「K」

ルカカ

文字の大きさ
6 / 6

第5話 暗中の策略

しおりを挟む
《1. 侵入の痕跡》

 2025年7月15日、午後7時18分。K特課本部、地下の分析室。モニターに赤い警告が点滅し、暗号化されたログが流れている。
 主任・黒川誠(くろかわ まこと)は無表情でモニターを睨み、調査チームのリーダー・林美穂(はやし みほ)がキーボードを叩く。

 東京湾での戦いから一夜、炎を操るKが残した「力は…お前を灰にする」という言葉が、K特課に危機感を植え付けていた。『Kプロジェクト』の核心データが、外部からのハッキングに晒されている。

 林が声を上げる。

「主任、不正アクセスの痕跡を捕捉! 発信元は特定できませんが…民間企業のサーバーからKデバイスのデータが流出してる可能性が!」

 黒川は冷静に答える。

「民間企業? どの企業だ?」

「東京・品川のバイオ企業…表向きは医療研究、でも裏でKデバイスに関与してる疑いがあります」

 林の指がキーボードを走る。モニターに映るのは、暗号化されたログに埋め込まれた不気味なメッセージ。

「Kの真実は我々が握る。K特課は遅すぎる」

 黒川の目が細まる。

「何者だ? Kを生み出した連中か?」

 林が震える声で続ける。

「分かりません…でも、このハッキング、ただのデータ窃盗じゃない。まるで我々を挑発してるみたいです」

 黒川はモニターを指す。

「挑発? なら、こちらも動く。林、企業のサーバーに潜入し、データを奪還しろ。Kの謎を解く鍵がそこにある」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《2. 頭脳戦の火蓋》

 K特課本部、作戦室。黒川と林を中心に、分析チームが集まる。モニターには品川のバイオ企業――仮称「ブラックラボ」の設計図が映し出される。
 林が報告する。

「ブラックラボのサーバールームは地下4階。量子暗号と物理セキュリティで守られています。ハッキングだけでは突破不可能」

 黒川は地図を睨む。

「なら、物理的に潜入する。冷却ダクトから入れる。林、君がハッキングを担当。チームは最小限で動け」

 分析チームの若手・高橋が口を挟む。

「主任、ブラックラボにKが配備されてる可能性が。自我を持つK、音波を操る能力です。コードネーム…『エコー』と仮に呼びます」

 黒川は冷たく言う。

「Kが絡むなら、頭脳で出し抜く。林、サーバーデータの奪還とバックアップの破壊を同時に進めろ。エコーには私が対処法を考える」

 林が頷く。

「主任、この企業の背後には…何か大きな力が動いてる。Kの進化が意図的だとしか思えません」

 突然、モニターにノイズが走り、謎の声が響く。

「K特課、いい動きだ。だが、Kの真実は我々の手中にある」

 声の主は正体不明、暗い影のようなシルエット。

「お前たちは駒に過ぎない。Kの進化を止めることはできない」

 黒川は即座に応じる。

「貴様は何者だ? Kを操る黒幕か?」

 影は笑う。

「黒幕? ただの先駆者だ。K特課の動きは全て見られている。無駄な抵抗はやめなさい」

 通信が切れる。林が呟く。

 「この声…ブラックラボの関係者? それとも…もっと大きな組織?」

 黒川は拳を握る。

「分からん。だが、ブラックラボを叩けば一歩進める。準備を急げ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《3. ブラックラボの迷宮》

 深夜、品川のブラックラボ。ガラス張りのビルに、林とK特課の潜入チームが冷却ダクトから侵入。
 黒川は本部から遠隔で指示を出す。林がハッキングツールでセキュリティを解除し、サーバールームへ向かう。
 だが、廊下のモニターにエコーの映像が映る。音波を操り、隊員を一瞬で無力化。

「ブラックラボがKを兵器として使ってる…!」

 林が呟く。

 警報が鳴り、影の声がスピーカーから響く。

「K特課、よく来た。だが、ここはお前たちの終着点だ」

 エコーが現れ、音波が部屋を震わせる。

「邪魔者は…私の音で消える」

 林は冷静に通信機で指示。

「隊員、音波の反響を利用! 壁の反射で死角を作れ!」

 隊員が金属パネルを展開し、音波を反射。エコーが一瞬混乱する隙に、林はサーバーにアクセス。だが、影がモニターに再登場。

「林美穂、賢いな。だが、データはすでに別のサーバーに移した」
 黒川が本部から叫ぶ。

「林、バックアップを破壊しろ! データ流出を防ぐんだ!」

 林はキーボードを叩き、バックアップを破壊。エコーの音波が隊員を吹き飛ばし、林の腕を切り裂く。

「くっ…!」 

 彼女は歯を食いしばり、データを奪還。影が嘲笑う。

「その努力、無意味だ。Kの進化は止まらない」

 林が叫ぶ。

「主任、データに異常な暗号が! Kのウイルスは…意図的に進化させられてる!」

 エコーが音波を集中させるが、林は隊員と連携し、冷却システムを暴走させて音波を乱す。エコーが隙を見せた瞬間、隊員がスタン装置でエコーを無力化。林がサーバーデータを確保し、脱出に成功した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《4. 暗中の手がかり》

 K特課本部、分析室。林が奪還したデータを見せる。

「主任、ブラックラボはKデバイスの製造元の一つ。データに、Kのウイルスを意図的に進化させるプログラムが…誰かがKを兵器化しようとしてる」

 黒川はモニターを睨む。

「正体不明の敵…彼らはK特課の動きを全て監視している。Kの進化を制御する鍵は、佐藤のウイルス耐性だ」

 林が声を震わせる。「主任、データに佐藤さんのDNA情報へのアクセス記録が…まるで彼の力を試す実験のよう」

 黒川は一瞬沈黙し、言う。

「佐藤の力はKの謎を解く鍵。だが、彼をどう使うかは…私が決める。林、今回のデータで釈放交渉を進められる。葵を守るためにも、続けるぞ」

 林は頷く。

「はい…でも、この敵、ただの企業じゃない。もっと大きな力が動いてる…」

 黒川は呟く。

「Kの真実はまだ暗中にある。だが、我々は一歩進んだ。次は…奴らの本拠を突き止める」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...