可愛い兄の堕とし方

東雲

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2.愛と欲

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「……ん…?」

ふっと浮上した意識。ぼやける視界の中でレオは瞬きを繰り返した。

(…?…ここ、…は…?)

ぼんやりとした意識と視界に映るのは見慣れぬ天井。どこだろうと身動きを取ろうとして、自身の体の自由を奪われていることに気づいた。

「…は?え、は…なにっ…!?」

体の違和感に意識がパチリと覚醒する。
横たわったベッドの上、両腕を頭上で拘束されていることにも驚くが、それだけではない。
服を身につけていないのだ。下着すら脱がされ、完全に丸裸にされた状態で体の自由を奪われているということに驚愕と動揺、恐怖が同時に襲う。
サッと見回した室内は貴族向けだと分かる高級宿の一室ように見えたが、なぜそんな所にいるのかもまったく分からなかった。

「なに…なんで…!?どういう…っ」

そこではたと意識を失う前の出来事を思い出す。

(そうだ…アデル…アデル、に…)

突如現れた弟、数年ぶりの再会、突然の抱擁と、それから───…

「…ッ!!」

意識を失う間際の口づけを思い出し、顔に一気に熱が集まった。ただでさえ弟に唇を奪われるというショックな出来事だと言うのに、あの場にいた全ての人にその場面を見られていたのかと思うと、羞恥で死んでしまいそうだった。加えて、アデルが言い放った言葉だ。

(あれでは、まるで…)

愛の告白のようだった。ただ、愛と呼ぶにはどこか仄暗く、言う相手を間違えている。
一体どういうつもりで…そんなことを考えていると、ガチャリと部屋のドアが開く音がした。
その音に体がビクリと跳ね、反射的に音のした方へと視線だけ動かせば、そこにはアデルが立っていた。

「ア…デル…」

緊張気味に名前を呼べば、こちらに気づいたアデルがにこやかに微笑んだ。

「ああ、兄上…!良かった、なかなか起きられないので心配していたんです」

軽装に身を包んだアデルが足早に近づいてくる。そうしてレオが横たわっている寝台まで近寄ると、そのすぐ傍らに腰を下ろした。
アデルの体重で僅かに沈んだマットレスの動きと、ほんの少し動かせば触れられるような近さに置かれた手。全裸で拘束されている状態の兄に対してなんの反応もせず、ただにこやかに笑う弟に心臓が嫌な鼓動を鳴らした。

「ア、アデル…」
「申し訳ありません。兄上は薬への耐性が無いと思ったので1番効き目の弱いものを選んだつもりだったのですが…それでも効き過ぎてしまいましたね。お加減はいかがですか?具合が悪かったりしませんか?」
「ヒッ…!」

言葉と共にアデルの手が頬に触れ、過剰なまでに体が反応してしまい、小さな悲鳴が漏れた。
一瞬キョトリとした表情になったアデルだが、すぐにクスクスという笑いが聞こえてきた。

「どうしました?大丈夫ですよ、怖いことも、痛いこともしませんからね」

そのままスルスルと頬を撫でられる感覚に肌がゾワリと粟立つ。
体の向きを変えたアデルに覆い被さるように顔を覗き込まれ、咄嗟に顔を背けた。

「やめっ…!ア、アデル…!待って!話し…っ、話しを…!」
「ああ、そうでしたね。なにからお話ししましょうか?」

至近距離で微笑んだまま、頬を撫でる手を止めないアデルが恐ろしい。

(なに…?なんで…ど、どうしてこんな…)

カタカタと体が震えるのを止められない。成長したとは言え、見慣れたはずの弟が知らない男に見えて、その得体の知れなさに恐怖が募った。

「…こ、ここは…どこだ?なんで…、私は、は、裸で…」
「うん?ああ、ごめんなさい。寒かったですか?」
「寒い、とかじゃなくて…」
「ここは兄上がいた街の隣町ですよ。馬車で丸1日ほど走ったところですね」
「丸1日…!?ま、待ってくれ!なんでそんな所に…!?」
「なぜって…屋敷に向かってますから」
「は…な…っ、か、帰るだなんて私は言ってないだろう!?なんでそんな…っ」
「…ああ、兄上…どうしてそんな酷いことを仰るんです?」
「ひっ…」

