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「坊ちゃん!!」
その時、教室に先生を連れて炎谷さんが駆け込んできた。
「え……どうして炎谷さんが?」
「僕を助けてくれたの、鶴戯なんだ。牧神先輩が騙してたって証拠を先輩たちに見せて説得してくれて。美酉ちゃんの場所もGPSで教えてくれたよ」
証拠? GPS? いつの間に……GPSの方はスマホなんだろうけど、夜羽はともかくお隣さんの私の分まで登録してあるって事? お母さんから頼まれでもしたのかしら……
そんな炎谷さんは、私の物言いたげな視線に二コリと笑って返した。
「先生を呼んでおきましたよ。お二人は今日はもう帰宅していいそうです」
「大丈夫か、輿水?」
「はい先生。でも、私は別に……あれっ?」
平気です、と立ち上がろうとして、ガクンと足の力が抜ける。どうしたんだろう、震えが止まらない。
「無理をするな。炎谷さんから事情は聞いている。こいつらの事も先生たちが何とかするから、もう帰りなさい。角笛、送っていってやれ」
「グスッ、はい……」
「美酉、そうしなよ。みんなには私らが説明しとくからさ」
「うん……」
萌に立たせてもらうと、私は戸惑いながらもヒックヒック言ってる夜羽に掴まりながら、炎谷さんの車まで連れて行ってもらった。発車する直前、琴亀君から鞄を持ってきてもらう。
「ありがと……あとよろしくね」
「ああ。詳しい事はまた今度聞かせろよ。特にこいつ」
車内で蹲っている夜羽を指差した琴亀君は、私に囁く。
「お前が思ってるような弱虫じゃなさそうだぞ」
「うん、まあ……どうなんだろうね、そこんとこ?」
何とも言えずに苦笑いで返すと、二人に手を振り、夜羽の家に向かった。何故うちじゃないかと言えば、聞きたい事があったからだ。
△▼△▼△▼△▼
「なに、ここ……」
リビングでお茶を一杯飲んでから連れて来られたのは、絶対に入るなと言われていた地下室だった。入るも何も鍵がかかっていたし、夜羽は「こわいところ」としか言ってくれなくて近寄ろうともしなかったから、お化けでも出るのかと思ってたけど。
そこは、一言で言えばスポーツジムだった。ルームランナーにフィットネスバイクなんて足を鍛えるものから、様々な筋トレマシンの他、何故かゲーセンに置いてあるようなパンチングマシンまで。
先ほど夜羽が見せた大立ち回りを思い出す。いくら性格が変わったからって、いきなりあそこまでの力が出せる訳ない。
「もしかして……ここでずっと鍛えてたの? 全然知らなかったんだけど」
「き、鍛えてたなんてそんな! 鶴戯からは、健康のためだって言われて軽くやってただけだよ! パンチングマシンも、前日よりちょっとだけ超えればそれでいいって……」
「いつから?」
「うーん……中学入ってすぐかな」
ちょっとずつでも、四年間毎日やってれば知らない間に力ついててもおかしくないのか……
「それだけではありませんよ。坊ちゃんはこれも毎日お使いになられています」
そう言って渡されたのは、夜羽の寝室に置いてある玩具だった。クマちゃんのぬいぐるみにお姫様のお人形。気弱なだけじゃなくて、乙女チックなのよね……ん?
「な、何これ!?」
クマちゃんの手を何気なく握ったところ、妙に固い。それにこのお人形、お姫様の髪から足首を繋げるようにリボンが結ばれてるんだけど、思いっきり引っ張っても取れない……と言うか、リボンじゃない。
「ぬいぐるみの手には、ハンドグリップが入れてあります。毎日握手してあげれば、握力もつきますよ。あと人形は改造したブルワーカーです」
「し、知らなかった……そういう玩具なのかと」
青ざめた顔で夜羽が呟く。他にも炎谷さんは夜羽の靴や鞄に重りを仕込んだり、ラジオ体操と偽って自衛隊体操をやらせたりと、本人の知らぬ間に鍛えさせていたようだ。いや、気付けよ夜羽も……
「ぬ、炎谷さん……一体夜羽をどうしたいの?」
「もちろん、ご自分に自信のない坊ちゃんに、真の実力に気付いていただくためです。坊ちゃんのお父上……『赤眼のミシェル』の二代目として」
また出たよ『赤眼のミシェル』……え、夜羽のお父さん!?
