」
 強い日差しがリンの顔に当たるのを遮るように、カインがそっと大きな手を彼女の頭上にかざす。その手は、かつて多くの命を奪った重い剣を握っていた手とは思えないほど、今はただ、愛する人を守るためにだけある、優しく温かい手だった。
「私もですよ、カイン。あなたと出会えて、私は世界で一番幸せです」
 リンは、その手に自分の手を重ね、幸せを噛みしめるように目を閉じた。
「鋼鉄の騎士」と呼ばれた男は今、愛する家族を照らす木漏れ日のような、深く、そして揺るぎない愛を手に入れていた。
 物語は、ここで一旦の幕を閉じる。しかし、これからも続いていく二人の幸せな未来を、縁側にそよぐ優しい風が、静かに予感させていた。
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