罪なき世界

ホワイトエンド

文字の大きさ
上 下
9 / 13
序章 神が降臨した日

EP0−9 進むための代償

しおりを挟む
剣と剣がぶつかり合う。
ほぼ互角の二人の戦いは一見鎧に身を包んだティーツの方が有利に見えた。
だがわずかにハイトが上回っていく。
見た目からは分からないその剛腕によって少しずつ鎧に亀裂を作っていく。
彼には分かるこの生命線があと数発も持たないと。
(このままでは不味いか…!)
騎士団長の職について以来初めての焦燥を感じる。

だがそれと同じくハイトも同じく焦りを覚えていた。
(ここまで押しているのに致命傷を与えるのに時間がかかりすぎている…)
そう、ハイトには時間がない。
日付が変わるまであと一時間もない。
日付が変わればこの戦いに勝ってもハイトの敗北だ。
長引かせるにはいかない。
少しずつ焦りが募る。
それ故に一瞬そこまで優勢に進めていた戦いに隙が出来る。

それを見逃すティーツではない。
一瞬にして間合いを詰め、躊躇いなく剣を振り上げる。
焦りの代償は左目だった。
致命的な場所は避けたものの完全に眼球が切り裂かれた。
「がぁぁぁ…!!!」
痛みを受け怯むハイトに追撃をせんと踏み込んだ瞬間激しい衝撃と共にティーツの意識は飛んだ。

「はぁはぁ…」
ティーツの意識を消し飛ばしたのはハイトの反撃の一撃だ。
痛みを堪えながらの火事場のバカ力まで含まれた一撃だった。
お陰で彼の鎧を粉砕しながら意識を飛ばすことは出来た。
だが代償は大きかった。
左目から流れる大量の血液、それによって足元がふらつく。
「いか、なくちゃ…」
それを無理やり振り切り大広間の奥にある扉へと急ぐ。
しおりを挟む

処理中です...