断罪された悪役令嬢は押しかけ女房~第二の王都と呼ばれる辺境領地で、彼女の夢を応援してたら第二の国になりました~

寿明結未(ことぶき・あゆみ)

文字の大きさ
45 / 48
第三章 悪役令嬢は王妃なんです!

第46話 王都の花と、人と言う財産を――

しおりを挟む
 個性的な新人作家さんたちとの交流会が終わり、一息ついたかと思えば、リコネルは孤児院から就職してきた子供たちの様子を見に行くと、数日後には予定を無理やり入れ込み、まずは園芸店のもとへと向かいました。


 花屋も園芸店でもですが、なかなかに重労働も多く、特に園芸店には孤児院から就職した男の子たちが働いています。
 報告書では、問題なく過ごしているようですが、実際に会ってみないと人となりが分からないと言うリコネルに押され、私もついていきました。
 この様子だと、花屋の様子も一緒に見に行くのでしょうね。
 デート感覚で何ともこそばゆく、それでいて楽しい時間です。

 孤児院から就職した子らは、それぞれの部署に配属されています。
 それでも、貴族専門の場所には配属はされておらず、まずは仕事の基礎を教わりながら過ごしているのだと言うのです。


「最近になってようやく仕事のコツが掴めて気がします」
「力仕事ばかりだけどな」
「それでも、他の職場より断然待遇が良いって」


 そう言って語る孤児院からの就職の子たちは、とても生き生きとしていました。
 職場にもよるでしょうが、中には上司が役に立たず口だけ達者というところもありますし、まるで従業員を道具のように扱う所もあると報告を受けました。
 酷い場合には、離職せねばならないまでに追い込まれるとも。

 この辺りの法整備がまだ進んでいないのがもどかしい。
 近々リコネルと一緒に案を練りましょう。
 従業員であれ、個として存在する人を道具扱いしたり、差別してはならないのです。
 それは、おのずと自分に返ってくるのですから……。


「それに、近々プリザーブドフラワー専門の部署が出来るってベアルさんが言ってたんだ」
「俺の妹や弟たちも園で魔力操作習ってるし、将来の働き口があるってやっぱ安心感が違うよ」
「リコネル様、本当にありがとうございます!」


 そう言って礼儀正しくお礼した子供たちに、私とリコネルは微笑みました。


「この王都ではプリザーフラワーを主産業にしたいとも思ってますの。他国にも人気の高いプリザーブドフラワーならば、確実にこの王都の花となりますわ」
「王都の花……ですか」
「でも、魔力を流す人によって色合いが少し変わったりするって聞きましたけど」
「それこそが【個】を示す素敵な色ではありませんの。同じばかりの花では面白くありませんわ。多種多様に、濃い花も、淡い花も美しいんですもの」


 リコネルのふわりと笑う表情に、男の子たちは頬を染めて見入っていました。
 つい私も見入りそうになりましたが、国王がそれでは示しが余りつきそうにないですね。
 しかし本当に美しい笑顔……。
 肖像画にして部屋に堂々と飾りたい程です。


「平等に美しく、平等に等しく優しい花は、王都の花に相応しいですわ」
「そうですね、個を重んじる私たちには相応しい花です。人とは財産です。一人ひとりに個性があり、性格があり、手作りの優しさや思いやりがある。それはとても尊い事なのですから」


 私も微笑んで子供たちに語ると、子供たちは驚いた様子で私を見つめていました。
 すると――。


「俺……ジュリアス国王陛下のいる国に生まれて……良かったです!」
「俺も!」
「孤児でも差別なく接してくださるジュリアス国王陛下とリコネル様に、感謝しています!」
「その優しい心を忘れず、仕事に励んでくださいね。きっとそれは、宝になりますからね」
「「「はい!」」」


 こうして、園芸店での視察が終わり、屋敷に帰ると直ぐにリコネルと共に法整備の案を出し合うことになりました。
 我が領であった頃にも少なからずあった、従業員を使い捨ての駒にする扱い……これは、あの子供たちを見て本当に由々しき事態なのだと痛感したのです。
 彼らのような若者が未来を追い込まれてしまうことは嘆かわしい事であり、許されない暴力です。

