宇宙と地球と僕たち

ベル

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宇宙と地球と僕たち

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「宇宙って広いと思う?」


友だちが尋ねました


「当たり前じゃないか!」


少年は目を見開いて言いました


「地球よりも?」


「当たり前だよ!」


「今いるこの場所よりも?」


「当たり前だよ!」


少年は一体何を言っているんだと
不思議そうな顔で友だちを見ます


「あの、木よりも?」


目の前にあった自分たちの何倍もある
大きな木を指して友だちは尋ねました


「だから、当たり前だよ。この木よりも地球は大きいし、地球よりも宇宙は広いんだ!」


変な事を聞かないでくれとでも言うように
少年は眉間にしわを寄せました


友だちは言いました


「どうしてそう思うの?」


「どうしてって…そんなの当たり前じゃないか」


「それを見たことがあるの?」


「うん、あるよ。テレビでこの前見た!」


「そっか」


友だちは座っていたベンチから立ち上がって、少年を見つめました


「そしたら、聞いてもいいかい?」


「さっきから一体何を言いたいの?」


「どうして君は、僕の悩み事が小さいくて、君の悩み事の方が大きいってわかるの?」


少年はハッとしたように友だちを見ました


「君にとっては小さいことでも、僕にとっては大きいんだ。僕にとってこれは当たり前のことさ」


少年は気まずい表情で下を向きました


「でも、そうだな」


友だちは少年の前に立って、手を差し出しました


「よく考えたら、宇宙からしたら僕たちなんてちっぽけなものだね。だから…」


少年は差し出された手に戸惑いましたが
友だちは悩んでいるその手を取り言いました


「僕も君も、同じ大きさの悩みってことで、一緒に解決していこう」


「怒らないのかい?」


「うん。君が分かってくれたみたいだからもういいんだ」


「…ごめん」


少年と友だちはお互いに手を握り
走り出しました



*****


宇宙は少年たちを見て
微笑んでいました


なんて小さくて
愛しい存在なのだろうか、と




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