神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

文字の大きさ
79 / 241
絢爛!思いの丈!

ゴライゴ·コロシアム



 夜明けの海上に、まだ暗い海水みずの中から浮上した鬼磯目マーティアは、しばし黄昏を堪能しつつ目的地へと猛進していた。

 !

 周囲に無数の気配が群がる。
 しかし周囲に集った気配達は鬼磯目に近づいても尚、統率のとれた動きを維持したまま襲撃の意思を示さない。
 コティアーシュマーティアは警戒を解除し、並泳するガーファル軍団を指揮する者のコンタクトを待った。

「おはようぉ!本当にコティアーシュなのね~?」

 鬼磯目の左舷側に浮かび上がって泳ぐ一体の小柄なガーファルが、日本語で彼女に話し掛けてきた。
 前頭部にある冠のようなセンサー器官の付け根にある鼻腔が器用に動き、時折そこに被る波をプワプワと吹き飛ばしながら器用に喋っている。

·その声まさか!レミレタ?!
「ウェーイ!おひさーー!」
 驚くマーティア。彼女と旧知の仲であろう小柄なガーファルこと、先程まで胡桃下と激闘?を繰り広げていたガーファル隊長レミレタは、鬼磯目が警戒を緩めたのを見計らって更に鬼磯目に近寄った。
 ?
 鬼磯目が纏った宝甲のセンサーの側にくゆった違和感。マーティアはその予感に確約性を持たせる為、艦橋上のガスセンサーを一瞬だけ作動させる。

· ···ちょっと!お酒くさ!
「でへへへ~酔っ払いでしゅよ~」
 レミレタはわざと体をくねくねとさせながら泳ぐ。
·もー!立派になったねって言おうとしたけどやーメタ!
「さっきは仲間が色々ごめんねー?私の方は少し勝負でさ!···でね!コティアーシュ!ゴライゴ様の命により!我々ガーファル軍団第12部隊はこれよりあなたの護衛任務に入ります!ッウィッく!」
·ぬぅ!ありがとう!でも···

 マーティアがそう言い終わるや否や、鬼磯目は航行速度を上げた。それに焦ったレミレタも急いで鬼磯目に並ぼうと速度を上げて追い付く。

「ちょちょっと!お、怒ってるの?」
·ううう!違うのレミレタ!貴団の加勢は大いに感謝します!けどなんか今は燃えてるっていうかなんというか···!
「う!」

 レミレタは鬼磯目から伝わる熱血オーラにたじろぎ、僅かにスピードが落ちる。

·レミレタ!ちょっとわかんなくてもいいから黙って愚痴聞いて?!私、当たり前なんだけど色々あった上に娘扱い···娘扱いされてたの!なんかちょっとくやしい!こーなったら!どんな手を使ってでも意地でも振り向かせちゃったりする!好みのタイプはすこーしづつリサーチしてよーく知ってるんだぞぉ!ふふふ···


「ん?···「恋?」」

「!!!」
 ガーファル隊長レミレタのその一言でガーファル軍団の統率は乱れ、真剣に泳いでいた筈の全員がカクンと一瞬横倒しにコケて軍団全体の泳速が僅かに落ちる。
 その時、呆気に取られているレミレタより一回り大きいガーファルが一頭彼女達に近付き、ほぼ唸り声のような巨獣語でレミレタにそっと耳打ちする。

 以下一部翻訳。

 隊長!ドーナーバが持ち直したそうです!記憶も引キ継ギであると!

 !おお、良かったな!

 隊長は、お休みになられなくて本当に大丈夫ですか?

