赤信号で注意のメッセージを発する靴

ヤマシヤスヒロ

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赤信号で注意のメッセージを発する靴

 「大津くーん、こないだね、危なかったのよ」
 と友子は、コーヒーを飲みながら、大津君に言った。
 「どうしたの」 
と大津君は言った。 
「目の不自由な人が横断歩道で、赤信号なのに、道路を渡ろうとしてたの」
「それで、私が赤信号よと言いながら止めてあげたのよ」 
と、友子は、コーヒーを飲んでいる大津君に言った。
友子は、続けて、
「大津くーん、何かいいもの考えてよ」
と、大津君の顔を見ながら、甘えた声で言った。
「うん、そうだね」
と、大津君は、言った。
 友子は、大津君が週3回行っている大学の研究室の1年先輩で、おとなしくまじめな大津君が気に入っていて、ときどき、大津君を自分のマンションにさそって、コーヒーをいっしょに飲んでいた。
 その日も、友子のマンションで、2人で、コーヒーを飲んでいたのである。
 次の日、大津君は、助手として働いているサンエイ科学研究所の自分の席で、パソコンに向かって書類を書いていた。
 この日は、コーヒータイムになっても、大津君は、コーヒーを飲みに来なかったので、所長の市山博士は、大津君の席に行って、パソコンの画面をのぞきこみ、
「なんか、おもしろいことを考えついたのですか」
と市山博士は、ニヤニヤしながら、大津君に言った。
「そうなんです。実は、昨日、先輩に言われて、目の不自由な人が横断歩道で危なくないようにする装置を考えてほしいと言われて、考えてたんですが、ちょっといい方法を思いつき、今のうち、書類に書いているんです」
と大津君は、市山博士の方に向き直って、言った。
「おっ、そうですか、いい方法、思いつきましたか」
と市山博士は、ニコニコしながら大津君の顔を見て言った。
「そうなんです。靴に細工をすることにしたのです」
「横断歩道の手前の路面の下に埋め込んだ電磁石アレイを設けることを考えました」
「そして、赤信号になったときに電磁石アレイが動作するための制御部を備えるようにします」
「靴には、音声発生装置と連動した磁場検知装置を設け、赤信号のときに、電磁石アレイの磁場を磁場検知装置が検知し、注意させるメッセージを発するようにするというのを考えました」
と、大津君は、市山博士に説明した。
「それは、いいアイデアだね」
「赤信号で注意のメッセージを発する靴だね」
「目が不自由な人も横断歩道で危なくないね」
「先輩も喜ぶね」
と市山博士は、大津君にニコニコした顔で言った。
 市山博士は、大津君に、言った。
「大津君、じゃ、続けてその靴の特許明細書を書いてください」
「そして、特許出願するんだ」
「さっ、続けてください」
と市山博士は、言い、
「はい、分かりました」
と大津君は、言い、自分の席でそのまま、パソコンに向かって、書類の続きの作成を始めた。
 こうして、サンエイ科学研究所のコーヒータイムは、終わりました。


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