覆い被さっていたアデルの体が、のし掛かるように密着してきて、至近距離で囁かれる言葉に、それ以上なにも言えなくなってしまう。

「や…!」
「兄上は私が不幸でもいいのですか?愛しい兄と離れ離れで辛い思いをしている弟を見捨てるのですか?」
「そ、そんな、こと、言ってな…」
「ならばずっと側にいて下さるでしょう?安心して下さい。私の幸せのために、兄上のことも目一杯幸せにして差し上げますから…ね?」
「う…っ、」

耳元で囁かれる低い声。吐息が耳を擽り、腰にゾクリとした疼きが走る。首を振って逃れようとするが、拘束され体の自由を奪われた状態では無意味だった。

(ちがうちがうちがう…っ!!)

アデルの言動にも行動にも、明らかな性を含んだ欲が混じっている。それを認めたくなくて頭の中で必死に否定の言葉を叫んだ。

「ね?兄上。一緒に屋敷へ帰りましょうね」
「む、むり…っ、むりだ…!」
「…無理?なぜ?」
「あ…だ、だって……、ち、父が…!父が許すはずが、ないだろう?廃嫡されて、家を追い出された私が帰れる場所では───」
「ああ、そんなこと…確かに廃嫡はされてしまいましたが、貴族籍はそのままですよ」
「…え?」
「兄上は病を患って領地で療養中ということになっています。ですから籍は伯爵家に残したままです」
「……まさか…そんなはずないだろう…?」

あの父が、自分を息子とすら思ってなかった男がそんな甘い処置を自分に施すとはとても思えない。
そう思った次の瞬間だった。



「それと、父は死にました」
「……………え?」

思ってもいなかった言葉に目を見開く。

「1年ほど前に馬車の事故でそのまま…母も同乗していたのですが、命こそ助かったものの大怪我を負ってしまいまして、今は領地の端で療養中です。お伝えするのが遅くなってしまい申し訳ありません。それほど重要なことでもないかと思い、忘れていました。父が亡くなったことで、爵位は私が継ぎました。ですから、今のコートニー家の当主は私です。当主である私が兄上を家にお迎えするのですから、なんの問題もありませんよ。…元々は兄上が継ぐはずだったものを、奪うような真似をして申し訳ありません。…でも、どうしても貴方を連れ帰るための権力が欲しかったんです。兄上がなんの気兼ねもなく憂いもなく、共に過ごせるように…そのための力が欲しかった。父もいません。籍も伯爵家のままです。兄上が心配されるようなことは何もありませんよ。…断る理由がないですよね?もう兄上を悲しませる者はおりません。苦しませる者もおりません。私とジュリィと、兄の帰りを心待ちにしている屋敷の者達のためにも、一緒に帰りましょう?兄上」

「───これからは誰にも邪魔されず、家族3人で幸せに暮らしましょう?」

すぐ目の前、吐息を感じるほどの距離で、口を挟む余裕すらなく紡がれた言葉。
澄み切ったベビーブルーの瞳から視線を逸らすこともできず、言葉も発せないまま、沈黙が流れた。


アデルの言葉を理解できない。


否、言葉の意味は分かる。ただ、そこに含まれた感情も、求められていることも、脳が理解することを拒絶していた。

(父、が…死んだ……?)