 個を攻撃するということは、命を冒涜する行為。
 個を攻撃すると言う事は、その命を世に産んだその子の親への冒涜。

 逃げ場もなく。
 差し伸べられる助けの手もなく。
 涙が枯れるほどに辛い日々を送る、そんなことは、本来あってはならないことなのです。


「厳しいですわね……あっさりと決めてしまっては、抜け道を探られてしまいますわ。目に見えるパワハラがあれば、それは今ある法律でも罰することは出来ますけれど……行使力が弱いですわ」
「そのあたりも含めて話し合いましょう」
「そうですわね、まずは相談できる場所の設置も考えていきましょう」
「ええ」


 この事案はのちに数年に及び、形を変え立場を変え、幾度となく法整備が進んでいくことになるのは、まだまだ先の話……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」 婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。 罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。 それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。 しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。 「どんな場所でも、私は生きていける」 打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。 これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。 国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

『レベルMAXの引退生活』 〜追放先でダラダラしていたら、いつの間にか世界最強の聖域になっていました〜

小林 れい
ファンタジー
「働いたら負け」と言って追放された最強聖女、成層圏で究極のニート生活を極める 〜神々がパシリで、寝顔が世界平和の象徴です〜 「お願いだから、私を一生寝かせておいて」 前世でブラック企業の社畜として命を削ったヒロイン・ユラリア。異世界に転生し、国を救う「聖女」として崇められるも、彼女の願いはただ一つ――「もう一歩も動きたくない」。 しかし、婚約者の第一王子からは「働かない聖女など不要だ!」と無情な婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。 「え、いいんですか? 本当に休んでいいんですね!?」 喜びに震えながら、ユラリアは人類未踏の死の荒野へと引きこもる。だが、彼女の「怠惰」を極めるための魔力は、いつしか世界の理(ことわり)さえも書き換えていった。 神龍王を巨大な「日除け」に。 料理の神を「おやつ担当の給食係」に。 妖精王を「全自動美容マシーン」に。 「面倒くさい」を原動力に開発された魔導家電や、異世界の娯楽(ゲーム)。挙句の果てには、地上を離れ、邸宅ごと空へと浮かび上がる! 地上の元婚約者が、聖女を失った王国の没落に泣きつこうとも、成層圏に住む彼女には豆粒ほどにも見えない。 神々さえもパシリにする史上最強のニート聖女が、夢の中でも二度寝を楽しむ、贅沢すぎる究極の休日が今、始まる!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放令嬢のスローライフ。辺境で美食レストランを開いたら、元婚約者が「戻ってきてくれ」と泣きついてきましたが、寡黙な騎士様と幸せなのでお断り!

緋村ルナ
ファンタジー
「リナ・アーシェット公爵令嬢!貴様との婚約を破棄し、辺境への追放を命じる!」 聖女をいじめたという濡れ衣を着せられ、全てを奪われた悪役令嬢リナ。しかし、絶望の淵で彼女は思い出す。――自分が日本のOLで、家庭菜園をこよなく愛していた前世の記憶を! 『悪役令嬢?上等じゃない!これからは大地を耕し、自分の手で幸せを掴んでみせるわ!』 痩せた土地を蘇らせ、極上のオーガニック野菜で人々の胃袋を掴み、やがては小さなレストランから国をも動かす伝説を築いていく。 これは、失うことから始まった、一人の女性の美味しくて最高に爽快な逆転成り上がり物語。元婚約者が土下座しに来た頃には、もう手遅れです!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。

緋村ルナ
ファンタジー
「お前のような女は王妃にふさわしくない!」――才色兼備でありながら“冷酷な野心家”のレッテルを貼られ、無能な王太子から婚約破棄されたアメリア。国外追放の末にたどり着いたのは、痩せた土地が広がる辺境の村だった。しかし、そこで彼女が見つけた一つの奇妙な種が、運命を、そして世界を根底から覆す。 前世である農業研究員の知識を武器に、新種の果物「ヴェリーナ」を誕生させたアメリア。それは甘美な味だけでなく、世界経済を揺るがすほどの価値を秘めていた。 これは、一人の追放された令嬢が、たった一つの果実で自らの運命を切り開き、かつて自分を捨てた者たちに痛快なリベンジを果たし、やがて世界の覇権を握るまでの物語。「食」と「経済」で世界を変える、壮大な逆転ファンタジー、開幕!

処理中です...