34 / 48
第三章 悪役令嬢は王妃なんです!
第34話 その頃王都ではとんでもないことが起きましてよ!
しおりを挟む
――護衛騎士side――
遡ること数時間前――。
王都にある城では、チャーリー王太子を連れた陛下が、神秘の間と呼ばれる地下にやってきていた。
この神秘の間の奥には、此処を王都と認める印であるクリスタルが眠っている。
王の血筋にしか見えないとされている不思議なクリスタル。
私達のような護衛騎士には一生見ることが出来ないだろうが、せめて空気だけでも触れてみたいものだ。
王にしか開くことが出来ない扉を、陛下が開き中に入ると、そこは真っ暗な世界だった。
本来なら眩いほどの光りを放つクリスタルがあると言うが、それは国王とチャーリー王太子にしか見えないものだろう。
王の直系のチャーリー様がどうはんのうするのか楽しみだった。
この時までは……。
「おぉ……まだクリスタルは此処にある。怒りに赤く燃えるクリスタルだが、まだ此処に……」
「ナニを仰っているんです父上、何も無い真っ暗じゃないか」
「……なんだと?」
その言葉に耳を疑ったのは、私達護衛騎士だけではなかった。
「この真っ赤に燃えるクリスタルが何故、王太子であるお前に見えないのだ!」
「だから、一体何を仰っているのか解りません。なにも無いただの洞くつではないですか」
「チャーリー……まさかそんな……」
フラリと足元が揺れる陛下を支えると、チャーリー王太子はそんな王を馬鹿にしたように見つめた。
「ボケたのではありませんか? 早々に私に王位を譲るのが懸命かと思われますよ?」
「嗚呼……アァ……王妃、お前は私を裏切ったのか……」
「ですから、一体何を言っているのか」
『解らぬであろうな』
「!?」
突如響いた声に、その場にいた誰もが周囲を見渡した。
すると――何も無いところから炎が揺らめき、そこから現れたのは一人の人間だった。
不思議なことに、男とも女とも取れない、不思議な見た目であった。
ただ解るのは、透明に透き通るような白い肌に、白く輝く長い髪……真っ赤に染まっている瞳が印象的だった。
「誰だ貴様は!」
『誰だとはまた可笑しな事を言う。王の資格なしの貴様の為に態々人型になってきてやったというに……やれやれ、国王がコレで、次の世代もいないとなるとこの国も終わりだのう』
「嗚呼……アァ!」
暴れ狂ったかのように私達護衛騎士を払い除けた国王は、足を縺れさせながらその人物に縋った。
「終わりではない……終わりではないのです!」
『往生際の悪い……お前の母への罰だけでは足りなかったようだ』
その言葉と同時に、国王は炎に包まれた。
異様な光景に我々は動くことが出来ず、国王の悲鳴が木霊し、チャーリー王太子は腰を抜かして失禁していた。
「陛下!」
『アレはもう陛下とは呼べぬよ。この国も王都とは認める事は出来ぬ。次なる王都へと我は旅立とう。この場所は国ではなく領地になるのだ』
「何を言っているのだ! 勝手な事は許さんぞ!」
震える声で叫んだチャーリー王太子に、ソレはゴミでも見るように王太子を見つめ、馬鹿にしたように笑うと続いて話した。
『そもそも、お前には王の資格など無かったのだよ。なにせ、王の血を受け継いでおらぬのだから』
「……どう言う事だ?」
『お前の母親が不貞を働いて出来た子よ。王の血はリコネルが次代を生むであろう』
「リコネル……リコネルの子だと!? リコネルは私の子を産むのだ! 何を馬鹿な事を言っている!」
『哀れな道化よ。リコネルはお前には相応しくは無い。お前も血の繋がらないあの男のようになりたいか?』
そう言うと、全身に火傷を負った国王を指差して見せると、怯えた表情のチャーリー王太子を見て笑い声を上げた。
『此処はもう王都ではない。王都は辺境伯爵領と今は言われているジュリアスの元がそうなるであろう。ジュリアスこそが王に相応しいのだ』
――その瞬間、一気に炎の渦に巻き込まれた。
チャーリー王子は失禁して動けず、何度も「嘘だ」と口にしていたが、私達が助けられたのは……奇しくもチャーリー王子だけだった。
王は既に事切れ、王妃はかの者の手に堕ち、燃え盛る王都を幾人の人々が悲鳴を上げながら逃げ回り、命からがら見つけた馬で逃げた先は――王都から程近い領地にある公爵家領だった……。