そんな中二臭いネーミングの痛々しい人だったの??
その時、教室に先生を連れて炎谷さんが駆け込んできた。
「え……どうして炎谷さんが?」
「僕を助けてくれたの、鶴戯なんだ。牧神先輩が騙してたって証拠を先輩たちに見せて説得してくれて。美酉ちゃんの場所もGPSで教えてくれたよ」
証拠? GPS? いつの間に……GPSの方はスマホなんだろうけど、夜羽はともかくお隣さんの私の分まで登録してあるって事? お母さんから頼まれでもしたのかしら……
そんな炎谷さんは、私の物言いたげな視線に二コリと笑って返した。
「先生を呼んでおきましたよ。お二人は今日はもう帰宅していいそうです」
「大丈夫か、輿水?」
「はい先生。でも、私は別に……あれっ?」
平気です、と立ち上がろうとして、ガクンと足の力が抜ける。どうしたんだろう、震えが止まらない。
「無理をするな。炎谷さんから事情は聞いている。こいつらの事も先生たちが何とかするから、もう帰りなさい。角笛、送っていってやれ」
「グスッ、はい……」
「美酉、そうしなよ。みんなには私らが説明しとくからさ」
「うん……」
萌に立たせてもらうと、私は戸惑いながらもヒックヒック言ってる夜羽に掴まりながら、炎谷さんの車まで連れて行ってもらった。発車する直前、琴亀君から鞄を持ってきてもらう。
「ありがと……あとよろしくね」
「ああ。詳しい事はまた今度聞かせろよ。特にこいつ」
車内で蹲っている夜羽を指差した琴亀君は、私に囁く。
「お前が思ってるような弱虫じゃなさそうだぞ」
「うん、まあ……どうなんだろうね、そこんとこ?」
何とも言えずに苦笑いで返すと、二人に手を振り、夜羽の家に向かった。何故うちじゃないかと言えば、聞きたい事があったからだ。
△▼△▼△▼△▼
「なに、ここ……」
リビングでお茶を一杯飲んでから連れて来られたのは、絶対に入るなと言われていた地下室だった。入るも何も鍵がかかっていたし、夜羽は「こわいところ」としか言ってくれなくて近寄ろうともしなかったから、お化けでも出るのかと思ってたけど。
そこは、一言で言えばスポーツジムだった。ルームランナーにフィットネスバイクなんて足を鍛えるものから、様々な筋トレマシンの他、何故かゲーセンに置いてあるようなパンチングマシンまで。
先ほど夜羽が見せた大立ち回りを思い出す。いくら性格が変わったからって、いきなりあそこまでの力が出せる訳ない。
「もしかして……ここでずっと鍛えてたの? 全然知らなかったんだけど」
「き、鍛えてたなんてそんな! 鶴戯からは、健康のためだって言われて軽くやってただけだよ! パンチングマシンも、前日よりちょっとだけ超えればそれでいいって……」
「いつから?」
「うーん……中学入ってすぐかな」
ちょっとずつでも、四年間毎日やってれば知らない間に力ついててもおかしくないのか……
「それだけではありませんよ。坊ちゃんはこれも毎日お使いになられています」
そう言って渡されたのは、夜羽の寝室に置いてある玩具だった。クマちゃんのぬいぐるみにお姫様のお人形。気弱なだけじゃなくて、乙女チックなのよね……ん?
「な、何これ!?」
クマちゃんの手を何気なく握ったところ、妙に固い。それにこのお人形、お姫様の髪から足首を繋げるようにリボンが結ばれてるんだけど、思いっきり引っ張っても取れない……と言うか、リボンじゃない。
「ぬいぐるみの手には、ハンドグリップが入れてあります。毎日握手してあげれば、握力もつきますよ。あと人形は改造したブルワーカーです」
「し、知らなかった……そういう玩具なのかと」
青ざめた顔で夜羽が呟く。他にも炎谷さんは夜羽の靴や鞄に重りを仕込んだり、ラジオ体操と偽って自衛隊体操をやらせたりと、本人の知らぬ間に鍛えさせていたようだ。いや、気付けよ夜羽も……
「ぬ、炎谷さん……一体夜羽をどうしたいの?」
「もちろん、ご自分に自信のない坊ちゃんに、真の実力に気付いていただくためです。坊ちゃんのお父上……『赤眼のミシェル』の二代目として」
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