家事代行先の無口なお姉さん、推しVtuberでした。

星宮 嶺

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第21話 コラボ配信と隠し味

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 火曜日の午後一時。配信画面のカウントダウンがゼロを告げ、画面が切り替わる。

「やっほー! みんなこんにちはー! 今日はひっさびさにコラボ配信だよ!」

 月城メイの元気な声でコラボ配信が幕を開ける。

 画面には、少しけだるげな落ち着いた感じのお姉さん柚葉と、猫耳ヘッドホンがトレードマークの月城メイが並ぶ。背景にはカラフルなポップ調のロゴ、今日のテーマは「あそぼう大全」。

「ゆるーく、雑談しながら対決していくよー!」

「よろしく~。ってかこのゲーム、地味に負けたくないやつ」

 二人のテンポは相変わらず心地よく、視聴者たちのコメントも賑やかに流れていく。『待ってた!』『この二人ほんと好き』『安定のコンビ』と、開始直後からコメント欄はにぎやかだった。

 選ぶゲームは、オセロ、トランプ、ボウリングなど、シンプルながらも盛り上がる定番が中心。

『メイちゃん容赦ない』『柚葉ちゃんがんばれ!』

 何戦かを終えた後、少し落ち着いた雰囲気の中で、雑談が始まる。

「そういえばさ、この前いきなり電話きたよね?」

 メイが軽い口調で切り出す。

「あー……うん、あれね」

「なに事かと思ったら『ご飯が美味しい』だって。部屋キレイになって、ご飯が美味しくて電話してくるとか、どんだけ嬉しかったん」

『可愛すぎか』『それ報告したくなるやつ!』

「いやもう……ほんと大変だったんだって。マジで生活崩壊しかけてたから」

 疲れたような柚葉の言葉にメイが冗談めかして返す。

「そのわりに今めっちゃ元気そうなんだけど?」

「いや、最近は自分でもちょっと片付けするようにしてるし……毎週ご飯も作ってもらってるし。正直、今めっちゃ幸せ」

「え~! それうちも呼びたい! なにその理想の生活」

『家事代行気になる』『うちにも来てほしい』

「ほんとそれ。いやね、なんか空気が変わるんだよ。部屋に誰か入るだけで、ちゃんとした人が来ると、こう、整うっていうか」

「しかも毎回違うメニューなんでしょ?」

「うん。和洋中なんでもできるみたい。しかもちゃんと副菜つき。きんぴらとか、卵焼きとか、栄養も考えてくれてるの。もはや神」

「やば……本格度高すぎて嫉妬する(笑)」

『きんぴら!手作りはガチ』『栄養バランス神』

 話題を切り替えるように、メイが問いかける。

「で? 一番美味しかったご飯は?」

「えー、それは悩む……オムライスも捨てがたいけど……でもやっぱ、カレーかな」

「おっ、カレー!」

「うん。隠し味にね、チョコレート入れるんだって」

「えっ、なにそれ絶対美味しいやつじゃん!」

「うん、まろやかでコクあって、なんかほっとする味だった。スパイスが主張しすぎなくて、優しい感じ」

「いいなあ、食べたい……てか今この話、完全に飯テロじゃん」

 柚葉が画面を見ながら笑う。「コメントも『お腹すいた』って流れてる」

 コメント欄には『カレーいいな!』『飯テロすぎる』『終わったらメシ食う!』『カレー食べたい』と食欲を刺激された声が並ぶ。

「今すぐ配信終わってカレー屋さん行く!」

 メイが勢いよく提案する。

「ちょっと、うちとリスナー置いてかないでよ」

 柚葉が苦笑しながらつっこむ。

「柚葉はリスナーとゲームでもしてて」

「無茶振りすぎ! ってか、リスナーが『行ってこい!』ってノリなのが一番こわいんだけど」

『行ってら!』『お土産よろしく』『カレー配信希望』

 コメント欄はさらにヒートアップし、画面には新しいゲームのロゴが表示される。

「……じゃあ、カレーをかけて勝負しようか」

 柚葉がコントローラーを持ち直しながら、いたずらっぽく笑った。

 その横顔に、さっきまでよりも少しだけ柔らかい表情が浮かんでいた。

 カメラ越しには映らない日常。けれどその日々が、確かに彼女の生活を変えていることが、画面の向こうのファンにも伝わっていた。
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