断罪された悪役令嬢は押しかけ女房~第二の王都と呼ばれる辺境領地で、彼女の夢を応援してたら第二の国になりました~

寿明結未(ことぶき・あゆみ)

文字の大きさ
39 / 48
第三章 悪役令嬢は王妃なんです!

第40話 因果応報って言葉、ご存じかしら?

しおりを挟む
 園への視察は本当に久しぶりでした。
 リコネルと、何故かついてきたクリスタルと共に向かい、園長であるサーザリンにまずは会いに行きます。
 サーザリンからの報告書では、とても優秀な魔力操作が出来る元避難民の方が二人もいるという話で、私たちはホッと胸を撫でおろしつつ、他の生徒たちがどう過ごしているのかも聞かせていただきました。


「元避難民の方々で文字の読み書きや計算は今はある程度クリア段階に来ています。魔力操作の方はまだまだ時間がかかりそうですが、程なく安定するでしょう」
「それは良かったですわ」
「それで、優秀なその二名には教師として園で雇いたいとも思ってます。とても優秀な方ですので、きっとジュリアス国王陛下とリコネル王妃にとってもプラスになるのではないかと」
「そこまでですか」


 本来、魔力操作は一般庶民でも簡単に出来るものではありません。
 それでもサーザリンが言うほどの実力のある者ならば、一度会ってみたいということになりました。
 魔力操作を専門に授業をしている部屋に入ると、大人から子供まで幅広く教室にいて、私たちの突然の訪問に驚いてはいたものの、敬意をあらわしてくださりました。
 子供でも、それが出来るのは素晴らしい事ですね。


「それで、サーザリンさんが仰っていた二人とは?」
「アリオスさん、ダリルさん、いらっしゃるかしら?」


 その言葉に暫く教室は静まり返りましたが、深いため息が聞こえたと同時に二人の男性が立ち上がりました。
 そして、その二人を見て私もリコネルも息を呑んだのです。


「ラフェールに……モンド」
「お久しぶりです、リコネル王妃様」
「お久しぶりです……」


 そこにいたのは、宰相の息子であるラフェールと、伯爵の跡継ぎであったモンドでした。
 二人は名を変え、この王国の避難民として生活していたのです。


「お知合いですか?」
「……そうですわね、場所を変えてお話ししましょう」


 リコネルの言葉に何かを察したのか、サーザリンは別室へ案内してくださいました。
 無論、偽名を使っていた二人も一緒です。
 別室に到着すると、彼らの園へ入学した際の書類を見せてもらい、偽名を使って平民としてこの領地へと避難民として紛れ込んでいたことが分かりました。


「僕たちは既に屋敷から追い出された身。偽名を使って避難民になったんだ」
「リコネル様は俺たちを見捨てたりはしないだろう? な? そうだよな?」


 必死な二人に対し、リコネルは呆れたようにため息を吐き、サーザリンは私の方から説明をすると目を見開いて二人を睨みつけました。
 ――学園にいた頃、リコネルを糾弾した男たち。
 それを今になって助けろと言うのはおかしな話であり、公爵家に火を放ったことに言及すると、二人は慌てて弁解をしましたが、最早弁解の余地もないでしょう。


「王妃への糾弾に、王妃の実家である公爵への放火、更に言えば、この二人どちらかがアルジェナが産んだ子供の父親。頭の痛い問題ですこと」
「僕たちは心を入れ替えたんだ!」
「平民でも、リコネル商会に入ることが出来れば安泰なんだろう?」
「知った仲じゃないか! 僕たちをリコネル商会に入れてくれ!」
「お断りしますわ」


 リコネルの言葉に二人は顔を青くし、リコネルは汚物でも見るような目で二人を見つめました。
 しかし――。


「まぁ、感謝もしてますわ。あの阿保と婚約解消できたのですから、あなた方の功績はそれだけですわね」
「「……」」
「学園にいた頃を思い出しますわね? 偽物王子と一緒にわたくしに対して、血も涙もない悪女だの、チャーリーの相手としては全てがなっていないだのと、色々と悪態をついてくださりましたもの」
「そ……それは」
「でもそれと今とは」
「ええ、それと今とは別ですわ。一国の王妃に対してそれだけの事をしたあげく、王妃の実家に火を放ち逃亡し、避難民として紛れ込んで罪を償うこともしなかったという今が残っているだけですわ」


 笑顔のリコネルに二人は口をパクパクとさせ、言葉がでようにも出ないようでした。
 普通に考えても重罪、それを無かったことにしろと言う方が難しいのです。


「公爵家に火を放ったのは紛れもない事実。お二人は法のもと裁かれるでしょう」
「そんな!」
「頼むリコネル! 僕たちを救ってくれ!」
「言葉を選んで欲しいですわね、わたくし王妃ですわよ」


 静まり返る室内。
 サーザリンの深いため息と共に、今まで黙っていたクリスタルが口を開きました。


『罪には罰を、が鉄則じゃろうな。甘え腐ってリコネルにすがりに来るとはなんと情けない男たちじゃ』
「ええ、本当に」
「まぁ、リコネルへの糾弾に対しては、あなた方のご実家に既に罰を与えています。公爵家への放火は、今からあなた方を公爵家にお渡しして決めてもらいましょう」
「助けてくれ!」
「悪気はなかったんだ! ついカッとなって!」
「ついカッとなって火をつける放火魔など我が国に必要ありませんわ! それに、かわいい女の子でもいれば手籠めにしようと考えていたのでしょう? あなた方下半身がお粗末ですものね」


 リコネルの言葉に顔を真っ赤にする二人、ですが本当のことですので反論すら出来ないでしょうね。
 平民でも可愛らしい女性は多い、この2人はそんな彼女たちを食い物にしようとしていた事まで暴露され、最早弁解させる気も失せました。