そこに悲しみは無い。今更、父への情など無い。
ただあるのは動揺と、驚愕だけ。
考えたくは無いのに、ある考えが…小さな『もしかしたら』という気持ちがジワジワと脳内を侵食していく。

父の死をなんとも思っていないようなアデル。
なんの感情も無く『もう終わったこと』と言うように、その存在すら忘れていたのではと疑いたくなるほどの関心の無さ。
それだけならまだ、まだこんなに動揺しなかっただろう。問題はそこでは無いのだ。

父の死と、アデルが求めたものと、その末に手に入れようとしたもの───それが嫌な点と線で繋がってしまう。

まるでそれを、アデルが求める『幸せ』のために、父の死が必然的に必要であったような───…

(…っ!違う…!まさか、アデルが…、そんなことするはずがない…!)

貴族社会では珍しくない話だ。
ただそんな権力による暴力を、誰かの命を奪うようなことを、弟が行っただなんて思いたくなかった。
そんなことを考えてしまうことすら間違っている…そう思っているのに、どうしてかその考えを振り払えない。

(違う、違う…!!アデルはそんなこと…っ)

そう思う。思いたい。なのに、恐ろしい考えに鼓動は速くなる。
同時に、アデルの求めているものが、間違いであってほしいと思わずにはいられなかった。

(まってくれ…!違う…違うっ、私じゃな───)

「兄上」
「…っ!」

沈黙を破ったアデルの声にビクンと体が跳ねた。

「そんなに怖がらないで下さい。言ったでしょう?怖いことも、痛いこともしませんよ」
「は…っ、は…、ア…」
「安心なさって下さい。…乱暴なことはしませんから───気持ち良いことだけ、しましょうね」
「~~~っ!!」

艶やかに笑うアデルに、声にならない悲鳴が喉から漏れる。

「ねぇ、兄上…」
「やっ…、嫌だ!!嫌だ!!離し…離してくれ!!」

全身裸で拘束された両手。
体を密着させたまま、至近距離で微笑むアデル。
こちらを見つめる淡い青。
その涼やかな瞳の中に映るのは明らかな恋慕と───煮え滾るような劣情。
それを、自分に、実の兄に対して向けているという異常さ。
認めたくない現実と自身が置かれた現状…その先で何が起こるかなんて、嫌でも分かってしまう。

「嫌だ!!嫌…っ!!アデル…!!頼むから…っ」
「兄上…ああ、やっと気づいて下さったのですね」

嬉しそうに笑うアデルの右手が、スルリと肌を撫でた。胸の上を撫で回される感覚にゾワリと鳥肌が立った。

「ひっ…!やめ、やめてくれ!!アデル!!お願いだから、は、話しを…っ!」
「ごめんなさい兄上。もう無理です」
「ひゃぐ…っ」

チュッ、チュッとリップ音を立てながら頬や口元にアデルの唇が落ちる。そのまま首筋を舐められ、情けない声が漏れた。

「ああ…可愛い兄上…!…もっともっと、気持ち良くして差し上げますからね」
「まって…ほんとに…っ、やめてくれ…!」
「兄上…ふふ、泣いてるお顔もとても可愛らしいですよ」