その瞬間、血に、体内に、記憶に、全てにソレが伝わったのだ。
――王都は、クリスタルは、辺境伯爵である、ジュリアス様の許へと向かったのだと。
遡ること数時間前――。
王都にある城では、チャーリー王太子を連れた陛下が、神秘の間と呼ばれる地下にやってきていた。
この神秘の間の奥には、此処を王都と認める印であるクリスタルが眠っている。
王の血筋にしか見えないとされている不思議なクリスタル。
私達のような護衛騎士には一生見ることが出来ないだろうが、せめて空気だけでも触れてみたいものだ。
王にしか開くことが出来ない扉を、陛下が開き中に入ると、そこは真っ暗な世界だった。
本来なら眩いほどの光りを放つクリスタルがあると言うが、それは国王とチャーリー王太子にしか見えないものだろう。
王の直系のチャーリー様がどうはんのうするのか楽しみだった。
この時までは……。
「おぉ……まだクリスタルは此処にある。怒りに赤く燃えるクリスタルだが、まだ此処に……」
「ナニを仰っているんです父上、何も無い真っ暗じゃないか」
「……なんだと?」
その言葉に耳を疑ったのは、私達護衛騎士だけではなかった。
「この真っ赤に燃えるクリスタルが何故、王太子であるお前に見えないのだ!」
「だから、一体何を仰っているのか解りません。なにも無いただの洞くつではないですか」
「チャーリー……まさかそんな……」
フラリと足元が揺れる陛下を支えると、チャーリー王太子はそんな王を馬鹿にしたように見つめた。
「ボケたのではありませんか? 早々に私に王位を譲るのが懸命かと思われますよ?」
「嗚呼……アァ……王妃、お前は私を裏切ったのか……」
「ですから、一体何を言っているのか」
『解らぬであろうな』
「!?」
突如響いた声に、その場にいた誰もが周囲を見渡した。
すると――何も無いところから炎が揺らめき、そこから現れたのは一人の人間だった。
不思議なことに、男とも女とも取れない、不思議な見た目であった。
ただ解るのは、透明に透き通るような白い肌に、白く輝く長い髪……真っ赤に染まっている瞳が印象的だった。
「誰だ貴様は!」
『誰だとはまた可笑しな事を言う。王の資格なしの貴様の為に態々人型になってきてやったというに……やれやれ、国王がコレで、次の世代もいないとなるとこの国も終わりだのう』
「嗚呼……アァ!」
暴れ狂ったかのように私達護衛騎士を払い除けた国王は、足を縺れさせながらその人物に縋った。
「終わりではない……終わりではないのです!」
『往生際の悪い……お前の母への罰だけでは足りなかったようだ』
その言葉と同時に、国王は炎に包まれた。
異様な光景に我々は動くことが出来ず、国王の悲鳴が木霊し、チャーリー王太子は腰を抜かして失禁していた。
「陛下!」
『アレはもう陛下とは呼べぬよ。この国も王都とは認める事は出来ぬ。次なる王都へと我は旅立とう。この場所は国ではなく領地になるのだ』
「何を言っているのだ! 勝手な事は許さんぞ!」
震える声で叫んだチャーリー王太子に、ソレはゴミでも見るように王太子を見つめ、馬鹿にしたように笑うと続いて話した。
『そもそも、お前には王の資格など無かったのだよ。なにせ、王の血を受け継いでおらぬのだから』
「……どう言う事だ?」
『お前の母親が不貞を働いて出来た子よ。王の血はリコネルが次代を生むであろう』
「リコネル……リコネルの子だと!? リコネルは私の子を産むのだ! 何を馬鹿な事を言っている!」
『哀れな道化よ。リコネルはお前には相応しくは無い。お前も血の繋がらないあの男のようになりたいか?』
そう言うと、全身に火傷を負った国王を指差して見せると、怯えた表情のチャーリー王太子を見て笑い声を上げた。
『此処はもう王都ではない。王都は辺境伯爵領と今は言われているジュリアスの元がそうなるであろう。ジュリアスこそが王に相応しいのだ』
――その瞬間、一気に炎の渦に巻き込まれた。
チャーリー王子は失禁して動けず、何度も「嘘だ」と口にしていたが、私達が助けられたのは……奇しくもチャーリー王子だけだった。
