40 / 52
命の中
しおりを挟む「F専用活性剤装填···行け!ミサイルユニットォ!」
エグルドーゴは再び下半身のユニットそのものを切り離す。そのミサイルユニットの背部スラスターから赤い火が吹き暴れ、アンバーニオン ソイガターに迫る。
命中の瞬間、アンバーニオン ソイガターの顔前で肩アーマーから前方に伸びる琥珀の牙に噛み挟まれたミサイルユニットは、盛大に爆発した。
しかしその爆圧も咆哮空間によって阻まれ、ダメージは殆ど通らない。
「ヘッ!景気の良いヤロウだ!虎の子を変え品を変え、羽振りの良さだけはカッてやる」
ソイガターの言葉を聞きながらも、宇留はガルンシュタエンが何処に潜んでいるのか不安だった。
(こっちはもういいぞ?リキュスト)
「エシュタガ!」
(俺はこのまま後衛に入る。で、そっちの牽制の後で頃合いを見て頼みがあるんだが?)
ガジャッ!ッゴ!
リキュストの鼓膜で響くエシュタガの通信に、何らかのガジェットを操作する音が割り込む。
(実は···変なヤツを見つけてな?)
「はぁ?コッチャア本気でやるってッチまったんだがなぁ?」
(······)
「···!あーもう!わかった!わかった!」
「む?」
アンバーニオン ソイガターは、霧の中からギションギションと足音を立てて走って来る下半身だけの二足歩行ロボットに気が付いた。やはり例の如く、エグルドーゴが上半身となって合体換装を完了する。
少し屈み、脛の脇にマウントしてあった巨大機関砲二丁を持ち構えるエグルドーゴ。下半身は明らかに合体前に比べ、動きが滑らかだった。
「ナ!虫は終わりってか?」
エグルドーゴのY字のようなフェイスプレートが上下に割れてジャカッと開く。その奥で両目が黄緑色に光り、戦闘形態が変化したようだ。
「ヨッシャ来い!鉛ダマでも何でも···」
「ん?」
「ム!」
宇留とソイガターがそれに気付いたのは同時だった。
チュイン!
アンバーニオン ソイガターは額目掛け飛んで来た何かを、ごく短い振り幅の裏拳で直感的に弾き飛ばす。
宇留の手の甲が痛んだ。肥大化したアンバーニオンの手甲を持ってしても伝わるそのダメージは、かなりの威力を伴っていた事が分かる。二丁機関砲を持ったエグルドーゴはまだ動いていなかった。すると残された攻撃の原因は少ないという結論に至る······
その時ガルンシュタエンは、宇留達から数百メートル離れた地点で片膝を突き、巨大なスナイパーライフルを構え、アンバーニオン ソイガターに狙いを定めていた。そのスナイパーライフルは必要最小限に装飾が施され、若干ではあるがガルンシュタエンとデザインテイストが異ならないように配慮されている。
「感づかれたか?ガルン、宝甲の目の感度を絞れるか?」
霧中にも関わらず、ガルンシュタエンは遠距離からアンバーニオンを確認している。
「了解、綿飴空間センシングをアンバーニオンの予想感知圏外ギリギリへ」
「よぉし···虎狩りだ······」
エシュタガはガルンシュタエンの操玉の中で、人差し指と親指で指鉄砲を作り、視線の先のディスプレイ上に小さく映るアンバーニオン ソイガターに狙いを定めた。
ジャキキッ!
エグルドーゴが機関砲を構える。踏み出そうとした宇留は、足下の異変に気付いた。
「おおぉーっとぉ!」
「グォ!足が!」
いつの間にか氷結島の地面によって包まれ、固定されていたアンバーニオン ソイガターの足首。否定された動作により生まれた反動は、アンバーニオンごと操玉の宇留を前のめりに揺さぶった。
「このコーリモドキ!やっぱりアウェイだったか!?」
エグルドーゴのミサイルユニットに仕込まれていたF(フェルメプン)専用活性剤が自爆によって拡散された事により、アンバーニオン ソイガター近辺の氷結島が一部分のみ再膨張を始めていた。
巨獣フェルメプン。群れ全体で一体としての意思を持ち、一個体同士の連結を繰り返し巨大化する微細な生物群。かつての帝国内においてアクプタン開発のモデルにもなった怪獣の一個体達は、最小のアクプタンとの融合によりサイボーグ化され、それが集結する事で巨大な氷結島を形成していた。T都湾上空に開いたキネイニウム空間の扉を、ガルン本体が発生させた偽りのモーニンググローリーで包み隠し、更に空間から大量のフェルメプン達を海上に送り込む事によって氷結島が海上に現れたのだった。そしてそのフェルメプン達に混ぜ込まれたもの。超巨大アクプタンに合体していた最小アクプタン達もまた氷結島の所々に分散して潜み、味方に有利なバトルフィールドを展開して獲物を待ち構えている。
「ふぅむ···その辺とその辺その辺かぁ?」
エグルドーゴのコックピットディスプレイのマップにはアクプタンの反応が濃い部分が表示されリキュストはそれを確認した。
ブドドドドドドドドド!!
