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09 盾は弟と再会する。
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――カイルside――
夕焼けが沈み始める頃、生まれ育った村に着いた。
王都からほど近いこの村は、魔物の姿もあまりなく平和そのものだ。
何時もの冒険者の装いで村を歩いていると、見知った人たちに挨拶をしながら家路を急ぐ。
もう、戻ってくる事もないだろうが、久しぶりに見た小さな生家は亡き両親との思い出が詰まった場所だ。
「ライト、今帰ってきた」
「――お帰りなさい兄さん!」
建付けの悪いドアを開けると、夕飯の用意をしていた弟が嬉しそうな表情で駆け寄ってきた。
11歳になるライトだが、一般的な11歳と比べると少し小さい。
俺と同じ黄金の髪に燃えるような赤い瞳をしたライトは、直ぐに俺の分の夕飯も用意し始めた。
「俺は少なくでいいぞ、ちゃんと土産用にパンを貰って来た」
「フフ、お土産用のパンを貰って来たって……え、どういう事ですか?」
「食べながら話そう。特にこのパンは美味いぞ」
ライトと一緒に夕飯を机に配膳し、貰ったパンの包みを取って遠慮なく半分に割って手渡すと、ライトは驚いた表情でパンを見つめた。
「凄い……とても高級なパンなのではありませんか?」
「どうだろうな、彼女が言うにはこのパンが無いと朝が始まらないそうだ」
「彼女……兄さんに彼女ができたんですか!! それはお祝いせねばなりませんね!」
「ンン! 言葉の綾だ! 彼女は俺の雇い主であり、俺を守ろうとしてくれた女性だ」
「一体何が起きたというのです?」
「まずは食事をしてから話そう。この家を引っ越す事だけは決まっている」
「え!」
「さぁ、食べて早く話そう!」
そう言うと久しぶりに食べるライトの食事が余りにも懐かしく、そしてこの味を、そして弟と過ごせる時間を守ってくれたリディアに感謝した。
パンも昨日初めて食べたが、一人で一斤食べてしまい、追加でもう一斤作って貰ったほどに美味しかった。
「兄さん……このパンはダメです。いけません」
「何故だ、とても美味いのに」
「美味すぎるんです。他のパンが食べれなくなってしまいます」
「大丈夫だ、明後日にはそれが毎日になっている」
「本当に一体どういう事なのですか?」
「うん! この豆スープもうまい!」
「もう!」
こうして楽しく喋りながら食事をし、一緒に食器を片付けリビングの草臥れた椅子に座ると、俺の事、そしてリディアの事を話し始めた。
仲間を庇って魔付きになった事。
その仲間からPTを追放された事。
せめて毎月決まった金額だけでもライトに送ろうと、魔付きになった自分を奴隷商に売りに行こうとした事。
弟は……悔しそうに顔を顰めていた。
だが、その表情は直ぐに変わる事になった。
奴隷商に行く途中、一人の少女に声を掛けられたこと。
箱庭師である彼女が、解呪薬の薄いものを作れるからと雇用契約を結んでもらったこと。
そして、冒険者ギルドで定期契約を俺の名で二つ仕事を受け持っている事。
更に、商業ギルドにも俺の名で店を用意したことを話した。
また、信用できる者を店番にしたいとリディアが言った為、弟はどうかと聞いたら即了承して貰えたことを話すと、ライトは驚いた表情のまま動かない。
「えっと……ライト?」
「……え! あ、いえ、では、そのリディアさんのお手伝いをすれば宜しいのですね? 兄さんの命の恩人です。身を粉にして働く所存です」
「ああ、そう言ってくれると嬉しい。後はリディアの事を外に漏らさない様に心がけて欲しい。彼女には秘密があるんだ」
「分かりました」
「それで、明日、明後日には此処から王都にある店にライトも引っ越してもらいたいが、この家はあった方がいいか?それなら村長に暫く借りておいても良いんだが」