王は既に事切れ、王妃はかの者の手に堕ち、燃え盛る王都を幾人の人々が悲鳴を上げながら逃げ回り、命からがら見つけた馬で逃げた先は――王都から程近い領地にある公爵家領だった……。
その瞬間、血に、体内に、記憶に、全てにソレが伝わったのだ。
――王都は、クリスタルは、辺境伯爵である、ジュリアス様の許へと向かったのだと。
62
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」
婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。
罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。
それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。
しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。
「どんな場所でも、私は生きていける」
打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。
これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。
国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。
追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。
緋村ルナ
ファンタジー
「お前のような女は王妃にふさわしくない!」――才色兼備でありながら“冷酷な野心家”のレッテルを貼られ、無能な王太子から婚約破棄されたアメリア。国外追放の末にたどり着いたのは、痩せた土地が広がる辺境の村だった。しかし、そこで彼女が見つけた一つの奇妙な種が、運命を、そして世界を根底から覆す。
前世である農業研究員の知識を武器に、新種の果物「ヴェリーナ」を誕生させたアメリア。それは甘美な味だけでなく、世界経済を揺るがすほどの価値を秘めていた。
これは、一人の追放された令嬢が、たった一つの果実で自らの運命を切り開き、かつて自分を捨てた者たちに痛快なリベンジを果たし、やがて世界の覇権を握るまでの物語。「食」と「経済」で世界を変える、壮大な逆転ファンタジー、開幕!
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
『レベルMAXの引退生活』 〜追放先でダラダラしていたら、いつの間にか世界最強の聖域になっていました〜
小林 れい
ファンタジー
「働いたら負け」と言って追放された最強聖女、成層圏で究極のニート生活を極める 〜神々がパシリで、寝顔が世界平和の象徴です〜
「お願いだから、私を一生寝かせておいて」
前世でブラック企業の社畜として命を削ったヒロイン・ユラリア。異世界に転生し、国を救う「聖女」として崇められるも、彼女の願いはただ一つ――「もう一歩も動きたくない」。
しかし、婚約者の第一王子からは「働かない聖女など不要だ!」と無情な婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。 「え、いいんですか? 本当に休んでいいんですね!?」
喜びに震えながら、ユラリアは人類未踏の死の荒野へと引きこもる。だが、彼女の「怠惰」を極めるための魔力は、いつしか世界の理(ことわり)さえも書き換えていった。
神龍王を巨大な「日除け」に。
料理の神を「おやつ担当の給食係」に。
妖精王を「全自動美容マシーン」に。
「面倒くさい」を原動力に開発された魔導家電や、異世界の娯楽(ゲーム)。挙句の果てには、地上を離れ、邸宅ごと空へと浮かび上がる!
地上の元婚約者が、聖女を失った王国の没落に泣きつこうとも、成層圏に住む彼女には豆粒ほどにも見えない。 神々さえもパシリにする史上最強のニート聖女が、夢の中でも二度寝を楽しむ、贅沢すぎる究極の休日が今、始まる!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる