3 / 6
Chapter3:Over Lord
しおりを挟む
ルスヴン卿は皇帝ナポレオン・ボナパルトを手に掛け、代わりにフランスの将軍としてロシアに挙兵した。
ナポレオンの代わりに将軍職についたルスヴン卿を脅威と見たロシアは、オーストリア、イギリスと同盟を組んだ。
しかし、たとえ三国連合軍であっても、挙兵したフランスに勝つことは出来ないと考えたロシアの老将クトゥーゾフは、フランス軍の進軍先の物資や食糧を焼き払い、フランスの疲弊を狙った。
クトゥーゾフは、兵站さえ封じてしまえば、慣れないモスクワの地で、フランス軍は豪雪の為にまともな進軍は出来ないと考えたのだが、その考えは打ち砕かれることとなる。
食糧を失い、吹雪に会い凍傷にもなっている筈のフランス軍兵士達は、一人残らずモスクワに到着した。
疲弊している筈のフランス軍を迎え撃つつもりだったロシア兵は、全く士気を失っていないフランス軍の異様さを恐れたが、当初の予定通りに、フランス軍がモスクワに進軍したのを見ると、市内各所に火を付けた。
街全体が業火に呑まれる代わりに、フランス軍も共に呑み込む。軍としての強さに勝てぬまでも、身を切る戦略である。
だが、全てを擲ち、フランスに抗おうとしたクトゥーゾフのその奇策さえ、ルスヴン卿の軍には何の意味も持たなかった。
月光と火に照らされ、燃えしきるモスクワ市内の中から、燃え死ぬ筈のフランス軍が這い出てきた為だ。
その身を業火に焼かれながら、フランス兵達は進軍した。
燃えるモスクワの地から、続々と現れる不死の一団。身体を燃やされても、月光を浴びながらその身体を再生させていく異形の進軍。
後に世界中を震え上がらせることになる不死の軍隊の初陣は、人々に恐れを抱かせるのに、これ以上ないものとなった。
モスクワを占拠したルスヴン卿は、ロシアと同盟を組んでいたオーストラリアとイギリスと和平交渉を結び、これ以上の進軍を行わないことを約束した。
自分たちが生き延びた混沌のフランス革命の余波もあり、各国で王政が滅び、人民の政府が建てられていく様を、ルスヴンは静観していた。
ドイツ、オーストリア、イギリスといったヨーロッパ諸国は、不死の軍隊を有するフランスに立ち入ることはタブーとしながらも、発展を続けた。
ルスヴンもまた、自身と不死の軍隊の存在が強大な抑止力として働くことを見越していたが、発展を続け技術を伸ばしてきたドイツは、1914年大量の新兵器を投入してフランスに侵攻する。
時代を経ても尚、愚かにも戦火を広げようとする他国の様子を見て、
「抑止力では生温い。我が友ナポレオンは他者を信じずに変容したが、圧倒的な権威と武力をもってして各国を蹂躙しようとしたことは間違いではなかった」
と、遂に世界各国への同時侵攻を開始した。
世界中に進軍する不死の軍隊は、その身を業火で焼かれようと、爆撃を受けようと、無数の弾丸に晒されようと、月の光を受ければ必ず復活し、世界中の国々の軍隊を蹂躙した。残っていた王族も、自分達で国を作ろうと奮闘していた人民の政府であっても関係なく、国の中枢にいる者達は皆処刑した。
ヨーロッパのみならず、アジア、アフリカ、アメリカ、全ての大陸に侵攻を続け、1945年、遂にルスヴンはこの地球上の全ての国を治める総王として名乗りを上げた。
「この世界は未来永劫、私が統べる。民はもう、愚かな王族や、国を混乱に陥れんとする為政者共に阿る必要はない。私が平和を作る。私が世界を永劫に平和と安寧の中、更なる発展を約束しよう」
不死の軍隊の進軍の際に、既に世界中に拡げられた通信技術にその声を載せて。