そう言われて、初めて自身が泣いていることに気づく。
恐ろしいのか悲しいのか、もう分からない。
ただ、目の前の愛しいはずの弟から逃げたくて堪らなかった。

「アデル…ッ、お願いだから…!」

声も体も震える。その間もアデルの手は肌を撫で、スラリとした長い指が胸の突起をクニクニと刺激した。

「ひっ…!嫌…っ!!嫌だ!!アデル!!」

体を捩って逃れようとするが、大した抵抗にもならず、むしろその反応はアデルを悦ばせるだけだった。

「ああ…ココがエッチな場所だとちゃんと知ってるんですね。…ふ、そうですよね。兄上も子どもじゃないんですから、知ってて当然ですよね」

恍惚とした表情で、乳首を弄る指を止めないアデル。

「可愛い兄上…ずっとずっと、子どもの頃からずっと、お慕いしておりました」

与えられる刺激に反応し、固くなった乳首を指先で転がしながら告げられる告白に頭が追いつかない。

「や、やだ…!!触らないでくれ…!!」


「───愛しています」


「…っ!」

それは、聞いてはいけない言葉だった。

「愛しています、兄上。ずっとずっと、兄上だけを想ってきました」
「兄上だけです。兄上だけを愛しています」
「ごめんなさい。我慢しようとしたんです。兄に抱く感情ではないと、分かっていたんです。諦めようとしました。忘れようと…ただの弟として、それ以上は求めないように自分の気持ちを抑えようとしました」
「でも無理だったんです。ごめんなさい。ごめんなさい、兄上。どうしても諦められなかったんです。どうしても貴方が欲しい」
「可愛い兄上。貴方が、貴方だけが欲しいんです。ずっとお側にいて下さい。ずっと、もう二度と、絶対に離しません。共に幸せに暮らしましょう。必ず幸せにします」
「愛しています。愛しい兄上」

涙も止まってしまった。
美しく微笑むアデルの言い放った言葉に、感情も、理解も追いつかない。
ただ、無意識の内に首だけはフルフルと横に振っていた。

「ぁ…アデ…、むり…、ダメ…だ…っ」

あってはならない事、理解が出来ない事───そんな生易しい表現では足りない。
一方的に与えられる熱量の多さと、熱に溶かされ歪んだ愛情に、現実を受け止めきれない。

どうして自分なのだろう?
特別なことなど何もしていない。
ただの兄弟として、兄として弟は大事に思っていた。
十も年の離れた可愛い弟達。
そこに家族の情こそあれど、異性に向けるような、ましてや肉欲を含むような情など無かったはずだ。
それなのに、アデルは子どもの頃からと言った。
なぜ?どうして?いつから…いつから実の兄に劣情を抱いていた?

「やめてくれ…!私には、応えられない…っ!」

弟は弟としてしか見れない。どんなに美しい顔立ちでも、長い間離れていたとしても…例え、今目の前にいるアデルが知らない男に見えたとしても───弟なのだ。

「…そうですよね。ええ、分かってます」
「…っ、」

アッサリと肯定されたことに身構えていた体からふっと力が抜ける。…が、気を抜いたのも一瞬だった。

「でもごめんなさい。もう我慢できないんです。兄上の全部…欲しくて欲しくて堪らない」
「ひっ!?」

そう言いながら、アデルの手が、指が胸から脇腹を滑るように撫でる。

「ああ…兄上…ずっと兄上に触れたかった!服の上からでもいやらしい体付きだと分かっていましたが、それ以上にずっとずっと、綺麗でいやらしい…」
「エッチで綺麗な体ですね兄上。ああ、本当に…!何度も何度も、想像の中で犯した兄上より何百倍も素敵です…!」
「ごめんなさい、兄上。これからいっぱい犯してしまいますが、ちゃんと気持ち良くして差し上げますから、安心なさって下さい」
「乳首もおちんぽもおまんこも、足の指の先まで全身愛でて差し上げます」
「兄上の全部、乳首もおまんこも私専用の雌になるまで、目一杯愛してあげますからね。立派なおちんぽも、女の子ちんぽになるまで可愛がってあげます」
「私のおちんぽで、兄上の処女まんこぐちゃぐちゃのトロトロにしますからね。おまんこがザーメン漬けのいやらしい雌になるまで…私の愛が伝わるまで、いっぱいセックスしましょうね?」

熱に浮かされたようなアデルの言葉に血の気が引いていく。耳慣れない直接的な卑猥な言葉も、言われている内容にも羞恥と恐怖を煽られる。
イヤイヤと首を振るが、欲情したアデルの表情が変わることはなかった。

「嫌…嫌だ…っ!!嫌だ…!!」
「ふふ、可愛い。…愛していますよ、兄上」

耳元で囁かれる、欲にまみれた男の声に涙が溢れた。



「愛しています、兄上。どうかここまで、堕ちてきて下さい───愛しい貴方」
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