 泳いでる方が気持ちいいの、「それよりコティアーシュ?そういう事なら···」
「?」
 今度はレミレタが鬼磯目に耳打ちするように、顔を船体に近付けて何やらゴニョゴニョと話し掛けていた。




 

 宙に浮かび、ゴライゴを見下ろしているアンバーニオンとNOI Z。

 彼らの視線の先、ゴライゴの背負った巨大亀甲型外骨格がブロックごと豪快に移動を繰り返し、みるみるスペースが形成されていく。

「···」
 現はゴライゴの変形完了を待つ間に、NOI Zのコックピットでマーティアからのメールを再度チェックしていた。


   ゲルナイドへ

   もし嫌じゃなかったら
   ゲルナイドの能力で
   アキサを何処かへ
   運んでくれると嬉しいな?


   PS
   後で中枢活動体のコツ教えて?


 そのメールを見ながら脂汗をかく現。
「ね、姉ちゃんまさかっ!!」
 その間にも変化するゴライゴの背中。

 闘技場コロシアム

 宇留の脳裏にそんなイメージが浮かぶ。
 そのイメージの通り、海上に浮かぶゴライゴの背に直径千メートルを優に超える巨大な円形の闘技場が完成した。

「もうよいゾぃ!降りとくれ!」

 ゴライゴの申し出に従い、闘技場の中心に舞い降りて向き合うアンバーニオンとNOI Z。

 するとゴライゴの後頭部側、闘技場を見下ろす場所にある外骨格がゴソッと動いて表面が前倒しに開き、内部から巨大な何者かが現れた。
「!」「!」



「よ~ぅ!!皆、改めましてぇ!」
 高い所から二騎の琥珀の巨神に語り掛ける龍人のような人型怪獣。
 その声は老人口調のゴライゴそのものでありながら、その体幹はスラッと伸びて一切老いを感じさせない佇まいだった。
 体格はアンバーニオンより一回り大きく、先端が鋭角的に伸びた外骨格はファンタジーに登場するハイクラスの鎧を思わせる。
 そして何故か、黙っていても相手が勝手に戦慄する程の威圧感を伴っていた。

「これがワシの戦闘中枢活動体、ゴライゴ·リパレギレムじゃ!」

 その場で一歩踏み出し片足を段差に乗せるゴライゴ·リパレギレム。
 背面腰部から引き出され伸びた尾のような太い管は、どうやら本体に直結しているようだ。

「!ーーーーー」

 もしこのゴライゴおっちゃんと戦う事になったら···
 
 宇留はわかっていても、あり得ない想像を巡らせ、たじろぎそうになった。
 だがそんな宇留の想いを知ってか知らずか、ゴライゴ·リパレギレムは相変わらず緊張感の無いセリフで宇留に語り掛ける。

「宇留よ!こりゃあれじゃよ!昔のゲームとかでボスを倒すと中から出てくるコアボスいるじゃろ?あれじゃよ!アレアレ!」
「···あっ!あ~~!なるほどー!アレ!あはは!」

 たったそれだけの例えで、宇留の肩から力が抜けた。
 ヒメナはロルトノクの琥珀アンバーの中で合点がいったようにポンと拳を手酌に受け止め、現は呆れたように目元を覆う。

 緊張感がほどけた所で、ゴライゴ·リパレギレムはスパーリングの条件を提示する。
「二人共、全力は出しても手加減も忘れぬ事。勝ち負け以外に先に修羅場った方も負けとする。何事かあればワシが間に入る以外は戦闘スタイルは自由!よいか?」
 
「「はい!」」

 一切のタイムラグ無く、同時に答える宇留と現。
 構えて向かい合うNOI Zと片柱のアンバーニオン。

 宇留はポケットから龍剣山神社のお守りを取り出し、お守りを握った手を眉間に当てて想いを込める。





 アンバーニオンが残った片方の琥珀柱を掴んで外し、上空へ放り投げると同時に駆け出した。
「!ーー」
 それに合わせてNOI Zも間合いを詰める。
「ーー!」

 ギャキィィィン!!

 琥珀の巨神達は両手を組み合い力比べをしながら、お互いの顔をごく至近距離で突き合わせてその場で睨み合った。











 

あなたにおすすめの小説

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。