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八章 観察
一
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「おはよ……」
「おっ、おはよう」
この日もいつものように始まった。昨日のこともあったため、もう琴乃は私に愛想つかしてしまったかもしれないと思っていたけど、その心配はないみたい。
今日も普段どおり、琴乃は私とおしゃべりをしたり、頭をなでたり、観察記録をつけたりしていた。しかし案の定、私のドキドキの発作や舟渡に対する恋愛感情のこと、そして的場に関することを口にすることはなかった。しかしそれでいいと思った。琴乃から舟渡の気持ちを教えてもらったその日の放課後には真妃どころか家庭科部全体にそのことが広まってしまったなんてことが知られてしまっては、琴乃が激怒してしまうかもしれなかったからだ。
とりあえず今のところは問題ない。まあ家庭科部中に広まってしまってからまだ一日しか経っていなかったので、この日に何か異変が起きてしまってはやってられない。私は今日も彼らに見つからないように舟渡と的場の観察を続けていた。舟渡を見てしまうと相変わらずドキドキしてしまう私だったが、彼も私と同じような気持ちを感じているのだとわかっている今ではもう仕方ないと割り切ってしまうことができた。舟渡は私に気があるとのことだけど、今日も相変わらず的場と行動を共にしていた。
もしかしたら……、彼はいやいや的場と一緒にいるのかもしれない。
しかし舟渡も舟渡で、的場に積極的に話しかけたり的場の甘えに受け答えしたりしている。どういうことなのだろうか。
琴乃も琴乃で変わってしまった。私が彼らをいくら凝視しようが、目隠しをしたり注意したりすることは全くなくなってしまった。この日も私は登校してから下校するまで、隙を見つけては彼らの観察をし続けてしまった。
次の日の昼休み、今日もやっぱり観察を続けていた。琴乃は今日も何も言ってこない。
気になった私はふと尋ねた。
「琴姉? 怒らないの?」
「えっ、何で?」
琴乃は本当に私に対して何も言う気がなかったようだ。
「だって私……、今日も舟渡たちのこと見ちゃってるんだよ……」
「言っただろ、好きにしろって」
「はあ……」
やっぱりあの時の言葉通り、琴乃は私に好き勝手させているみたいだった。琴乃は本当は怒っていたりするのだろうか。そのことだけは心配だった。
「あっ」舟渡がまた私の方をチラ見した。私が注意をしてから、授業中に見つめられることはなくなった。しかし、昼休みなどの休み時間には、相変わらず私のことを見つめてくるのだった。舟渡が私をチラ見する。普段ならそれで終わるはずだった。しかし今回は違った。
「ちょっと! どこ見てんのよ!」
的場の声が響いた。舟渡が私の方を見たことに腹を立てたようだ。これまでの昼休みも、舟渡が私の方を見てくることはちょくちょくあった。しかし的場は怒る様子を何一つ見せず、甘い声で自分へ気を向かせるように促していただけだった。それなのに今日はというと、的場はイラついたように舟渡へ声を荒立てたのだった。そしてそれはこの時だけではなかった。
「ねえ! 何見てんのよ!」
「おい! 啓介!」
「こっち見なさいよ!」
的場は、舟渡が私の方へ視線をそらすたびに声を荒立てて怒るようになった。そのたびに舟渡は、怒った的場を落ち着かせるのに一苦労しているようだった。
もしかして、とうとう……。
一瞬思った私だったが、私自身が的場から嫌がらせを受けることもないみたいだし……。何より、私と舟渡は相思相愛なのよっ!
そう信じ切っていた私は、相変わらず得意げになっていた。
「おっ、おはよう」
この日もいつものように始まった。昨日のこともあったため、もう琴乃は私に愛想つかしてしまったかもしれないと思っていたけど、その心配はないみたい。
今日も普段どおり、琴乃は私とおしゃべりをしたり、頭をなでたり、観察記録をつけたりしていた。しかし案の定、私のドキドキの発作や舟渡に対する恋愛感情のこと、そして的場に関することを口にすることはなかった。しかしそれでいいと思った。琴乃から舟渡の気持ちを教えてもらったその日の放課後には真妃どころか家庭科部全体にそのことが広まってしまったなんてことが知られてしまっては、琴乃が激怒してしまうかもしれなかったからだ。
とりあえず今のところは問題ない。まあ家庭科部中に広まってしまってからまだ一日しか経っていなかったので、この日に何か異変が起きてしまってはやってられない。私は今日も彼らに見つからないように舟渡と的場の観察を続けていた。舟渡を見てしまうと相変わらずドキドキしてしまう私だったが、彼も私と同じような気持ちを感じているのだとわかっている今ではもう仕方ないと割り切ってしまうことができた。舟渡は私に気があるとのことだけど、今日も相変わらず的場と行動を共にしていた。
もしかしたら……、彼はいやいや的場と一緒にいるのかもしれない。
しかし舟渡も舟渡で、的場に積極的に話しかけたり的場の甘えに受け答えしたりしている。どういうことなのだろうか。
琴乃も琴乃で変わってしまった。私が彼らをいくら凝視しようが、目隠しをしたり注意したりすることは全くなくなってしまった。この日も私は登校してから下校するまで、隙を見つけては彼らの観察をし続けてしまった。
次の日の昼休み、今日もやっぱり観察を続けていた。琴乃は今日も何も言ってこない。
気になった私はふと尋ねた。
「琴姉? 怒らないの?」
「えっ、何で?」
琴乃は本当に私に対して何も言う気がなかったようだ。
「だって私……、今日も舟渡たちのこと見ちゃってるんだよ……」
「言っただろ、好きにしろって」
「はあ……」
やっぱりあの時の言葉通り、琴乃は私に好き勝手させているみたいだった。琴乃は本当は怒っていたりするのだろうか。そのことだけは心配だった。
「あっ」舟渡がまた私の方をチラ見した。私が注意をしてから、授業中に見つめられることはなくなった。しかし、昼休みなどの休み時間には、相変わらず私のことを見つめてくるのだった。舟渡が私をチラ見する。普段ならそれで終わるはずだった。しかし今回は違った。
「ちょっと! どこ見てんのよ!」
的場の声が響いた。舟渡が私の方を見たことに腹を立てたようだ。これまでの昼休みも、舟渡が私の方を見てくることはちょくちょくあった。しかし的場は怒る様子を何一つ見せず、甘い声で自分へ気を向かせるように促していただけだった。それなのに今日はというと、的場はイラついたように舟渡へ声を荒立てたのだった。そしてそれはこの時だけではなかった。
「ねえ! 何見てんのよ!」
「おい! 啓介!」
「こっち見なさいよ!」
的場は、舟渡が私の方へ視線をそらすたびに声を荒立てて怒るようになった。そのたびに舟渡は、怒った的場を落ち着かせるのに一苦労しているようだった。
もしかして、とうとう……。
一瞬思った私だったが、私自身が的場から嫌がらせを受けることもないみたいだし……。何より、私と舟渡は相思相愛なのよっ!
そう信じ切っていた私は、相変わらず得意げになっていた。
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