とりあえず愛を囁いて

天使の輪っか

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「ガトーショコラ、お好きなんですか?」
「何?悪いか?」

大方、女みてぇとか思ってんだろうな。遊び相手とこーいうとこ行くと、いつも意外と言われるし、、、

「いえ、可愛いなと思って♡」
あームカつく。ここが家ならコーヒーぶっかけてやるのに。

「そーいえば夢原さん! なんで僕はダメなんですか?」
「は?」

「だから~、なんで俺とは付き合えないのかな~って」
「お前の性格でよくOKされると思ったな」

「え~ひどい~」

「でも、夢原さん誰とも付き合わないですよね」
「なんで知ってる」

「ずっと見てたので♡」
コイツ、、、変態だ。

「で? なんで誰とも付き合わないんですか?」

それは、、、まだ誰にも言ったことないこと。
できれば秘密にしておきたいが、コイツは言わないと引き下がらないだろう。

「好きな人がいる。ただそれだけだ」
もちろん嘘ではない。ちゃんと好きな人はいる。その人と付き合うことはできないだけで。

「え~夢原さんモテるのに、付き合わないなんて見る目ないなぁ」

は? 今コイツなんて言った? 見る目がないだと?
ここがカフェじゃなかったらぶん殴ってるところだった。命拾いしたな、お前。

苛立っている俺に気がついたのかやってしまったという顔を浮かべるコイツ。

「すみません。余計なこと言っちゃいました?」

意外に謝ることはできるらしい。

「まぁ良い」
「じゃあ、好きな人って誰ですか?」

「なんでお前に言わなきゃいけねぇんだよ」
「知りたいからです。教えてくれなきゃ引き下がりませんよ」

言いたくない。言いたくはないが言わなければ面倒なことになるだろう。

少し悩んだ末、好きな人の名を告げることにした。

姫上木ひめじょうぎルイ」
「姫上木ルイってあの有名アニメの?」

そう、俺の好きな人はアニメのキャラクター。
主人公の女に片思いをしている負けヒロインならぬ負けヒーローである。

「なんだ、悪りぃかよ」
「いえ! 納得しました。夢原さんは優しいんですね」

「優しくはないだろ、色んな奴と遊んでんだぞ」
「優しいですよ。誰とも付き合わないってことは、その人を一番にできないと知っているからでしょう?」

「っ⁉︎」

意外な言葉に、思わず硬直してしまう。
てっきり夢を見るなとか、気持ち悪いとか、そんなことを言われるのだと思っていたから。

初めて自分を認められた気がして、嬉しくなってしまう。

コイツは変態でキモい男のはず、なのに。

「ちょっと待っててくださいね」
百合は席を立つと会計をしていた。

俺は言われた通りに待つ。

百合の言葉が、頭に響く。「夢原さんは優しいんですね」


俺が好きな人を打ち明けると、必ず言われた。

「画面の中の相手を好きになっても、付き合えないよ」

と。

それは分かっていたし、他の人と付き合おうともした。でも、ルイのことを嫌いになどなれなくて、相手を傷つけて、別れてしまった。

そんな自分が嫌いだった。何度も死のうとして、でも怖くて。

でも百合の言葉はそんな弱い自分を受け入れてくれたかのようで、心が温まるのを感じた。

「夢原さん、お待たせしました。ちょっと外、出ましょうか」

手を引かれて、素直についていく。


近くの路地裏で俺は抱きしめられていた。
「夢原さん。今までよく頑張りましたね」

頭も撫でられて、それで、、、俺は泣いていた。

「ぅ、ヒック、ひっ」

「夢原さん。やっぱり俺と付き合いましょう」
「え?」

どうして、そんなことを言うのだろうか。
だって、俺はコイツを一番にできない。

「僕は、貴方が好きなんです。貴方に愛してもらえるのなら、二番目でも構いません」

百合は続ける。

「俺が、俺だけが貴方を受け入れられますよ。
きっと他の人は貴方の好きな人を否定する。でも、僕は違います。」

「僕はルイさんを愛しておる貴方ごと、貴方を愛します。」

「どうしますか?夢原さん」

思わず、頷いていた。

初めて受け入れてくれたコイツとなら、、、



付き合ってやっても良いかな。




「夢原さん! 嬉しいです」

心底嬉しそうに微笑む百合。その顔はあまりにも幸せそうで心が痛む。
受け入れられたと言っても、一番にできないことには変わりないのだ。

「夢原さん。大丈夫です」
そんな俺に気がついたのか百合は俺の目をまっすぐ見つめ、話しかける。

「夢原さんが僕を好きじゃなくなったとしても、僕は貴方を好きでい続けますから」
「そう、か」

お前はほんとに

「『めんどくさい』でしょう?」

ニコッと満面の笑みを浮かべる百合。
その顔はどこか小悪魔じみていた。

ああ、コイツは俺をどこまで夢中にさせるのだろうか。





本当は分かっている。これは悪魔の契約であると。
俺はきっとコイツから離れられなくなる。


分かっていながらも、俺はその悪魔に口付けた。


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