「いいえ、私は兄さんを助けてくれたリディアさんに恩返しがしたい。ですから、この家の事は気になさらないでください」
「ライト……」
「兄さんが……奴隷商に身売りしにいくなんて……想像だってしたくない。それを助けてくれたのでしょう?でしたら私にとっても恩人です!」
両目一杯に涙を溜めて微笑むライトに、俺の目頭が熱くなった。
本来であれば、今頃体中の鱗をはぎ取られ、血を流しながら痛みに苦しみ、それでもまた鱗が生えればはぎ取られる人生をおくろうとしていたのに……。
「ハハハ。全く……俺たちの恩人は、こんな俺たちの様子を今頃見ているんだろうか」
いや、きっと見ていない。
二人きりの兄弟、そして、大事な話し合いをしているのだろうと思っている事だろう。
その様子を盗み見する真似をするような女性ではない事は、昨日だけで痛い程分かった。
「ライト、母さんたちの遺品で持って行きたいものや、自分に必要な物、あとは使い慣れた鍋や食器類を手分けして机に置いていこう。まずは台所からだな」
「はい!」
「今夜は寝れないぞ! なにせリディアが待っているからな!」
「はい!!」
こうして、俺とライトはバタバタと動き出した。
貰ったアイテムボックスにライトが机に用意するものを片っ端から入れていき、台所が片付けば、今度は着替えや両親の遺品を鞄に詰めていく。
「兄さん、その鞄はもしかして」
「アイテムボックスだ。時間も止められるらしい」
「素晴らしいですね!!」
「お前も多分貰う事になるだろう。あらゆることに覚悟を決めておけ」
「はい!」
強く頷いたライトに俺も頷くと、余分な程にモノを詰め込み家の中はガランとした。
早朝、両親の墓に花を添え、村長に此処を出ていく事になった事も告げる。
出発時刻は分からないが、明日には村を出て王都へ行く事を伝えると、村長は「少し話さないか」と言われて村長宅へと二人で入る事になった。
一体何が始まるというのだろうか?
夕焼けが沈み始める頃、生まれ育った村に着いた。
王都からほど近いこの村は、魔物の姿もあまりなく平和そのものだ。
何時もの冒険者の装いで村を歩いていると、見知った人たちに挨拶をしながら家路を急ぐ。
もう、戻ってくる事もないだろうが、久しぶりに見た小さな生家は亡き両親との思い出が詰まった場所だ。
「ライト、今帰ってきた」
「――お帰りなさい兄さん!」
建付けの悪いドアを開けると、夕飯の用意をしていた弟が嬉しそうな表情で駆け寄ってきた。
11歳になるライトだが、一般的な11歳と比べると少し小さい。
俺と同じ黄金の髪に燃えるような赤い瞳をしたライトは、直ぐに俺の分の夕飯も用意し始めた。
「俺は少なくでいいぞ、ちゃんと土産用にパンを貰って来た」
「フフ、お土産用のパンを貰って来たって……え、どういう事ですか?」
「食べながら話そう。特にこのパンは美味いぞ」
ライトと一緒に夕飯を机に配膳し、貰ったパンの包みを取って遠慮なく半分に割って手渡すと、ライトは驚いた表情でパンを見つめた。
「凄い……とても高級なパンなのではありませんか?」
「どうだろうな、彼女が言うにはこのパンが無いと朝が始まらないそうだ」
「彼女……兄さんに彼女ができたんですか!! それはお祝いせねばなりませんね!」
「ンン! 言葉の綾だ! 彼女は俺の雇い主であり、俺を守ろうとしてくれた女性だ」
「一体何が起きたというのです?」
「まずは食事をしてから話そう。この家を引っ越す事だけは決まっている」
「え!」
「さぁ、食べて早く話そう!」
そう言うと久しぶりに食べるライトの食事が余りにも懐かしく、そしてこの味を、そして弟と過ごせる時間を守ってくれたリディアに感謝した。
パンも昨日初めて食べたが、一人で一斤食べてしまい、追加でもう一斤作って貰ったほどに美味しかった。
「兄さん……このパンはダメです。いけません」
「何故だ、とても美味いのに」
「美味すぎるんです。他のパンが食べれなくなってしまいます」
