元精霊使いのささやかなミッション

RIO

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 レナルドの父親に聞いた話は、よく分からないものだった。彼によると、1ヶ月程前、私がここに来たというのだ。その際に、今回助手としてこの場所に来ることや、精霊の受け渡しについて話を聞いたのだという。

 精霊の受け渡し、というのは数日前ここに送られてきたダインのことだろう。

 当たり前のことだが、私には全く心当たりがない。1ヶ月前といえば、私はただの居酒屋の店員として過ごしている頃だ。彼の前に現れるわけはない。

 ただ、私がここに来たという話とは別に、レナルドの父が半年ほど前から王都の誰かと昇進についてやり取りしていたのは事実らしい。

 どこからかは分からないがエルドレッドがかかわっているのだ、とは思ったが、目的がさっぱり分からなかった。


 ただ、私がこの訳の分からない話にかかわっていると勘違いされたとしても、大きな問題はないだろう。この手の話はあまりにも一般的なことで、別に『今度そちらに行くのであなたの息子さんを優遇しますよ』と言ったからといって、何かの犯罪になるという性質のものではなかった。

 そもそも、社交辞令と本物の打診が判断できないからこそ、この手の話は成り立っていた。正確には、社交辞令ということで済ませておいた方が、お互いにとってプラスに働くからだ。

 わざわざ『関係者に融通を聞かせてもらわなければならないほど才能がない』と、大々的に発表する人間はいないだろう。

 レナルドの父親が『騙された』と訴えたところで特に何も起きることはない。せいぜい、『社交辞令を真に受けるとはどういうことですか』と周囲に笑われるくらいのことだ。

 私は、『社交辞令というものをご存知ですか』と答えておいた。レナルドの父が言葉に詰まったところを見ると、何か具体的な話をしていたわけでもないのだろう。

 おそらく、私に実害はない。ただ、まったく腑に落ちなかった。なんにせよ、近いうちにエルドレッドに会う機会はあるだろう。そのときに、どういうことなのか聞かなければならない。

 ただ、あまりここに長くいるのは得策ではないような気がした。
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