「K」

ルカカ

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第3話 鏡の支配者

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《1.  闇の囁き》

 新宿歌舞伎町での戦いから2日。自我を持つKが放った「闇に落ちる」という言葉が、悠斗の頭を離れない。あの黒い霧を操るKの知性は、ただの怪物を超えていた。
 K特課の主任・黒川誠(くろかわ まこと)の「釈放に近づいた」という言葉に希望を見つつも、デバイスを握る手が震える。自分がKに変身するたび、どこか人間性が削れている気がした。

 独房の扉が開き、調査チームのリーダー・林美穂(はやし みほ)が現れた。珍しく黒川ではなく、彼女の登場に悠斗は驚く。

「佐藤さん、緊急事態です。新たなKが秋葉原で確認されました」

「黒川は?」

 悠斗は眉をひそめた。

「主任は本部で別の動きを追ってます。このKは…異常です」

 林はタブレットを取り出し、映像を見せた。東京・秋葉原の電気街、深夜の雑踏。ガラス張りのビルに映る無数の人影が実体化し、通行人を襲う。
 Kは女性のような姿で、鏡やガラスに触れるたびに影を生み出し、操る。

「自我を持ち、鏡を操る能力。被害が急拡大中です」

 悠斗の背筋が冷えた。自我を持つKがまた現れ、鏡を操る? 

「場所は? 今すぐ行く」

 林はデバイスを手渡し、言った。

「秋葉原の電気街です。佐藤さん、主任から…『これを成功させれば、釈放の交渉を本格化させる』と」

 悠斗はデバイスを握りしめた。

「葵のためだ。絶対に倒す」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《2. 秋葉原の戦場》

 深夜1時、秋葉原の電気街はK特課によって封鎖されていた。ネオンとガラス張りのビルが光る中、装甲車が周囲を固め、隊員たちがライフルを構える。だが、誰もが知っていた。銃はKに効かない。希望は悠斗ただ一人だ。

 K特課本部の作戦室から、林美穂が通信機越しに指示を出す。

「佐藤さん、Kは電気街の中央広場にいます。民間人は避難済みですが、ガラスや鏡が多いエリアです。注意してください」

悠斗はデバイスを握りしめた。黒い金属の冷たさが手に伝わる。心臓が早鐘を打つ。葵の笑顔を思い浮かべ、深呼吸を一つ。デバイスを首に押し当て、ボタンを押した。

 焼けるような痛みが全身を駆け巡る。身体が膨張し、筋肉が異様に発達。爪が鋭く伸び、目が赤く輝く。
 Kとしての姿――純粋なパワーとスピードが極限まで高まった怪人へと変身した。

 広場に踏み込むと、Kが悠斗を見据えていた。女性のような細いシルエット、ガラス片が浮遊するように周囲を漂う。赤い目が悠斗を捉え、冷たく響く声。

「K…か。私の鏡に映る運命を見なさい」

 悠斗は身構えた。

「何者だ? なぜ人を襲う?」

 Kは微笑み、ガラス張りのビルを指差した。

「私は鏡の支配者。全てを映し、支配する!」

 瞬間、ビルのガラスに悠斗の姿が映り、その影が実体化。悠斗と同じ姿の分身が襲いかかってきた。

「なっ…!」

 林の声が通信機から響く。

「佐藤さん、そのKは鏡から分身を生み出します! 本体を狙って!」

 悠斗は分身の攻撃をかわし、本体のKに突進。だが、Kはガラス片を操り、鋭い刃のように飛ばしてきた。悠斗はスピードで回避し、拳を振り下ろす。
 Kは軽やかに動き、ガラスから新たな分身を生み出す。分身が二人、三人と増え、悠斗を囲む。

「くそっ…多すぎる!」

 悠斗は分身の攻撃を耐えながら、Kの動きを追う。ガラス片が腕を切り裂き、血が飛び散る。痛みに顔を歪め、葵の笑顔を思い浮かべた。

「葵に…会うんだ…!」

 Kが新たな分身を召喚する瞬間、悠斗はガラス張りのビルを蹴り、破壊。鏡の供給を断ち、Kの懐に飛び込んだ。拳がKの胸を捉え、悲鳴が響く。隙を見計らい、首にデバイスを突き刺した。

「終わりだ!」

 デバイスが作動し、ウイルスが吸い出される。Kは悲鳴を上げ、身体が乾いた粘土のように崩れ始めた。だが、最後にKが囁いた。

「鏡は…お前の本性を映す…」

 数秒後、やはりそこにはやせ細った人間の死体が残っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《3. 戦いの余波》

 K特課の隊員たちが現場を封鎖。悠斗は人間の姿に戻り、腕の傷を押さえて広場の端に座り込んだ。林が駆け寄り、応急処置を施しながら言った。

「佐藤さん、すごかったです! あの分身の数、普通なら…」

 悠斗は疲れ切った声で呟いた。

「あのK、俺の姿をコピーしてた。『本性を映す』って…何だよ、それ?」

 林は目を伏せ、静かに言った。

「佐藤さん、主任が…このKのデータから何か大きな手がかりを得たみたいです。詳しくは本部で話すって」

 突然、通信機から黒川の声が響いた。

「佐藤、よくやった。今回のKは我々の予想を超えていた。すぐに本部に戻れ。話がある」

 悠斗は立ち上がり、林を見た。

「話? 釈放のことか?」

 林は小さく頷いた。

「主任の口ぶりだと…何か動きがあるかも。佐藤さんの戦果、絶対に無駄にしません」

 独房に戻り、悠斗は葵の手紙を手に取った。「パパ、大好き」。涙が滲む。Kの言葉が頭を離れない。

「本性を映す」

 自分のKとしての力が、どこか自分を侵食している気がした。黒川の「話」とは何か? 希望か、それとも新たな試練か?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《4. 深まる陰謀》

 K特課本部、分析室。林美穂が暗号化された通信ログを解析していた。

「主任、今回のKのデバイスから異常なデータが。『Kプロジェクト』の信号が、海外のサーバーだけでなく、国内の特定の施設とも繋がってます」

 黒川はモニターを見つめ、呟いた。

「自我を持つKが連続で現れる。誰かが意図的に進化を加速させている。佐藤悠斗の力…その秘密を解く必要がある」
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