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第49話 頼れる推し
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火曜日の朝、透子はいつものように支度を整え、高山柚月のマンションへと向かった。大会後初の訪問ということで、部屋の様子や柚月の様子がどうなっているのか、少し気になっていた。
インターホンを押すと、すぐにロックが外れる音がして、柚月がドアを開けてくれた。
「おはようございます、春野さん。今日もよろしくお願いします」
「おはようございます。こちらこそ、よろしくお願いします」
部屋に入ると、やや散らかった印象はあるものの、以前のように物が溢れていたわけではなかった。ゴミ袋には飲み終わったペットボトルや空き缶がきちんとまとめられ、玄関の脇に並べられている。
「ちょっと余裕できたので、少しは片付けてありますが……やっぱり限界があって。春野さん、よろしくお願いします」
そう言って申し訳なさそうに笑う柚月の顔には、どこかスッキリした雰囲気があった。
「了解しました。高山様ができる範囲で片付けてくださっただけでも、とても助かります。あとは私にお任せください」
「ほんと、助かってます……春野さんが来てくれると、安心するんですよね」
その言葉に、透子の胸があたたかくなる。柚月が素直に頼ってくれること、それを信頼の証として受け止められることが、透子にとっては何よりの励みだった。
(やっぱり高山様は、しっかり人を頼れる方なんだな)
肩の力を抜きつつも、人に任せることを恐れず、自分の限界を正しく認識している。それは、誰にでもできることではない。
透子はエプロンの紐を結びながら、心の中でひそかに笑みを浮かべた。
今日の献立は、鶏そぼろと卵、ほうれん草の三色丼。大会が終わってもなお疲れが残っているだろう柚月に、見た目にも栄養的にも元気の出るものを――そう考えて選んだ。
キッチンに入り、そぼろと炒り卵、ゆでたほうれん草の準備に取りかかる。調理の合間に洗い物も片付けながら、少しずつキッチンが整っていく。
途中、柚月がひょこっと顔を出してきた。
「いい匂い……なんだかお腹が空いてきました」
「今日のメニューは三色丼です。疲労回復にも良い食材を選んでいますので、しっかり召し上がってくださいね」
「春野さん、やっぱりプロだなぁ……こういうの、自分じゃ絶対考えられない」
「そうおっしゃっていただけると光栄です」
食事の準備が整い、配膳を終えると、柚月は嬉しそうに手を合わせた。
「いただきます」
その姿を見届けてから、透子は再び作業に戻る。今日は掃除にも少し余裕がありそうだ。
全体的に見れば“散らかっている”には違いないが、それでも透子には明らかに前回とは違う空気が感じられた。
(少しずつ、日常が戻ってきてるんだな)
あの大会に向けて、あれだけ集中して、全力で頑張った柚月。今はその反動もあるのだろう。でも、こうしてまた自分の生活を少しずつ取り戻そうとしている。
(推しが努力して、ちゃんと前に進んでる姿を見るのって……やっぱりうれしい)
柚月が空になった器を持ってキッチンへやってきた。
「ごちそうさまでした。ほんとに、美味しかったです」
「それは何よりです。次回もまた、元気の出るメニューをご用意いたしますね」
「お願いします。……本当に、春野さんが来てくれて、よかった」
そう呟いた柚月の言葉に、透子は深く一礼を返した。
「そのお言葉だけで、十分に報われます。また何かありましたら、いつでも頼ってください」
「はい、またお願いします」
マンションを出た透子は、柔らかく吹く風を感じながら、ふと空を見上げた。
(さあ、次は名取さんのところ……こちらもきっと、何か変化があるかもしれない)
推し二人の生活を支える――その使命を、改めて胸に刻みながら、彼女は次の準備へと気持ちを切り替えた。
インターホンを押すと、すぐにロックが外れる音がして、柚月がドアを開けてくれた。
「おはようございます、春野さん。今日もよろしくお願いします」
「おはようございます。こちらこそ、よろしくお願いします」
部屋に入ると、やや散らかった印象はあるものの、以前のように物が溢れていたわけではなかった。ゴミ袋には飲み終わったペットボトルや空き缶がきちんとまとめられ、玄関の脇に並べられている。
「ちょっと余裕できたので、少しは片付けてありますが……やっぱり限界があって。春野さん、よろしくお願いします」
そう言って申し訳なさそうに笑う柚月の顔には、どこかスッキリした雰囲気があった。
「了解しました。高山様ができる範囲で片付けてくださっただけでも、とても助かります。あとは私にお任せください」
「ほんと、助かってます……春野さんが来てくれると、安心するんですよね」
その言葉に、透子の胸があたたかくなる。柚月が素直に頼ってくれること、それを信頼の証として受け止められることが、透子にとっては何よりの励みだった。
(やっぱり高山様は、しっかり人を頼れる方なんだな)
肩の力を抜きつつも、人に任せることを恐れず、自分の限界を正しく認識している。それは、誰にでもできることではない。
透子はエプロンの紐を結びながら、心の中でひそかに笑みを浮かべた。
今日の献立は、鶏そぼろと卵、ほうれん草の三色丼。大会が終わってもなお疲れが残っているだろう柚月に、見た目にも栄養的にも元気の出るものを――そう考えて選んだ。
キッチンに入り、そぼろと炒り卵、ゆでたほうれん草の準備に取りかかる。調理の合間に洗い物も片付けながら、少しずつキッチンが整っていく。
途中、柚月がひょこっと顔を出してきた。
「いい匂い……なんだかお腹が空いてきました」
「今日のメニューは三色丼です。疲労回復にも良い食材を選んでいますので、しっかり召し上がってくださいね」
「春野さん、やっぱりプロだなぁ……こういうの、自分じゃ絶対考えられない」
「そうおっしゃっていただけると光栄です」
食事の準備が整い、配膳を終えると、柚月は嬉しそうに手を合わせた。
「いただきます」
その姿を見届けてから、透子は再び作業に戻る。今日は掃除にも少し余裕がありそうだ。
全体的に見れば“散らかっている”には違いないが、それでも透子には明らかに前回とは違う空気が感じられた。
(少しずつ、日常が戻ってきてるんだな)
あの大会に向けて、あれだけ集中して、全力で頑張った柚月。今はその反動もあるのだろう。でも、こうしてまた自分の生活を少しずつ取り戻そうとしている。
(推しが努力して、ちゃんと前に進んでる姿を見るのって……やっぱりうれしい)
柚月が空になった器を持ってキッチンへやってきた。
「ごちそうさまでした。ほんとに、美味しかったです」
「それは何よりです。次回もまた、元気の出るメニューをご用意いたしますね」
「お願いします。……本当に、春野さんが来てくれて、よかった」
そう呟いた柚月の言葉に、透子は深く一礼を返した。
「そのお言葉だけで、十分に報われます。また何かありましたら、いつでも頼ってください」
「はい、またお願いします」
マンションを出た透子は、柔らかく吹く風を感じながら、ふと空を見上げた。
(さあ、次は名取さんのところ……こちらもきっと、何か変化があるかもしれない)
推し二人の生活を支える――その使命を、改めて胸に刻みながら、彼女は次の準備へと気持ちを切り替えた。
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