人間兵器だった僕が伯爵と愛を知る

にーなにな

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 逆らうこともできず、僕は連れていかれ暗い闇へと放り込まれた。





 暗い。光がないせいか寒い。
 他と離れた地下なのだろうか。音もほとんど聞こえてこない。



 感覚的に5日は経っただろう。水も飯も食べていないこの環境はそろそろキツい。

 こんな場所に73は来たかったんだろうか。いらなくなったのなら国軍に返してほしい。

 水や飯を食べないと動くことすらままならない。戦車だって動力源があるのだ。
 でも戦車は苦しまない。燃料を積めばしばらく動けて使わない時は何もしなくていい。

 僕は兵器なのだからそれくらい備わったっていいのに。





 キーーバタンッ

 重い扉が開く音と共にランタンの明かりがこの部屋に入ってきた。

「どうだー死んだかー……ってまだ生きてるのか。さすが人間兵器」

 ランタンを持った従者と共に華美な装飾がされた杖を持った豚公爵がこちらの顔を見た。

「ここから……出してくれ。そしてっ……国軍に……返してくれ」

「おお!まだ喋れる元気もあるのか!すごいなー」

 豚公爵は話しながら杖で僕のことをツンツンと触った。
 不快で避けたかったがそんな気力も僕には残っていなかった。


「うーん、どうしようかな次は……そうだ!この杖で目ん玉を突いたらどうなるか気になるなぁ!」


 僕の左目の前に杖の先端が向く。


「やめっ……ろ」

 目がなくなれば使い物にならなくなり、軍に戻れなくなる。それは絶対に嫌だ。

 勢いよく向かってくる先端をその場に倒れ込むように避ける。

「抵抗するなよ。おい!こいつを抑えろ」

「はっ!」
 
 豚公爵の後ろに控えていた従者が僕の両腕を掴み抑えた。

「お願いだ……目は…やめてくれ」

「やだ!我が気になるのだから確かめさせろ!」

 いつもなら簡単に振り解ける抑えも力が出ず、左目目掛けて進む杖を避けることはできなかった。

「うわあああぁぁぁ」

 強烈な痛みと視界の変化に僕は泣き叫んだ。

 目が……これじゃ戻れても使い物にならない。分解されて他の奴らの臓器のスペックとなるだけ……僕はこれじゃどうにも……

「うわっ杖が汚れたー。あと、うるさいよ」

 豚公爵のムカつく言葉も頭に入ってこないくらい失ったことが大きかった。

「さて、潰した目はどうなってるか……」

「シバル様!」

 僕の元へと寄ろうとした時、後ろから従者が豚公爵を呼んだ。

「なんだ。今いいところなのに」

「それが……」

「何?!……とりあえず戻るぞ」

 豚公爵たちはドタドタと足音を立てながら一斉に部屋を出ていった。
 
 
 支えがなくなり頭は床に倒れ込み再び1人になった。でも、さっきまでとは周りの見え方が違った。

 この目でどうやって戦場に出ればいいのだ。どうやって撃てば、どうやって相手を振り切れば。

 動くこともできず、ただ左目から伝う赤を眺めた。

 











 キーーーバタンッ


「ここか!……大丈夫か君!」

 また扉が開き、ランタンのような光と共に先ほどとは違う誰かの声がした。
 元々力尽きてたのと痛みで叫んだことで、僕の喉は口を動かそうとカスカスとした空気を送るだけだった。

「もう大丈夫だからな」

 パクパクと口を動かすだけの僕を優しく包み込むように抱きしめる。

 人は触れると温かいのだった。
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