「大丈夫だ、明後日にはそれが毎日になっている」
「本当に一体どういう事なのですか?」
「うん! この豆スープもうまい!」
「もう!」
こうして楽しく喋りながら食事をし、一緒に食器を片付けリビングの草臥れた椅子に座ると、俺の事、そしてリディアの事を話し始めた。
仲間を庇って魔付きになった事。
その仲間からPTを追放された事。
せめて毎月決まった金額だけでもライトに送ろうと、魔付きになった自分を奴隷商に売りに行こうとした事。
弟は……悔しそうに顔を顰めていた。
だが、その表情は直ぐに変わる事になった。
奴隷商に行く途中、一人の少女に声を掛けられたこと。
箱庭師である彼女が、解呪薬の薄いものを作れるからと雇用契約を結んでもらったこと。
そして、冒険者ギルドで定期契約を俺の名で二つ仕事を受け持っている事。
更に、商業ギルドにも俺の名で店を用意したことを話した。
また、信用できる者を店番にしたいとリディアが言った為、弟はどうかと聞いたら即了承して貰えたことを話すと、ライトは驚いた表情のまま動かない。
「えっと……ライト?」
「……え! あ、いえ、では、そのリディアさんのお手伝いをすれば宜しいのですね? 兄さんの命の恩人です。身を粉にして働く所存です」
「ああ、そう言ってくれると嬉しい。後はリディアの事を外に漏らさない様に心がけて欲しい。彼女には秘密があるんだ」
「分かりました」
「それで、明日、明後日には此処から王都にある店にライトも引っ越してもらいたいが、この家はあった方がいいか?それなら村長に暫く借りておいても良いんだが」
「いいえ、私は兄さんを助けてくれたリディアさんに恩返しがしたい。ですから、この家の事は気になさらないでください」
「ライト……」
「兄さんが……奴隷商に身売りしにいくなんて……想像だってしたくない。それを助けてくれたのでしょう?でしたら私にとっても恩人です!」
両目一杯に涙を溜めて微笑むライトに、俺の目頭が熱くなった。
本来であれば、今頃体中の鱗をはぎ取られ、血を流しながら痛みに苦しみ、それでもまた鱗が生えればはぎ取られる人生をおくろうとしていたのに……。
「ハハハ。全く……俺たちの恩人は、こんな俺たちの様子を今頃見ているんだろうか」
いや、きっと見ていない。
二人きりの兄弟、そして、大事な話し合いをしているのだろうと思っている事だろう。
その様子を盗み見する真似をするような女性ではない事は、昨日だけで痛い程分かった。
「ライト、母さんたちの遺品で持って行きたいものや、自分に必要な物、あとは使い慣れた鍋や食器類を手分けして机に置いていこう。まずは台所からだな」
「はい!」
「今夜は寝れないぞ! なにせリディアが待っているからな!」
「はい!!」
こうして、俺とライトはバタバタと動き出した。
貰ったアイテムボックスにライトが机に用意するものを片っ端から入れていき、台所が片付けば、今度は着替えや両親の遺品を鞄に詰めていく。
「兄さん、その鞄はもしかして」
「アイテムボックスだ。時間も止められるらしい」
「素晴らしいですね!!」
「お前も多分貰う事になるだろう。あらゆることに覚悟を決めておけ」
「はい!」
強く頷いたライトに俺も頷くと、余分な程にモノを詰め込み家の中はガランとした。
早朝、両親の墓に花を添え、村長に此処を出ていく事になった事も告げる。
出発時刻は分からないが、明日には村を出て王都へ行く事を伝えると、村長は「少し話さないか」と言われて村長宅へと二人で入る事になった。
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★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
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