「せめて、アルジェナが妊娠した際、誠意を見せていれば多少の余地は与えましたのに。揃いも揃って三人とも責任を放棄するんですもの。信用すらありません事よ」
「う……」
「だって誰の子か本当にわからなくて……」
「分からないから責任を取らない、のは、言い訳ですわ」
『どれ、これ以上悪さが出来ぬように玉をとってやろう、なに、すぐ終わる』


 クリスタルの言葉に怯え身を縮こませる二人に私は同情したものの、『痛み無く種なしにしてやったからそれが恩情くらいかのう』と口にしたクリスタルに、リコネルは「甘い処置ですこと」と言っていましたが、追加で最早たたなくしたそうで、それなら安心だろうとリコネルも微笑んでいました。
 その後、意気消沈した二人を公爵家に送るため、学園の馬車を借りて逃げ出さぬよう兵士もつけ、公爵家に向かわせました。

 公爵領での放火は犯罪の中ではトップクラスで刑が重いのです。
 良くて鉱山での永久的な生活が、下手をすれば死刑でしょうね。
 しかし、ボヤ騒ぎで済んでいるので、鉱山での永久労働で済むことでしょう。


 その後、サーザリンさんからは何度も謝罪を受けましたが、偽名を使い避難民に紛れ込んでいたことに気づかなかったのはこちらの落ち度だと伝え、事なきを終えました。
 しかし三人一緒に逃亡していたはずですし、もう一人、ネルファーがどこに行ったのかは、依然謎のまま……この領地に入ってきていることは間違いないでしょう。


「ネルファーの居場所を探らねばなりませんね」
「そうですわね。無駄に時間を使ってしまって……ほかのお店に行けませんわ!」
「近々また行きましょう。あとは二人がリコネル商会に入りたがっていたという話ですし、本屋と花屋、それに園芸店にはネルファーの似顔絵をお渡しして、注意喚起もしておかねばなりませんね」
「そうですわね……一旦屋敷に帰りましょう」



 こうして私たちは一度屋敷に戻りネルファーの似顔絵を作成すると、直ぐにリコネル商会全てに似顔絵を配布し、注意喚起しました。
 ところが――。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。

緋村ルナ
ファンタジー
「お前のような女は王妃にふさわしくない!」――才色兼備でありながら“冷酷な野心家”のレッテルを貼られ、無能な王太子から婚約破棄されたアメリア。国外追放の末にたどり着いたのは、痩せた土地が広がる辺境の村だった。しかし、そこで彼女が見つけた一つの奇妙な種が、運命を、そして世界を根底から覆す。 前世である農業研究員の知識を武器に、新種の果物「ヴェリーナ」を誕生させたアメリア。それは甘美な味だけでなく、世界経済を揺るがすほどの価値を秘めていた。 これは、一人の追放された令嬢が、たった一つの果実で自らの運命を切り開き、かつて自分を捨てた者たちに痛快なリベンジを果たし、やがて世界の覇権を握るまでの物語。「食」と「経済」で世界を変える、壮大な逆転ファンタジー、開幕!

偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」 婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。 罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。 それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。 しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。 「どんな場所でも、私は生きていける」 打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。 これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。 国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

『レベルMAXの引退生活』 〜追放先でダラダラしていたら、いつの間にか世界最強の聖域になっていました〜

小林 れい
ファンタジー
「働いたら負け」と言って追放された最強聖女、成層圏で究極のニート生活を極める 〜神々がパシリで、寝顔が世界平和の象徴です〜 「お願いだから、私を一生寝かせておいて」 前世でブラック企業の社畜として命を削ったヒロイン・ユラリア。異世界に転生し、国を救う「聖女」として崇められるも、彼女の願いはただ一つ――「もう一歩も動きたくない」。 しかし、婚約者の第一王子からは「働かない聖女など不要だ!」と無情な婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。 「え、いいんですか? 本当に休んでいいんですね!?」 喜びに震えながら、ユラリアは人類未踏の死の荒野へと引きこもる。だが、彼女の「怠惰」を極めるための魔力は、いつしか世界の理(ことわり)さえも書き換えていった。 神龍王を巨大な「日除け」に。 料理の神を「おやつ担当の給食係」に。 妖精王を「全自動美容マシーン」に。 「面倒くさい」を原動力に開発された魔導家電や、異世界の娯楽(ゲーム)。挙句の果てには、地上を離れ、邸宅ごと空へと浮かび上がる! 地上の元婚約者が、聖女を失った王国の没落に泣きつこうとも、成層圏に住む彼女には豆粒ほどにも見えない。 神々さえもパシリにする史上最強のニート聖女が、夢の中でも二度寝を楽しむ、贅沢すぎる究極の休日が今、始まる!

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

追放令嬢のスローライフ。辺境で美食レストランを開いたら、元婚約者が「戻ってきてくれ」と泣きついてきましたが、寡黙な騎士様と幸せなのでお断り!

緋村ルナ
ファンタジー
「リナ・アーシェット公爵令嬢!貴様との婚約を破棄し、辺境への追放を命じる!」 聖女をいじめたという濡れ衣を着せられ、全てを奪われた悪役令嬢リナ。しかし、絶望の淵で彼女は思い出す。――自分が日本のOLで、家庭菜園をこよなく愛していた前世の記憶を! 『悪役令嬢?上等じゃない!これからは大地を耕し、自分の手で幸せを掴んでみせるわ!』 痩せた土地を蘇らせ、極上のオーガニック野菜で人々の胃袋を掴み、やがては小さなレストランから国をも動かす伝説を築いていく。 これは、失うことから始まった、一人の女性の美味しくて最高に爽快な逆転成り上がり物語。元婚約者が土下座しに来た頃には、もう手遅れです!

処理中です...