ブラック企業で過労死した俺、チートスキル『神の農具』で辺境開拓していたら、追放された無愛想な元騎士団長の胃袋を掴み溺愛されることに

水凪しおん

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エピローグ「君と育む、永遠の楽園」

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 僕がミナト辺境伯になってから五年という月日が流れた。
 かつては荒れ地と寂れた村しかなかったこの土地は今や『アステル王国の穀倉』と呼ばれるほど緑豊かで活気に満ちた場所へと生まれ変わっていた。
 僕が品種改良した作物は国内だけでなく隣国にまで輸出されるようになり、この領地にもたらされる富は王都に匹敵するほどになった。
 でも僕の生活は五年前とほとんど変わらない。
 朝はカイと一緒に起きて朝食を食べる。
 昼間は執務室で領地の運営について話し合ったり温室で新しい作物の研究をしたり。
 そして夜は二人で暖炉の前で寄り添いながら一日の出来事を話す。
 僕たちの館の庭にはあの七色の花『ニジイロソウ』が咲き誇り訪れる人々の目を楽しませている。
 この花は今では僕たちの領地の象徴となっていた。

「ミナト」

 温室で新しい品種の果物の糖度を調べていると後ろからカイに優しく抱きしめられた。
 彼の胸に背中を預けると心地よい安心感に包まれる。

「どうしたの、カイさん」

「いや…お前がまた何か面白いことをしていると思ってな」

 彼の顎が僕の肩にこつんと乗せられる。
 吐息が耳にかかって少しくすぐったい。

「ふふ、これはね、リンゴと桃を掛け合わせた新しい果物なんだ。名前はまだ決めてないんだけどすごく甘くてジューシーにできそうだよ」

「お前は、本当にすごいな」

 カイは心から感心したように言うと僕の首筋にちゅっと優しいキスを落とした。
 もうすっかり慣れてしまったはずなのにやっぱり心臓が少しだけ速くなる。

「カイさんこそすごいよ。この前も見事な手際で洪水を防いでくれたって村の人たちがすごく感謝してた」

 カイが築いた治水システムは完璧でここ数年僕たちの領地では大きな水害は一度も起きていない。
 僕が大地を豊かにしカイが民の暮らしを守る。
 僕たちは二人で一つだった。

「カイさん」

「ん?」

「僕、ここに来られて本当によかった」

 僕はカイの腕の中でくるりと振り返り彼の胸に顔をうずめた。

「過労で死んだ時は自分の人生最悪だって思ったけど…でもあの終わりがあったからカイさんに出会えた。だから今ならあの時の自分にもありがとうって言える気がする」

「ミナト…」

 カイは僕の髪を優しく梳くように撫でた。

「俺もだ。お前と出会う前の俺は死んだも同然だった。お前が俺に生きる意味を教えてくれた。お前が俺の世界に色を与えてくれたんだ」

 顔を上げるとカイの深い色の瞳がまっすぐに僕を見つめていた。
 その瞳の中に僕の姿がはっきりと映っている。
 僕たちはどちらからともなくゆっくりと顔を近づけ唇を重ねた。
 それはもう数えきれないほど交わしてきた甘くて優しいキス。
 お互いの愛情を確かめ合う大切な儀式。
 唇が離れた後カイは僕を強く抱きしめて言った。

「愛してる、ミナト。この先も、永遠に」

「僕もだよ、カイ。僕も、愛してる」

 僕たちの周りでは温室の作物たちが祝福するようにキラキラと輝いている。
 窓の外では老いて少し白髪の混じったクロが気持ちよさそうに昼寝をしていた。
 僕たちがこの辺境の地で一から築き上げた小さな楽園。
 これからもたくさんの愛とたくさんの美味しい恵みをこの場所で君と一緒に育んでいこう。
 僕たちの幸せなスローライフはこれからもずっと永遠に続いていく。
 太陽の光が降り注ぐこの豊かな大地で僕のたった一人の愛する人と共に。
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