ルスヴンは名実共に世界の王になることを宣言したのだった。
ナポレオンの代わりに将軍職についたルスヴン卿を脅威と見たロシアは、オーストリア、イギリスと同盟を組んだ。
しかし、たとえ三国連合軍であっても、挙兵したフランスに勝つことは出来ないと考えたロシアの老将クトゥーゾフは、フランス軍の進軍先の物資や食糧を焼き払い、フランスの疲弊を狙った。
クトゥーゾフは、兵站さえ封じてしまえば、慣れないモスクワの地で、フランス軍は豪雪の為にまともな進軍は出来ないと考えたのだが、その考えは打ち砕かれることとなる。
食糧を失い、吹雪に会い凍傷にもなっている筈のフランス軍兵士達は、一人残らずモスクワに到着した。
疲弊している筈のフランス軍を迎え撃つつもりだったロシア兵は、全く士気を失っていないフランス軍の異様さを恐れたが、当初の予定通りに、フランス軍がモスクワに進軍したのを見ると、市内各所に火を付けた。
街全体が業火に呑まれる代わりに、フランス軍も共に呑み込む。軍としての強さに勝てぬまでも、身を切る戦略である。
だが、全てを擲ち、フランスに抗おうとしたクトゥーゾフのその奇策さえ、ルスヴン卿の軍には何の意味も持たなかった。
月光と火に照らされ、燃えしきるモスクワ市内の中から、燃え死ぬ筈のフランス軍が這い出てきた為だ。
その身を業火に焼かれながら、フランス兵達は進軍した。
燃えるモスクワの地から、続々と現れる不死の一団。身体を燃やされても、月光を浴びながらその身体を再生させていく異形の進軍。
後に世界中を震え上がらせることになる不死の軍隊の初陣は、人々に恐れを抱かせるのに、これ以上ないものとなった。
モスクワを占拠したルスヴン卿は、ロシアと同盟を組んでいたオーストラリアとイギリスと和平交渉を結び、これ以上の進軍を行わないことを約束した。
自分たちが生き延びた混沌のフランス革命の余波もあり、各国で王政が滅び、人民の政府が建てられていく様を、ルスヴンは静観していた。
ドイツ、オーストリア、イギリスといったヨーロッパ諸国は、不死の軍隊を有するフランスに立ち入ることはタブーとしながらも、発展を続けた。
ルスヴンもまた、自身と不死の軍隊の存在が強大な抑止力として働くことを見越していたが、発展を続け技術を伸ばしてきたドイツは、1914年大量の新兵器を投入してフランスに侵攻する。
時代を経ても尚、愚かにも戦火を広げようとする他国の様子を見て、
「抑止力では生温い。我が友ナポレオンは他者を信じずに変容したが、圧倒的な権威と武力をもってして各国を蹂躙しようとしたことは間違いではなかった」
と、遂に世界各国への同時侵攻を開始した。
世界中に進軍する不死の軍隊は、その身を業火で焼かれようと、爆撃を受けようと、無数の弾丸に晒されようと、月の光を受ければ必ず復活し、世界中の国々の軍隊を蹂躙した。残っていた王族も、自分達で国を作ろうと奮闘していた人民の政府であっても関係なく、国の中枢にいる者達は皆処刑した。
ヨーロッパのみならず、アジア、アフリカ、アメリカ、全ての大陸に侵攻を続け、1945年、遂にルスヴンはこの地球上の全ての国を治める総王として名乗りを上げた。
「この世界は未来永劫、私が統べる。民はもう、愚かな王族や、国を混乱に陥れんとする為政者共に阿る必要はない。私が平和を作る。私が世界を永劫に平和と安寧の中、更なる発展を約束しよう」
不死の軍隊の進軍の際に、既に世界中に拡げられた通信技術にその声を載せて。
ルスヴンは名実共に世界の王になることを宣言したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる