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そして、夜羽が地元に戻ってきた日、新しく入院した病室には夜羽と私の家族が集められた。ちなみに炎谷さんと楽々ヱさんはお見舞いに来たそうだけど、観司郎さんが茂久市に現れる事はなかった。炎谷さんの話では、伝説の人物で病院でも顔が知られているから大騒ぎになるとの事だったけど。
「皆さん、今日は僕のためにお集まりいただき……」
「そう畏まった言い回しはなしでいいよ。家族なんだろう?」
夜羽が緊張しながらも切り出そうとしたところで、お父さんが窘めた。一瞬、彼の目が潤んだのが見えたが、すぐに伏せられ「はい…」と頷く。結局、最初のお見舞いの時にどんな話をしたのか、後で聞いても教えてもらえなかった。男の約束だからって……除け者にされたみたいでちょっとムカつく。
「鶴戯に聞いたぞ、茂久市のガキ共を全員のしたんだってな。さすがは俺の息子……と言いたいところだが、ダチだからって不問にするあたり、まだまだ甘いな。そんなだから舐められて人質を取られんだよ」
観司郎さんとは初対面になるけど、夜羽がもっと幼い頃に会っていたら、絶対チビってたに違いない。これは、ヘタレてしまった彼をあんまり責められないな……
だけど今日の夜羽は、話に聞いていたのとは違い、怯える事なく真っ直ぐに父親を見つめ返している。
「そうです、僕は弱い。今回の件はそのせいで起こったと言ってもいい。だからこそ、いつまでも被害者ぶってるだけじゃダメだって気付きました。
……お父さん」
夜羽はベッドから下りて、父親と対峙する。本当はほぼ治ってきているので、もうすぐ通院に切り替えられるのだけど、大事を取って個室にしてもらっていたのだ。
「お父さんは何もしてくれなかったなんて、生意気言ってすみませんでした。僕は用意されていた家で、鶴戯にたくさんたくさん世話になっていたのに、一人で生きていたと思い込んでた。
鶴戯、本当にごめん。今まで育ててくれて、どうもありがとう」
「坊ちゃん……」
殊勝な態度で頭を下げる夜羽は、一見ついに実家に屈してしまったかのようだ。
が……
「それは、大人しく杭殿との婚約を受け入れるという事か?」
「いいえ、僕はミトちゃんが好きなので、杭殿さんとは結婚できません。ごめんなさい」
観司郎さんの問いに頭を上げた時には、憑き物が落ちたような笑顔になっていた。ここまでは既に夜羽が何度も訴えていた事なんだけど……
「……俺だって、若い頃はそう言って反抗したもんだ。だがな」
「家の事情は分かってます。もしどうしても断れずに、杭殿さんと結婚しなきゃいけないなら――僕を、角笛の家から勘当してください」
澱みなく言い切った夜羽に、お父さんの口元が、ニヤッとつり上がる。炎谷さんは驚き慌てていたし、観司郎さんもさすがにピクリと頬が引き攣っている。
私は……何も聞かされていなかった私は、あんぐりと口を開けた。
私のために、本気で家を捨てるつもりなの!?
「皆さん、今日は僕のためにお集まりいただき……」
「そう畏まった言い回しはなしでいいよ。家族なんだろう?」
夜羽が緊張しながらも切り出そうとしたところで、お父さんが窘めた。一瞬、彼の目が潤んだのが見えたが、すぐに伏せられ「はい…」と頷く。結局、最初のお見舞いの時にどんな話をしたのか、後で聞いても教えてもらえなかった。男の約束だからって……除け者にされたみたいでちょっとムカつく。
「鶴戯に聞いたぞ、茂久市のガキ共を全員のしたんだってな。さすがは俺の息子……と言いたいところだが、ダチだからって不問にするあたり、まだまだ甘いな。そんなだから舐められて人質を取られんだよ」
観司郎さんとは初対面になるけど、夜羽がもっと幼い頃に会っていたら、絶対チビってたに違いない。これは、ヘタレてしまった彼をあんまり責められないな……
だけど今日の夜羽は、話に聞いていたのとは違い、怯える事なく真っ直ぐに父親を見つめ返している。
「そうです、僕は弱い。今回の件はそのせいで起こったと言ってもいい。だからこそ、いつまでも被害者ぶってるだけじゃダメだって気付きました。
……お父さん」
夜羽はベッドから下りて、父親と対峙する。本当はほぼ治ってきているので、もうすぐ通院に切り替えられるのだけど、大事を取って個室にしてもらっていたのだ。
「お父さんは何もしてくれなかったなんて、生意気言ってすみませんでした。僕は用意されていた家で、鶴戯にたくさんたくさん世話になっていたのに、一人で生きていたと思い込んでた。
鶴戯、本当にごめん。今まで育ててくれて、どうもありがとう」
「坊ちゃん……」
殊勝な態度で頭を下げる夜羽は、一見ついに実家に屈してしまったかのようだ。
が……
「それは、大人しく杭殿との婚約を受け入れるという事か?」
「いいえ、僕はミトちゃんが好きなので、杭殿さんとは結婚できません。ごめんなさい」
観司郎さんの問いに頭を上げた時には、憑き物が落ちたような笑顔になっていた。ここまでは既に夜羽が何度も訴えていた事なんだけど……
「……俺だって、若い頃はそう言って反抗したもんだ。だがな」
「家の事情は分かってます。もしどうしても断れずに、杭殿さんと結婚しなきゃいけないなら――僕を、角笛の家から勘当してください」
澱みなく言い切った夜羽に、お父さんの口元が、ニヤッとつり上がる。炎谷さんは驚き慌てていたし、観司郎さんもさすがにピクリと頬が引き攣っている。
私は……何も聞かされていなかった私は、あんぐりと口を開けた。
私のために、本気で家を捨てるつもりなの!?
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