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第30話 新しい輪
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焼きたての餃子を、柚月は静かに頬張った。パリッとした皮の音に続いて、口元がふわりとほころぶ。
「おいしいです」
そう言って小さく微笑む彼女の横顔を、見守り後片付けをしにキッチンへ。
その笑顔は、作り手として最高のご褒美だった。どれだけ試行錯誤して味を整えても、この一言がなければ完成とは言えない。今日の餃子は、間違いなく成功だった。
そして、それと同時に——
(切り替えられてる……ちゃんと)
自分でも驚くほど、今日は心が乱れていなかった。緊張もしなければ、妙な意識もしていない。むしろ、自然体でいられたことが嬉しかった。
作業もいつも通り、丁寧に、抜けなく。洗い物を終え、冷凍餃子も使いやすいように小分け保存。掃除も各部屋の巡回を終え、タオルの補充やゴミの分別も完了していた。
すべての流れが、穏やかで、正確だった。
(これからも、この調子で。彼女を静かに、でも確実に支えていこう)
心の中でそう改めて決意した、そのときだった。
「春野さん」
背後から声がかかる。
振り返ると、柚月が手を軽く前で組みながら立っていた。普段よりほんの少し、言葉を選んでいるような表情。
「ちょっと、相談というか。話があって」
透子は手を止め、柚月の方に向き直った。
「はい。なんでしょうか?」
「その、実はこの前、家事代行の話を友達にしたら、すごく興味を持ってて。一度うちにも来てほしいって言ってるんです」
予想外の内容に、透子は一瞬驚いたが、すぐに頷く。
「お部屋掃除のご依頼ですか?」
「はい。散らかってるってほどじゃないんです。ただ、普通に掃除と、もし可能なら、ご飯も作ってもらえると嬉しいって」
透子は真剣に聞きながら確認を重ねる。
「希望の時間帯や曜日などはご存じですか?」
「基本的に何曜日でも大丈夫だそうです。できれば、私と同じ感じで、お昼ご飯と作り置き、それと簡単な掃除を……という形で」
その内容は、まさに今の柚月とほぼ同じだった。
「ご希望の曜日などが決まりましたら、正式なご依頼として承れます。その方が、安心かと思いますので」
「はい。それで、その子が春野さんを指名したいって言ってて」
「ご指名、ですか?」
「はい。友達も『春野さんがいい』って」
一瞬、胸の奥が熱くなる。
自分の仕事ぶりが、こうして誰かの信頼を得て広がっていくこと。プロとして、これほど嬉しいことはない。
「それでしたら、クリーン・コンフォートのフォームのから、『高山様のご紹介で春野を指名』とご記入いただければ、スムーズに進みます」
「わかりました。伝えておきますね」
柚月はほっとしたように微笑み、そのままリビングに戻っていった。
その後ろ姿を見つめながら、透子は胸の内にふわりとあたたかいものが広がるのを感じた。
(繋がっていく。こんなふうに、信頼の輪が)
それがたとえ、自分の“推し”を通じたものであっても、いや、だからこそ。
透子は、これからも自分のやり方で、この仕事を続けていくつもりだった。
「おいしいです」
そう言って小さく微笑む彼女の横顔を、見守り後片付けをしにキッチンへ。
その笑顔は、作り手として最高のご褒美だった。どれだけ試行錯誤して味を整えても、この一言がなければ完成とは言えない。今日の餃子は、間違いなく成功だった。
そして、それと同時に——
(切り替えられてる……ちゃんと)
自分でも驚くほど、今日は心が乱れていなかった。緊張もしなければ、妙な意識もしていない。むしろ、自然体でいられたことが嬉しかった。
作業もいつも通り、丁寧に、抜けなく。洗い物を終え、冷凍餃子も使いやすいように小分け保存。掃除も各部屋の巡回を終え、タオルの補充やゴミの分別も完了していた。
すべての流れが、穏やかで、正確だった。
(これからも、この調子で。彼女を静かに、でも確実に支えていこう)
心の中でそう改めて決意した、そのときだった。
「春野さん」
背後から声がかかる。
振り返ると、柚月が手を軽く前で組みながら立っていた。普段よりほんの少し、言葉を選んでいるような表情。
「ちょっと、相談というか。話があって」
透子は手を止め、柚月の方に向き直った。
「はい。なんでしょうか?」
「その、実はこの前、家事代行の話を友達にしたら、すごく興味を持ってて。一度うちにも来てほしいって言ってるんです」
予想外の内容に、透子は一瞬驚いたが、すぐに頷く。
「お部屋掃除のご依頼ですか?」
「はい。散らかってるってほどじゃないんです。ただ、普通に掃除と、もし可能なら、ご飯も作ってもらえると嬉しいって」
透子は真剣に聞きながら確認を重ねる。
「希望の時間帯や曜日などはご存じですか?」
「基本的に何曜日でも大丈夫だそうです。できれば、私と同じ感じで、お昼ご飯と作り置き、それと簡単な掃除を……という形で」
その内容は、まさに今の柚月とほぼ同じだった。
「ご希望の曜日などが決まりましたら、正式なご依頼として承れます。その方が、安心かと思いますので」
「はい。それで、その子が春野さんを指名したいって言ってて」
「ご指名、ですか?」
「はい。友達も『春野さんがいい』って」
一瞬、胸の奥が熱くなる。
自分の仕事ぶりが、こうして誰かの信頼を得て広がっていくこと。プロとして、これほど嬉しいことはない。
「それでしたら、クリーン・コンフォートのフォームのから、『高山様のご紹介で春野を指名』とご記入いただければ、スムーズに進みます」
「わかりました。伝えておきますね」
柚月はほっとしたように微笑み、そのままリビングに戻っていった。
その後ろ姿を見つめながら、透子は胸の内にふわりとあたたかいものが広がるのを感じた。
(繋がっていく。こんなふうに、信頼の輪が)
それがたとえ、自分の“推し”を通じたものであっても、いや、だからこそ。
透子は、これからも自分のやり方で、この仕事を続けていくつもりだった。
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