元精霊使いのささやかなミッション

RIO

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 目を開けると、白い天井が見えた。気分は悪くない。どうやら、私は無事だったようだ。

 視線を横にずらすと、そこにはエリックが座っていた。サイドテーブルに頬杖をついてぼんやりとした表情をしていたが、私と目が合うと急にその顔に驚きが広がる。

 ただ、彼の表情はすぐに、ふてくされたような怒っているようなものに変わった。

「…………大丈夫?」

 表情と声だけだと、そんな言葉が出てくるようには思えなかった。ただ、倒れていたことを考慮したのか、気を遣ってくれてはいるようだ。

「……はい、そうですね。問題なさそうです」

 私は、そう答えて体を起こした。一体どうなったのかある程度想像はつくけれど、聞いておかないといけないこともある。

 彼は『そう』とだけ返事をして、立ち上がった。

「どこに行くんですか?」

「君が起きたってことを、言いに行かないといけないんだよ。それより、後で全部説明してもらうからね。いろいろと」

「…………ええと、それはそうですよね。でも、エリックさんも大丈夫だったみたいで、よかったです」

「何が大丈夫なのか分からないけど。とりあえず生きててよかったね」

 彼の声はやっぱり怒っていたけれど、仕方のないことだとは思う。もし何か一つでも間違えていたら、死んでいてもおかしくなかったのだから。

「エリックさん」

「なに?」

 彼は私に背を向けて、歩き出していた。部屋の扉を開けたところで、彼が振り返る。

「あの、怒られても当然のことをしたとは思ってるんですけど、本当に」

 謝る前に、私の声は遮られてしまった。

「だから、全部説明してくれたらそれでいいよ。帰ってきたら説明するって、君が言ったんだろ?」

 エリックはそのまま部屋を出ていき、扉がぱたんと閉まる。彼の求めている説明は一体どこからどこまでなのだろうか、と思いながら私は諦めてベッドに横たわることにした。

 本当なら、私はここに戻ってきて彼に『いかに王都がよいところか』をアピールするつもりだったのだ。後は定期審査のときにちょっとした手助けをするとか、そのくらいの話で済んでいたのではないだろうか。

 
 とても簡単なお仕事だ。そうして私は彼を王都に送って、どこか適当な街で今度こそのんびり暮らす。エルドレッドも人手不足を解消できて、今後私が呼び出されることもない。

 ただ、それは、訳の分からないドラゴンが現れず、私がよく知る精霊がここにいなければの話だった。

 そういえば、ダインはどうしたのだろう。多分、大人しく他の精霊と一緒に返却されて倉庫で眠っているなんてことはないはずだ。


 私は、考えることを放棄した。

 次にダインが話しかけてきたとき、どうすれば関わり合いにならずに済むか思いつかなかったからだ。3ヶ月だけと割り切って、諦めるしかないのかもしれない。

 とりあえず、後で全部考えよう、と思って私は目を閉じた。
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