エグルドーゴは、両手に持った機関砲を撃ちながらアンバーニオン ソイガターに直進していく。
「グォオオオオっ!」
「この弾速なら捌きキレネーだロォ?!」
両腕で弾丸の嵐をガードするアンバーニオン ソイガター。だがそんな中にあってヒメナは、先程琥珀の牙で穿った地面から溢れ、周囲に流れて来た海水を見逃さないでいた。
一方。
デリューワールドの廊下を彷徨う折子と照臣。
照臣は時折立ちはだかる無数の本人間達に対し、迷い無く手から放つビームで貫き倒して行く。
「弱いのは数でカバーかぁ?でも本の怪物だけって···うぅ~罰当たりだ~?」
「大丈夫よ?基本この世界は学校のコピーが元になってる。だから本の数には定評があるでしょう?」
「なるほど!どーりでさっきから教科書だらけな訳ですねッッ!?」
ビシュ!ビシュィ!
照臣に新たに倒された本人間二体が紙片に変わり散らばる。
「!」
ゴーーーーーーーー!
その奥の暗闇から、廊下の幅一杯の防火扉が猛スピードで迫って来た。
折子を庇うように前に出て右手をかざす照臣。そしてその照臣の更に前に、ヴァエト(?)が一歩踏み出て庇う。
ズンン!
「「!」」
ヴァエトは防火扉を押し留めた。手が添えられた部分の固そうな鉄板はひしゃげ、防火扉の威力もヴァエトの腕力もかなりのものとであると分かる。
「ぬぅっっ!加勢するっ!」
そう言いながらギコギコと音を立てて防火扉を押し返していくヴァエトの表情を見て折子はハッとした表情で彼の名を呼ぶ。
「ヴァエ···ト?」
「い、や、違う!···ワルイとは、思ったんだが、あいつの!姿だけ、借りちまった!」
ズズーーン!
ついに押し倒された防火扉は、見た目よりも重そうな音を立てて倒れ、そして消えた。
「すまん、あんまりにも、暇でさ?」
ヴァエトはバツが悪そうな表情を折子に向ける。
「············ゼ···レクトロン!?」
「!?」
驚く折子と、事情が分からずとりあえずビックリしておく照臣。ゼレクトロンは更なる敵の気配を察して、折子達の後ろに回り込む。
「俺なんかの様子を見に来てくれてアリガトな?もう少しだけ、待っててくれ?···さ!早く!ここは俺が!」
「ありがとう!」
礼を述べ先を急ぐ折子と、ゼレクトロンを交互に見ながら進む照臣はそれを見た。
ゼレクトロンが手をかざすと、赤外線に照らされたコタツの中のように真っ赤に染まる廊下には、既に十数体の本人間達が迫っていた。
深紅に輝く廊下を珍しげにキョロキョロと見渡していた本人間達は、爆炎に包まれ一瞬にして灰になって崩れる。
「すげーー!あっ!」
照臣はゼレクトロンの炎の灯りを照り返す増幅器を一つ、天井に見つけた。
ビシュ!ボッ!
反射的に増幅器を破壊する照臣。
「···やるな?」
「?」
照臣が振り返ると、爆炎を後光にゼレクトロンも振り返っていた。影になって表情は分かりづらいが、笑っているようだった。
照臣もニコッと微笑み、拳で帽子のつばをグッと上げると、折子の後に続いた。
機関砲弾の嵐を防ぎ切ったアンバーニオン ソイガターは、ガードの体勢を保ったまま、爆煙越しに機関砲のマガジンを再装填するエグルドーゴを見据えていた。
「テテテ!···大丈夫か?スマイ!」
ソイガターの問いに、クロスした腕の合間から闘志剥き出しの視線をジロッと上げる宇留。
「ウリュ!海水が来てるよ?」
「うん!行くぞ!涙光の閃!」
「ニョッシャあ!」
アンバーニオン ソイガターの目が輝き、涙光の閃の発射プロセスが作動する。
その時、氷結島上空にはリゲルナイドが到着していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる